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2015.05.30, Part X

根の上湖湿地(湿地A),その1

右に折れると,すぐ先に木道が現れた(中津川市),12:54

右手に根の上湖が広がった(中津川市),12:54
1,2枚目:パノラマ撮影。 木道脇には葉を大きく広げた ミズバショウ や・・・。

根の上湖湿地(中津川市),12:55
ヤマドリゼンマイOsmundastrum cinnamomea var. fokiensis,ゼンマイ科 ゼンマイ属) ? の姿があった。

その先に湿地A(湿地園)があった(中津川市),12:56
1〜3枚目:湿地が見えたところでパノラマ撮影。 全体に湖に向ってやや傾斜している。

根の上湖,湿地A(湿地園,中津川市),12:56-12:57
1枚目:木道脇にわずかながら水たまりがあった。 2枚目:ここで 採集(根の上湖,湿地A-01)
ここには結構な数(種数)の原生生物がいた。 人造湖に接している湿地なので,それほど原生生物はいないのではないかと,あまり期待せずに採集したのだが,これは意外だった。 しかも,その多くは平地で見られる種類ではなく,高地の湿原にある池塘に多くみられる種類ばかりだった。
ということは,ここは人造湖ができる以前からある湿地で,数千年,あるいは,数万年前から続いている可能性が高い。 現在は,根の上湖の水が抜かれて地肌が露出して干上がっているので,このまま放置すれば湿原も干上がってしまうのではないかと心配だ。
観察された生物: クリプトモナス(Cryptomonas sp.), ナベカムリ( Arcella gibbosaArcella sp.), ディフルギア( Difflugia elegans), ヘレオペラ(Heleopera), アミカムリ(Nebela sp.), ヘレオペラ(Heleopera), ユーグリファ(Euglypha sp.), トリネマ(Trinema sp.), サイフォデリア(Cyphoderia ampulla), フレンゼリナ(Frenzelina), ディセマトストマ(Disematostoma minor), ミドリゾウリムシ(Paramecium bursariac, ヒスチオバランティウム(Histiobalantium natans), 未同定の繊毛虫, 小型繊毛虫数種, 珪藻各種, サヤミドロ(Oedogonium), ミクロスポラ(Microspora), ミカヅキモ( Closterium baillyanumC. intermediumC. kuetzingii), ツヅミモ( Cosmarium binum, イボマタモ( Euastrum ansatumE. crassum), ユレモ(Oscillatoria sp.), ワムシ, イタチムシ,

根の上湖,湿地A(湿地園,中津川市),12:57
これは ゴウソCarex maximowiczii var. maximowiczii,カヤツリグサ科 スゲ属) ?
同じものを2年前(2013.05.12),初めて 海上の森 を訪れた際に,海上の森近くの名称不明の池で撮影している(下段)。


2013年05月の様子(2013.05.12,15:01-15:02撮影)。

上と同じ位置で根の上湖をパノラマ撮影(中津川市),12:57
1枚目:木道は前方で左に折れている。 2枚目:木道の先には,土嚢が一列に並べてある。 湿地から水が流れですぎないようにして,湿地の水位を保とうとしているのかも知れない。 4枚目:やってきた方向。

上と同じ位置で湿地側を向いてパノラマ撮影(中津川市),12:58
1〜3枚目:パノラマ撮影。
1,2枚目:縦長の湿原の中央に水路も兼ねている水たまりがある。 2枚目:手前には水がたまっていて見た目は湿原の池塘のようにも見える。 3枚目:この後,木道を進み,前方で左に折れた。
4枚目:iPad mini で現在地を確認。

左に折れた後の様子(中津川市),12:59
1〜3枚目:木道の周囲に水たまりはない。 縦長の湿地の中央は一部裸地化していて,水たまりがわずかにあるようだ。

根の上湖,湿地A(湿地園,中津川市),12:59-13:00
1枚目:水たまりはないが,十分,湿ってはいる。 2枚目:そこでサンプリングチューブを湿地に押し付けて,しみ出してきた泥水(というより,ドロリとした水垢)を採集した (根の上湖,湿地A-02)。 この画像では量が少な過ぎる。そこで,この写真を撮影した後,再度,湿地に押し付けて,水垢を増やした。
翌日以降の観察により,ここにはたくさんの原生生物が生息していることが判明した(注)。 その多くは,高地の湿原でよく見られる大形の接合藻(ミカヅキモが主)だ。 また,大形の有殻アメーバも結構いた。これらも高地の湿原でよく見られるものだ。 平地の水辺に見られるクロロコックム類はまったく見られない。 種数の多さから,ここはかなり昔から湿地として維持されてきたと推察できる。 貴重な場所だ。 )
観察された生物: 共生藻を持つスファエラストルム(Sphaerastrum), ディフルギア( Difflugia bacillariarumD. mammilarisD. oblonga), LesquereusiaPontigulasia, アミカムリ( Nebela collarisN. penardiana or N. hippocrepis?), ヘレオペラ(Heleopera), ユーグリファ(Euglypha sp.), サイフォデリア(Cyphoderia ampulla), フレンゼリナ(Frenzelina), アンフィトレマ(Amphitrema sp.,共生藻なし), 共生藻を持つラッパムシ(Stentor fuliginosus), 未同定の繊毛虫 sp.1, 未同定の繊毛虫 sp.2, 珪藻各種, グロエオキスティス(Gloeocystis sp.), フタヅノクンショウモ(Pediastrum duplex), ボツリオコッカス(Botryococcus sudetica), エレモスフェラ2種(Eremosphaera viridis), ヒザオリ2種(Mougeotia), アオミドロ(Spirogyra), コウガイチリモ( Pleurotaenium minutum = Haplotaenium minutum), ミカヅキモ( Closterium baillyanumC. intermediumC. kuetzingiiC. navicula?, Closterium sp.), ツヅミモ( Cosmarium connatumC. hammeriC. oblongumC. pachydermumC. portianumC. quadrifariumC. ralfsii), 小型ツヅミモ(Cosmarium sp.), ホシガタモ( Staurastrum dilatatum?), イボマタモ( Euastrum ansatumE. crassumE. cuneatumE. humerosum), E. gnathophorumE. validumEuastrum sp. 初観察), アワセオオギ( Micrasterias truncataMicrasterias sp.), ハタヒモ2種(Netrium digitus, Netrium sp.), タテブエモ(Penium cylindrus), フタボシモ(Cylindrocystis), ネジモ(Spirotaenia condensata), ダルマオトシ(Hyalotheca dissiliens), ワムシ, イタチムシ, センチュウ,

注:死にかけているものや,死んだ後の殻などが目立った。 画面でわかるように,ここは干上がりかけている。そのため死にかけているものが多かったようだ。 しかし,それだけ多くの種が濃縮されているので,見つけやすかったともいえる。

根の上湖,湿地A(湿地園,中津川市),13:01
これは? ミタケスゲCarex michauxiana var. asiatica,カヤツリグサ科 スゲ属) ?

根の上湖,湿地A(湿地園,中津川市),13:01-13:02
1〜4枚目:木道の途中からパノラマ撮影。
1枚目:根の上湖側。 2,3枚目:湿地の中央部にある水たまり,というか,ぬかるみ。 上の方ほど石が露出している。
4枚目:木道は前方で右に折れている。

根の上湖,湿地A(湿地園,中津川市),13:02
湿地の中央部を望遠撮影。 このように大小の岩が露出している。 ということで,この辺は「鉱質土壌湿原」と呼んでよいのかも知れない。

Part XI: 根の上湖湿地(湿地A),その2
2015.05.30, 13:02 - 13:11