原生生物の採集と観察
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4 ゾウリムシの培養と観察

2)ゾウリムシの培養法
 ゾウリムシの培養法については,すでに前章までに何度か解説してあるので,ここでは簡単に紹介する。
 1章でも紹介したように,ゾウリムシは池・沼だけでなくむしろ住宅地の下水溝などでよく見つかる。採集してきたサンプルにゾウリムシがいれば,それをシャーレに移し,精米した米粒を1,2個加えておくだけでかなりの期間培養を維持することが可能である。コンディションが良ければ(有害な雑菌が増えない,他の繊毛虫があまりいない等),次第にゾウリムシの数が増加してくるので,そのまま様々な観察の材料として利用できる。
 単離培養を試みるならば,前章で紹介した方法で,細胞の除菌をかねた単離操作を行ない,滅菌した試験管等で培養をすることになる。ここでは前章では紹介していない培養液のみを記す。

各種培養液の組成
 これまでに出てきた培養関連の資料を以下に示す。

ドリル氏液の組成

#CaCl2は別に滅菌し,下記の割合で加える。
#12 ml -> 1600 ml培養液; 6 ml -> 800 ml培養液;3 ml -> 400 ml培養液
ゾウリムシ培養用塩溶液

  最終濃度    原 液   
 mMmMg/literg/2 liter

クエン酸ナトリウム#12.0 mM100 mM29.4 g58.8 g
リン酸一ナトリウム#2 0.6 mM 30 mM 4.7 g 9.4 g
リン酸二ナトリウム(12水塩)#3 1.4 mM 70 mM 25.1 g 50.1 g
CaCl21.5 mM200 mM

#1: くえん酸三ナトリウム 二水和物(C6H5Na3O7・2H2O = 294.10)
#2: りん酸二水素ナトリウム 二水和物(NaH2PO4・2H2O = 156.01)
#3: りん酸水素二ナトリウム・12水(Na2HPO4・12H2O = 358.14)

 以下は,ゾウリムシを培養する際に餌として用いるバクテリア(Klebsiella pneumoniae)を培養するための培地である。通常は,L-brothを用いるが,Klebsiella は大腸菌などと同様に最小培地(養分がブドウ糖と無機塩類だけの培地)でも十分に生育可能である。

L broth

餌用バクテリアの培養液

トリプトン10.0 g
NaCl5.0 g
酵母エキス5.0 g
脱イオン水(または蒸留水)1000 ml

Davisの最小培地

バクテリアの培養液

2HPO47.0 g
KH2PO42.0 g
MgSO40.1 g
(NH42SO41.0 g
クエン酸ナトリウム0.5 g
ブドウ糖2.0 g (20g/100ml を別に滅菌 10 mlを後で加える)
ブドウ糖を一緒に滅菌すると液が茶色に濁る
脱イオン水(または蒸留水)1000 ml

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