第1回日本進化原生生物学研究会: 原生生物における種の実在性 by 月井雄二

1 分子・形態レベルにみられる変異の飽和

1-4. 種を識別するのはむずかしい。

Saccamoeba の場合
 考えてみれば,単細胞の原生生物は,多細胞の我々よりも進化的起源の古いものがたくさんいても不思議はない(既述したように化石の証拠もある)。しかし,原生生物の多くは小さく形態が単純なものが多い。ミカヅキモなどの微小藻類の仲間は微細な形態的特徴を識別しやすいので比較的多数の(形態)種が報告されているが(参照 1-2の注1),いわゆる「原生動物」と呼ばれてきたものの多くは,絶えず形態変化していることもあって細かく種を区別することができず,その結果,報告されている種の数も少ない傾向にある。
 ここに示したのは,アメーバの仲間(裸性根足虫類)であるサッカメーバ(Saccamoeba)属の画像だが,野外採集をすると無限ともいえるほど様々な大きさ,形のものが見つかってくる。そのため,これらを種に分けるのは至難の技といえる。
図9 Saccamoeba属の画像
 ここに示したのは「原生生物情報サーバ」にあるSaccamoeba属の画像である。この中のいくつかは教科書にあるSaccamoeba各種の典型的な形によく似ているが,他はそれらの中間的なものでどれとも判定しがたいものがたくさんいる。

Mayorella の場合
 Saccamoeba属以上に頻繁に見つかるのが,このマヨレラ属(注1)である。池沼・田圃・下水から採集したサンプルには必ずといってよいほど発見される。あまりに多いので撮影したのはごくごく一部にすぎないが,それでもこのように様々な形態のものが見つかる。サッカメーバ同様,これらを「種に分ける」というのはほとんど絶望的ともいえよう。
図10 Mayorella属の画像
 図9同様,「原生生物情報サーバ」にあるMayorella属の画像である。これもSaccamoeba同様,教科書にある図版に似たものもあれば,中間的なものもいる。
 ただし,この図の最上段の細胞は,当初はMayorella属とされていたが,近年,新設されたKorotnevella属に移された。

注1:このマヨレラ(Mayorella)属は,1960年以前の古い文献ではアメーバ(Amoeba)属として扱われているので注意して欲しい。

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