第1回日本進化原生生物学研究会: 原生生物における種の実在性 | by 月井雄二 |
2. 観察限界について |
2-2. 観察限界を考慮した進化パターン
図13は従来の進化のイメージである。すなわち,各種は様々な変異をもった個体の集合ではあるが,他の種との間には中間型がいないことで明瞭に区別される。1つの山(種)が隔離などの影響で変異幅の異なる2つの山に分かれることで種の分化が起こる。
図13 従来の進化パターン
一方,観察限界がある場合は,かりに中間型が存在して変異が連続していたとしても,見かけ上は前の図と同じになる(図14)。しかし,1つの山が2つに分かれたとしても,それは単にこれまで観察できた変異の個体数が減って観察できなくなり,替わりに従来は観察できなかった変異の数が増えて観察可能になっただけ,かも知れない。
このような「観察限界」の存在と,既述した「変異の飽和」を考慮すると,実際には起きていない種進化があたかも起きているかのごとく見えてしまったり,さらにはこれまで存在していなかった種が突然現れたり,その逆も起こり得るはずである。
図14 観察限界を考慮した進化パターン
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