アピコンプレクサ　Apicomplexa

すべて寄生性。ヒトや家畜の病原体も多い。寄生虫の中でも最も大きなグループ。 注：「Protozoology」2nd.ed.では約2500種とあるが、他では4800種となっている。
生活環の一時期、 ミクロガメート（microgamete, 雄性配偶子）に鞭毛を生じるほかは鞭毛も繊毛ももたない。
多くの種では無性世代と有性世代があり、生活環は複雑。共通点は、生活環の一時期、 アピカルコンプレックス （apical complex；右図）と呼ばれる構造をもつこと。 アピカルコンプレックスは、極輪（polar ring）、コノイド （conoid）、ロプトリー（rhoptry）、ミクロネーム（microneme）、ペリクル下微小管（subpelliclar microtubule） の５つの構造からなる。（「原生動物図鑑」より）

ペリクル下微小管とともに、細胞膜下には inner membrane complexと呼ばれる膜系があり、 細胞質を完全に覆っている。inner membrane complexは、渦鞭毛虫（藻）類の amphiesmal vesicles、および 繊毛虫の alveoliと相同と考えられる。→アルベオラータ （「Protozoology」2nd.ed.より）

「マラリア病原虫 Plasmodium の核外DNAには、葉緑体に起源をもつ塩基配列があるらしい。これは アピコンプレクサが葉緑体を二次的に失った生物である可能性を示唆している。つまり渦鞭毛藻とアピコンプレクサ の共通の祖先は、光合成生物であった可能性がある。」（井上、「科学」1966より） 　→　アルベオラータ

ペルキンスス綱 　Perkinsasida	コノイドは不完全な円錐しか形成しない。遊走子は鞭毛をもつ。有性世代をもたない。 中間宿主をとらない１宿主性（homoxenous）である。（「原生動物図鑑」） 渦鞭毛藻類 の仲間か、その近縁とした方がいいのかもしれない。
種虫（胞子虫）綱
グレガリナ亜綱 　Gregarinasina	昆虫などの節足動物や環形動物の消化管内やその他の体腔に寄生する。 ガモントは雌雄の二つが縦につながった状態（ 連接, syzygy）になることがある。
コクシジウム亜綱 　Coccidiasina	主に脊椎動物寄生で、消化管とそれに付属する腺の上皮細胞にすむ。 成熟ガモントは小さく、細胞内に寄生する。グレガリナ類にみられるような 連接はふつう起こらない。
バベシア亜綱 　Piroplasmasina	小形で、梨状、円形、棒状、あるいはアメーバ状の細胞。オーシスト、胞子、シストはつくらない。 鞭毛、繊毛もない。通常、ペリクル下微小管もない。ダニ類により媒介される。 脊椎動物（ヒト・家畜など）の体内では、赤血球、あるいはリンパ球、組織球内に寄生する。

Metakaryota上門
アルベオラータ門　Alveolata
　　アピコンプレクサ亜門　Apicomplexa Levine, 1970

アピコンプレクサ門　Apicomplexa Levine, 1970

アピコンプレックス門　Apicomplexa Levine, 1970

　4800種

LINKS

原虫類 In: 検査のための寄生虫図鑑 at www.nih.go.jp（予研）

　 Plasmodium vivax 三日熱マラリア原虫; Plasmodium ovale 卵形マラリア原虫;

　 Plasmodium malariae 四日熱マラリア原虫; Plasmodium falciparum 熱帯熱マラリア原虫;

　 Cryptosporidium parvum　クリプトスポリジウム; Toxoplasma gondii　トキソプラズマ原虫

Introduction to the Apicomplexa at www.ucmp.berkeley.edu

Apicomplexa ("sporozoans") In: Parasites and Parasitology Resources at www.biosci.ohio-state.edu

Apicomplexa at www.vims.edu

Protozoa as Human Parasites at www-micro.msb.le.ac.uk

Veterinary Parasitology 5333 at www.cvm.okstate.edu

Alveolates

Alveolates at The Tree of Life Project at phylogeny.arizona.edu

Alveolata at www.vims.edu

Papers

Apicomplexa In: Browse the MeSH Hierarchy at muscat.gdb.org

Subdivisions

ペルキンスス綱　Perkinsasida		ペルキンスス目　Perkinsorida	Perkinsus
種虫綱　Sporozoasida 　（胞子虫類）	グレガリナ亜綱　Gregarinasina 　節足動物・環形動物 　に寄生	エクソスキゾン目 （原グレガリナ類） 　Archigregarinorida	Exoschizon, Merogregarina, Selenidioides
		グレガリナ目 （真グレガリナ類） 　Eugregarinorida	Gregarina, Lankesteria, Monocystis, Steinina, Urospora
		カウレリエラ目 （新グレガリナ類） 　Neogregarinorida	Caulleryella, Gigaductus, Lipotropha, Ophryocystis, Schizocystis, Syncystis
	コクシジウム亜綱　Coccidiasina 　主として脊椎動物 　に寄生	リチドキスチス目　Agamococcidiorida	Rhytidocystis
		エレウテロスキゾン目 （原コクシジウム類） 　Protococcidiorida	Eleutheroschizon, Grellia
		コクシジウム目 （真コクシジウム類） 　Eucoccidiorida	Adelea, Aggregata, Cryptosporidium, Eimeria (ニワトリコクシジウム), Haemogregarina, Hepatozoon, Isospora, Lankesterella, Plasmodium (マラリア病原虫), Sarcocystis (ウマニクホウシムシ), Toxoplasma
	バベシア亜綱 （ピロプラズマ類） 　Piroplasmasina	バベシア目 （ピロプラズマ類） 　Piroplasmorida	Anthemosoma, Babesia (フタゴバベシア), Dactylosoma, Theileria

References

1. 井上　勲, 1996, 真核光合成生物の多様性をもたらしたもの, 科学, Vol.66, No.4, p.255-263.

2. Hausmann & Hülsmann, 1996, Protozoology, Thieme Medical Pub.
3. 岩波・生物学辞典・第４版, 1996, 岩波書店.
4. Margulis, L., Corliss, J.O., Melkonian, M. and Chapman, D.J. (eds.) , 1990, Handbook of Protoctista. Jones and Bartlett, Boston.
5. ハウスマン, 扇元訳, 1989, 原生動物学入門、弘学出版.
6. Margulis & Schwartz, 1988, Five Kingdoms; An illustrated guide to the phyla of life on earth., Second edition, Freeman and Company.
7. Lee, J.J., Hutner, S.H. & Bovee, E.C. (eds.), 1985, An Illustrated Guide to the Protozoa., Society of Protozoologists.
8. 猪木正三監修, 1981, 原生動物図鑑, 講談社サイエンティフィク.
9. Kudo, R.R., 1966, Protozoology 5th ed., Charles C Thomas Publisher.