栄養核。
繊毛虫類 にみられる栄養増殖期に機能する核。 小核(生殖核)が二倍体(2n)であるのに対して, 一般に倍数化した状態にある。
ただし,厳密には,小核のゲノムがそのまま倍数化しているわけではない。 受精後に,受精核が分裂して小核と大核に分化するが,大核となる途中の核(大核原基) では,小核のゲノムの再編成 (genome rearrangement) が起こることが知られている。
長い小核のDNAは断片化し一部が失われるとともに,断片化した大核DNAの両端には 末端配列が付加される。また,途中のDNAが失われて再結合して大核DNAとなる場合が多い。
一部の種( 棘毛類; 下毛類) などでは,大核DNAは極端に断片化して短くなり,一つの大核DNAに はおよそ1つの遺伝子しか含まれない長さとなる(これを gene-sized DNAという)。このような状態にあるため大核の分裂の際には,染色体の形成はみられず,一般に ちぎれるようにして分裂が起こる(小核では,染色体が形成され有糸分裂が起こる。 ただし,核膜は消失しない)。
A. ゾウリムシ Paramecium
B. スチロニキア Stylonychia mytilus
C. ツリガネムシ Vorticella
D. ラッパムシ Stentor roeseli
E. スピロコナ Spirochona
F. エフェロータ Ephelota
G. メタフリア Metaphrya sagittae
H. スピロストマ Spirostomum ambiguum
I. オフリオデンデドロン Ophryodendron porcellanum
J. コンコフスリス Conchophthirus caryoclada
redrawn from Grell, Protozoology, p.104, 1973