HOME | 研究資料館 | 地域検索 | 採集の記録 | 2009 . 11 . 02 | お知らせ

2009.11.02, Part VI

曲沼〜はんのき夫婦沼

曲沼,沼岸まで降りて再度パノラマ撮影(山辺町),09:50
1〜4枚目:小屋の脇に自転車とザックを置き,少し東?に寄った位置(沼の北端部付近)から東〜南〜西をパノラマ撮影。 1,2枚目:向い側の出っ張った部分が沼の屈曲部で,ここから南東(1枚目)と南西(2枚目)に向って 沼は名前のとおり「へ」の字形に折れ曲っている。 3,4枚目:こちらは沼の北西〜北端付近(のはず)。
小屋近くの岸辺(1,2枚目)は地肌が露出しているが, 北端付近(4枚目のさらに右,ここでは写っていない。二段下の4枚目の画像参照)は岸辺に草が生えていた。 そこで採集することにした。

曲沼,さらに右へ移動して沼岸で採集(山辺町),09:50-09:52
1,2枚目:北端に近付いたところで採集(曲沼)。 沼岸では枯草が水没しているものの,水垢はあまりないように見えた。 そこでピペットを枯草の中まで差し込んだところ,結構な量の水垢(泥も多い)が入ってきた。 既述したように,ここは沼岸の様子からも人造の沼のように思えたので, 原生生物はあまりいないのではと予想したが,意外や意外。 翌日,観察すると結構な量(種数)の原生生物がいた。 もしかすると,ここも古くからある沼で,最近になって溜池として整備しなおされた場所なのかも知れない。 遠浅になっているというのも幸いしているだろう。
観察された生物: 渦鞭毛虫の一種, クリプトモナス(Cryptomonas), ウチワヒゲムシ(Phacus sp.), エントシフォン(Entosiphon), カラエリヒゲムシ(Salpingoeca), 小型繊毛虫数種, アカントキスチス(Acanthocystis sp.), スファエラストルム(Sphaerastrum), ナベカムリ(Arcella discoidesA. vulgaris), ディフルギア( Difflugia claviformisD. oblongaD. penardi), Pontigulasia, アミカムリ(Nebela collaris), ユーグリファ(Euglypha acanthophoraE. crenulata), トリネマ(Trinema enchelys), フレンゼリナ(Frenzelina), パラコンディロストマ(Paracondylostoma setigerum), ウロトリカ(Urotricha), アスピディスカ(Aspidisca), カエネア(Chaenea), バラディナ(Balladyna), ウロレプタス(Uroleptus), レンバディオン(Lembadion bullinum), ヒスチオバランティウム(Histiobalantium natans), キネトキルム(Cinetochilum margaritaceum), シヌラ(Synura), ゴニオストマム(Gonyostomum sp.), 小型珪藻少々, クンショウモ(Pediastrum boryanum), フタヅノクンショウモ(Pediastrum duplex v. rugulosum), イカダモ( Scenedesmus acuminatusScenedesmus), イトクズモ(Ankistrodesmus), コエラストルム(Coelastrum reticulatum), セレナストルム(Selenastrum), キルクネリエラ(Kirchneriella), グロエオキスティス(Gloeocystis sp.), グロエオチロプシス(Gloeotilopsis), ゲミネルラ(Geminella), サヤミドロ(Oedogonium), ヒザオリ(Mougeotia), アオミドロ(Spirogyra), コウガイチリモ( Pleurotaenium nodosumP. trabecula), ミカヅキモ(Closterium pronum), ツヅミモ( Cosmarium contractumC. depressum f. minutaC. moniliforme var. subpyriformeC. pseudopyramidatumC. quadrifarium), ホシガタモ( Staurastrum iotanum), イボマタモ( Euastrum binaleEuastrum sp.1, Euastrum sp.2 初観察?), ハタヒモ(Netrium digitus), クロオコッカス(Chroococcus), ユレモ(Oscillatoria), スティゴネマ(Stigonema), Scytonema sp., ミジンコ, ワムシ, イタチムシ,

曲沼,採集地点でパノラマ撮影(山辺町),09:52
1〜4枚目:位置的には二段上の画像とおおよそ同じだが, 雲がやや薄まり,さきほどより若干明るさが増したので,再度パノラマ撮影してみた。 今度は対岸が色鮮やかに写った。

荒沼林道へ戻る(山辺町),09:55

荒沼林道を下り,はんのき夫婦沼へ(山辺町),09:56-09:58

はんのき夫婦沼に到着(山辺町),09:59
1,2枚目:左〜進行方向をパノラマ撮影。 道路脇に木道がかすかに見えた。 あそこの先に縦長の沼が広がっている。

はんのき夫婦沼(山辺町),10:00
1,2枚目:木道が迫ってきたところで再度パノラマ撮影。 前回(2009.5.10)は, あの木道周辺にはたくさんのミズバショウが咲いていた。


前回,入口側の沼岸から歩いて来て撮影した画像(2009.5.10,12:59)。

はんのき夫婦沼(山辺町),10:01
木道脇を過ぎると沼が見えてきた。
前回は反対側から来たので,入口から入って沼岸へ降りてここまで歩いてきた。 しかし,今回は逆なので,ここから入口まで行って沼岸へ降りてUターンしたのでは時間がかかり過ぎる。 そこで道路から斜面を降りて沼岸へ近付くことにした。 やや急な斜面なので歩いては降りられない。尻をついた格好で斜面を滑って降りた。

はんのき夫婦沼,斜面を降りて沼岸へ(山辺町),10:02
1〜4枚目:斜面を降りた後で,木道と沼の境付近に立って左前右をパノラマ撮影。 1,2枚目:木道(1枚目)とその周囲に広がる湿地。前回ミズバショウが咲いていた所。 3,4枚目:たて長の沼。画面の右奥に道路を挟んで別の小さな沼(実際は沼というより溜池の雰囲気だが)がある。 そのため,「夫婦沼」と呼んでいる模様。 こちら側の沼だけを云う場合は「はんのき沼」でよいのかも知れない。


前回撮影した画像(2009.5.10,12:58)。

はんのき夫婦沼,水辺に近付こうとしたが・・・(山辺町),10:02
1,2枚目:パノラマ撮影。 上の右端にある前回撮影した画像に写っている木が,ここでは1枚目の左側に写っている。 これらを比較して分かるように,前回はこの木の根元まで水際が達していたが, 今回は水際は遠く引いてしまった。 ということは,この木から水際までは草と落ち葉で覆われているが,最近までは沼の底だった場所だ。 ここが人造の新しい沼だとそれほど泥が溜っていないので上を歩いていけるはずだが,,,。

はんのき夫婦沼,無理だったので途中で採集(山辺町),10:02-10:05
1枚目:水際へ近付こうとしたが,わずかながら落ち葉の中へ足が沈んだ(注)。 さきほど訪れた琵琶沼のようにズブズブと泥の中に潜ってしまうようなことはなかったが, 水際に近付くにつれて沈む深さが増していった。 2枚目:これだと場所によってはズボッと泥の中へ潜ってしまう恐れもあるので, 途中で水際に近付くのを諦め,近くにあった水面が顔を出している場所で採集した(はんのき夫婦沼-1)。 結構いた。
観察された生物: ボド(Bodo sp.), ナベカムリ( Arcella arenariaA. dentataAArcella sp.), フセツボカムリ( Centropyxis aculeataC. aerophilaC. ecornis), ディフルギア( Difflugia bacillariarum D.elegansD. penardi), Lesquereusia, アミカムリ( Nebela barbataN. carinataN. collarisN. penardiana), ヘレオペラ(Heleopera), ヒアロスフェニア(Hyalosphenia nobilis), クアドルレラ(Quadrulella symmetrica), トラケロユーグリファ(Tracheleuglypha), ユーグリファ(Euglypha tuberculata), トリネマ(Trinema enchelys), サイフォデリア(Cyphoderia ampulla), フレンゼリナ(Frenzelina), アスピディスカ(Aspidisca), オフィオキチウム(Ophiocytium bicuspidatum or O. capitatum?), 未同定の黄金色藻, 珪藻各種, クンショウモ(Pediastrum boryanum), フタヅノクンショウモ(Pediastrum duplex v. rugulosum), グロエオキスティス(Gloeocystis sp.), サヤミドロ(Oedogonium), ヒザオリモドキ(Mougeotiopsis), アオミドロ似の糸状藻(葉緑体の螺旋がくずれている), コウガイチリモ( Pleurotaenium trabecula), ミカヅキモ( Closterium baillyanumC. cynthiaC. intermediumC. lunulaC. nematodes), ツヅミモ( Cosmarium oblongumC. pachydermumC. pseudopyramidatumC. quadrifariumCosmarium sp.), ホシガタモ( Eustaurastrum iotanum), イボマタモ( Euastrum ansatumE. oblongum), ハタヒモ( Netrium digitusN. interruptum), チリモ( Desmidium swartzii), ユレモ(Oscillatoria), ネンジュモ(Anabaena), ワムシ, ケンミジンコ, ミジンコ, ソコミジンコ, イタチムシ,

注:これでわかるように,はんのき夫婦沼の水底にはかなりの量の泥(ないしは腐食質)が堆積しているようだ。 よって,ここは比較的最近になって造成された人工の沼ではなく,かなり昔からあった沼である可能性が高い。 原生生物が他に比べて多めなのはそのためかも知れない。遠浅であることも貢献しているはずだが。

はんのき夫婦沼,入口近くで採集しようとしたが傾斜がきついので諦めた(山辺町),10:06-10:07
1枚目:入口に向って沼岸を歩く。 2枚目:舗装道に上がる手前。ここはやや急に落ち込んでいるので,水際に近付くのは危険。 と思いつつ目をあげると・・・。

はんのき夫婦沼,対岸なら採集できそうだ(山辺町),10:07
1枚目:対岸は水際が岸辺に接しているのに気づいた。あそこなら危険を犯さずに採集できそうだ。 そこでいったん舗装道に上がって対岸へ移動することにした。 2枚目:これは前回撮影した画像(2009.5.10,12:56)。 これを見ると,対岸は水際の位置がほとんど変わっていないことがわかる。 ということは,水位の変化はごくわずかであり, さきほどの採集ポイント(沼の南西岸)はほぼ平坦に近い遠浅のためあのように,水際が長い距離を移動したと思われる。

はんのき夫婦沼,車道へ出て対岸へ(山辺町),10:08
前方を左折。なお,右奥には駐車場とトイレがある。

はんのき夫婦沼,沼の東側?からの眺め(山辺町),10:08

はんのき夫婦沼,沼岸へ(山辺町),10:09

はんのき夫婦沼(山辺町),10:10
対岸から見たとおり,岸辺のすぐ側に水面があった。 よってピペットを持った手を伸ばすだけで採集(はんのき夫婦沼-2)できた。 翌日,観察したところ,ここにもたくさんの原生生物がいた。
観察された生物: 渦鞭毛虫の一種, カリキモナス(Calycimonas physaloides), スポンゴモナス(Spongomonas intestinum), リピドデンドロン(Rhipidodendron), トリカメーバ(Trichamoeba), マヨレラ(Mayorella), ナベカムリ( Arcella vulgarisArcella sp.), フセツボカムリ( Centropyxis aculeata), ディフルギア( Difflugia elegansD. penardi), Lesquereusia modesta, アミカムリ( Nebela collaris), ヒアロスフェニア(Hyalosphenia nobilis), ユーグリファ( Euglypha acanthophoraE. crenulataE. tuberculata), ラッパムシ(Stentor sp.), スピロストマム(Spirostomum 初観察), パラコンディロストマ(Paracondylostoma setigerum), プロロドン(Prorodon teres), プロロドン(Prorodon teres), コレプス( Coleps heteroacanthusC. hirtus), ウロトリカ(Urotricha), リトノタス(Litonotus), ラクリマリア(Lacrymaria olor), トラケリウス(Trachelius), トラケロフィルム(Trachelophyllum), ナスラ(Nassula), スチロニキア(Stylonychia mytilus), ハルテリア(Halteria), ストロンビディウム(Strombidium), ユープロテス(Euplotes), ウロレプタス(Uroleptus), ウロセントルム(Urocentrum turbo), レンバディオン(Lembadion lucens), フロントニア(Frontonia), ディセマトストマ(Disematostoma), ミドリゾウリムシ(Paramecium bursaria), クリスチゲラ(Cristigera phoenix), ロクソケファルス(Loxocephalus sp.), 下毛類繊毛虫3種, ヒカリモ(Chromulina wislouchiana), シヌラ(Synura), バキュオラリア(Vacuolaria virescens), 珪藻各種, フタヅノクンショウモ(Pediastrum duplex v. rugulosum), イカダモ(Scenedesmus quadricauda), グロエオモナス(Gloeomonas tecta), サヤミドロ(Oedogonium), ミクロスポラ(Microspora), スティゲオクロニウム(Stigeoclonium sp.), ヒザオリ2種(Mougeotia), コウガイチリモ( Pleurotaenium granuliferum?, Pleurotaenium sp.), ツヅミモ( Cosmarium pachydermumCosmarium sp.), ホシミドロ(Zygnema), ミカヅキモ( Closterium dianaeC. moniliferum?, C. lagoense に似るが細胞壁に縦縞がある初観察)?, アワセオオギ(Micrasterias apiculata), ネジモ(Spirotaenia condensata), 未同定の糸状藻, HapalosiphonAchromatium, イタチムシ, ワムシ, センチュウ, クマムシ,

はんのき夫婦沼,今にも降り出しそうな空模様(山辺町),10:11
さて,これで当初予定したポイントでの採集はすべて終えた(予定外の曲沼でも採集できたし)。 まだ午前10時になったばかりだが,空を見上げると厚い雲で全面が覆われていた。 予報では午後から雨になるとのことだったが,ここは山なのでそれよりも早く降り出す恐れもある(実際そうなった)。 復路は急坂を自転車で下ることになるので,雨が降り出す前に山を降りることにした (しかし,後述するように,間に合わなかった)。

Part VII: はんのき夫婦沼〜荒沼
2009.11.02, 10:12 - 10:26