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クリプト植物門 Cryptophyta

または,クリプト藻綱 Cryptophyceae
カゲヒゲムシ(クリプトモナス)目 Cryptomonadida Senn, 1900
| クリプトモナス科 ( キロモナス属; クリプトモナス属; クロオモナス属 ; ロドモナス属 ) |
| ヘミセルミス科 ( ヘミセルミス属) |
| ???科 ( ピレノモナス属; シアソモナス属; プラギオモナス属) |

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Cryptomonadaceae ; クリプトモナス科
Cryptomonas1 Chilomonas2 Chilomonas3
??? ; 科
Cyathomonas4
scale 50 μm scale 100 μm scale 150 μm; x 400 : scale 20 μm scale 40 um scale 60 um; x 1000
Contributors of these images
1; Cryptomonas ovata (カゲヒゲムシ),
2-3; Chilomonas paramecium (フカミゾヒゲムシ; x 400, x 1000), 4; Cyathomonas sp. (x 640),

細胞の前端部が斜めになった豆形(ふくらみが2山あり片方が他より前方へ突出している状態)を しているのが特徴。先端部の窪み、ないし、溝の部分から2本の等長の鞭毛が前方に向かって伸びている。 片方は羽型(2列の側毛をもつ鞭毛)で、他方は片羽型(または裸)である。
射出体と呼ばれる放出体がある。
葉緑体は4重の膜(二重膜と小胞体槽からなる被膜)につつまれている。 これはクリプト植物が鞭毛虫に他の葉緑体をもった真核細胞が内部共生した結果と考えられる (具体的な共生の相手は紅藻植物 Rhodophyta であると 推定されている)。(→クロミスタ
葉緑体はクロロフィル a + c、フィコシアニン・フィコエリトリン・アロフィコシアニンを含む。 貯蔵物質はデンプン(プラスチドとプラスチド小胞体との間に蓄積する)。 一部には無色のものもあるが、電子顕微鏡観察により退化した葉緑体があることが示されている。
海水性や淡水性の種が知られている。24属 100種ほどからなる。

1目(クリプトモナス目 Cryptomonadales)のみ。

クリプトモナス科
 Cryptomonadaceae
細胞の長軸方向に縦溝とガレット(gullet, 咽喉部)をもつ。 ejectsome ( ejectisome or trichocyst ) がガレットのまわりをおおう。 2本の遊泳鞭毛をもつ。淡水&海水性。
 クリプトモナス亜科
 Cryptomonadoideae
葉緑体をもつ。
 キロモナス亜科
 Chilomonadoideae
葉緑体をもたない。
クリプトクリシス科
 Cryptochrysidaceae
縦溝はあるがガレットがない。ejectsomeは縦溝に沿って並ぶ。 葉緑体,2本の遊泳鞭毛をもつ。淡水性。
ゴニオモナス科
 Goniomonadaceae
葉緑体なし。細胞は扁平で先端部が横に切りとられた形。その部分が浅く窪む。 ejectsomeはその先端部に沿って環状に並ぶ。2本の遊泳鞭毛。淡水性。
カタブレファリス科
 Katablepharidaceae
葉緑体なし。縦溝は細胞をラセン状に囲む。1本の遊泳鞭毛と1本の曳航鞭毛(recurrent flagellum) をもつ。淡水性。
ヘミセルミス科
 Hemiselmidaceae
葉緑体あり。細胞は扁平で腎臓形。2本の遊泳鞭毛は細胞側方からでる。 ejectsomeはわずかで,短軸方向に並ぶ。海水性。

Metakaryota上門
クロミスタ門 Chromista
  クリプトモナス亜門 Cryptomonada
    (Hausman & Hülsmann「Protozoology」2nd ed.)

クリプト植物門 Cryptophyta (クリプトモナド Cryptomonads
  クリプト藻綱 Cryptophyceae
    クリプトモナス目 Cryptomonadales
    (「Handbook of Protoctista」;「生物学辞典」;「五つの王国」)

有毛根足虫門(肉質鞭毛虫門) Sarcomastigophora Honigberg & Balamuth, 1963
  鞭毛虫亜門 Mastigophora Diesing, 1866

    植物性鞭毛虫綱 Phytomastigophorea Calkins, 1909
      カゲヒゲムシ目(隠モナス類、暗色鞭毛虫類) Cryptomonadida Senn, 1900
    (「生物学辞典」)
      クリプトモナス目 Cryptomonadida Senn, 1900
    (「原生動物図鑑」)

LINKS
クリプト植物 In: 藻類画像データ(筑波大)
Division: Cryptophyta In: Classification of Plants, Whittaker FIVE KINGDOM SYSTEM (1978)
at www.cc.mancol.edu
Crown Eukaryotes at The Tree of Life Project at phylogeny.arizona.edu

Subdivisions
クリプトモナス科
 Cryptomonadaceae
クリプトモナス亜科
 Cryptomonadoideae
カゲヒゲムシ属
 Cryptomonas
 (クリプトモナス)
ovata, erosa, rostratiformis, tetrapyrenoidosa
クロオモナス属
 Chroomonas
acuta, coerulea, mesostigmatica
ロドモナス属
 Rhodomonas
 
プラギオセルミス属
 Plagioselmis
 
キロモナス亜科
 Chilomonadoideae
フカミゾヒゲムシ属
 Chilomonas
 (キロモナス)
paramecium
クリプトクリシス科
 Cryptochrysidaceae
クリプトクリシス属
 Cryptochrysis
 
ゴニオモナス科
 Goniomonadaceae
 =キアトモナス科
 Cyathomonadaceae
ゴニオモナス属
 Goniomonas
 
カタブレファリス科
 Katablepharidaceae
カタブレファリス属
 Katablepharis
 
クリプタウラクス属
 Cryptaulax
 
フィルロミトウス属
 Phyllomitus
 
ヘミセルミス科
 Hemiselmidaceae
ヘミセルミス属
 Hemiselmis
brunnescens
???科
 
Pyrenomonas Pyrenomonas salina (= Chroomonas salina Butcher, = Cryptomonas salina Wislouch)
Proteomonas sulcata
Cyathomonas ?  
Plagiomonas ?  

海産の繊毛虫類、Mesodinium rubrumは、きわめて複雑な共生関係をもつ。
すなわち、その赤色色素は退化したクリプト藻類に由来する赤色光合成色素からなる。さらに、 細胞内は、7つの異なる遺伝区画からなる。以上のことからこの繊毛虫は、クリプト藻類が 内部共生したものと推定される。

すなわち・・・
  繊毛虫(クリプト藻類《紅藻植物[葉緑体;ミトコンドリア(退化)];ミトコンドリア》;ミトコンドリア)

という関係がそこにはあるらしい。(7つの遺伝区画=ゲノムとは、繊毛虫の大核と小核の2つと、 上記の内部共生したクリプト藻の核、紅藻植物の核、葉緑体のDNA、クリプト藻由来ミトコンドリアの DNA、そして、繊毛虫由来ミトコンドリアのDNAの5つのゲノムを足して計7つとなる)
  ハウスマン「原生動物学入門」p.93-94 より

References

  1. Huber-Pestalozzi, G., 1950, Das Phytoplankton des Süsswassers. Cryptophyceen, Chloromonadien, Peridinee., E. Schweizer-bart'sche Verlagsbuchhandlung, Stuttgart.

  2. 千原光雄編著, 1997, 藻類多様性の生物学, 内田老鶴圃.
  3. 山岸高旺・秋山優 編, 1984-1996, 淡水藻類写真集, Vol. 1-17, 内田老鶴圃. (Yamagishi, T. & Akiyama, M., 1996, Phtomicrographs of the Freshwater Algae., Vol.1-17, Uchida Rokakuho Pub., in Japanese & English )
  4. Graham, L.E., 1993, Origin of Land Plants, John Wiley & Sons, Inc. , 1993
        渡邊・堀共訳, 1996, 陸上植物の起源 - 緑藻から緑色植物へ, 内田老鶴圃.
  5. 堀 輝三編、藻類の生活史集成、1〜3巻、内田老鶴圃、1993
  6. 森下郁子監修・森下雅子著, 1991, 生物からのメッセージ 川と湖の博物館 1 植物プランクトン, 山海堂.

  7. Hausmann & Hülsmann, 1996, Protozoology, Thieme Medical Pub.
  8. 岩波・生物学辞典・第4版, 1996, 岩波書店.
  9. Margulis, L., Corliss, J.O., Melkonian, M. and Chapman, D.J. (eds.) , 1990, Handbook of Protoctista. Jones and Bartlett, Boston.
  10. ハウスマン, 扇元訳, 1989, 原生動物学入門、弘学出版.
  11. Margulis & Schwartz, 1988, Five Kingdoms; An illustrated guide to the phyla of life on earth., Second edition, Freeman and Company.
  12. Lee, J.J., Hutner, S.H. & Bovee, E.C. (eds.), 1985, An Illustrated Guide to the Protozoa., Society of Protozoologists.
  13. 猪木正三監修, 1981, 原生動物図鑑, 講談社サイエンティフィク.
  14. Kudo, R.R., 1966, Protozoology 5th ed., Charles C Thomas Publisher.


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