イポメア属 Ipomoea の植物・分類
イポメア属 genus Ipomoea はヒルガオ科の中で最大の属で,500に近い種が含まれる。世界の熱帯から亜熱帯地域に分布し,多くはつる性,ほふく性の草本で,低木になるものもある。本属の分類に関しては特に園芸花卉的な立場から,アサガオ,ヨルガオ,ルコウソウ類をイポメア属から分離して独立の属と扱うことが多い。ここではオースチン(1979, 1980)の分類を採り上げる。確定的な分類ではないとことわっているが,その概略をあげる。彼はイポメア属を次の3亜属に分け,各亜属をいくつかの節に分けた。
I. | イポメア亜属 | A.イポメア節 (sect. Ipomoea) | B. アサガオ節 (sect. Pharbitis) | |
II. | ルコウソウ亜属 | A. ミナ節 (sect. Mina) | B. ヨルガオ節 (sect. Calonyction) | |
C. 直イポメア節 (sect. Orthipomoea) | D. 粗毛節 (sect. Dasychaetia) | |||
E. 外性原細胞節 (sect. Exogonium) | F. サツマイモ節 (sect. Batatas) | |||
III. | 軟毛種子亜属 (Eriospermum) |
A. 軟毛種子節 (sect. Eriospermum) | B. アクモステモン節 (sect. Acmostemon) | |
C.ポロオサムヌス節 (sect. Poliothamnus) | D. 乾生植物節 (sect. Xerophyta) | |||
E. エルプイポメア節 (sect. Erpipomoea) |
I イポメア亜属 Ipomoea subg. Ipomoea
イポメア節 sect.Ipomoea と アサガオ節 sect.Pharbitis の2節に分けられる。比較的原始的と考えられており,特にアサガオ節は、最も原始的な要素を持ち、ほとんどが3心皮性雌しべ(3-lobed gynoecia)をもっている。ハナシノブ科との類縁性が指摘されている。具体的な植物として Ipomoea pes-tigridis (キクザアサガオ),I. nil (アサガオ), I. hederacea (アメリカアサガオ), I. purpurea (マルバアサガオ), I. indica (ノアサガオ)などがある。
種名 | 特徴 | |
1-5-1b-1 | ノアサガオ (I. indica または P. congesta) | 日本に自生 |
1-5-1b-2 | マルバアサガオ (I. purpurea または P. purpurea) | 欧米で育種 |
1-5-1b-3 | アメリカアサガオ (I. hederacea または P. hederacea) | 日本に帰化 |
1-5-1b-4 | アサガオ (I. nil または P. nil) | 日本に古く渡来 |
この亜属はミナ節 sect. Mina (=sect. Quamoclit sensu Austin),ヨルガオ節 sect. Calonyction,サツマイモ節 sect. Batatasなどの6節に分けられる。この属の中で,比較的特殊化していないサツマイモ節 sect. Batatas から最も特殊化しているa href="Quamoclit.html">ミナ節 sect. Mina (=sect. Quamoclit sensu Austin)まで含まれる。種子の形と軟柔毛性 pubescence に共通の性質がある。具体的には I. coccinea (マルバルコウ),I. alba(ヨルガオ,= Ipomoea bona-nox),I. tricolor (ソライロアサガオ),I. batatas (サツマイモ)などがある。
III 軟毛種子亜属 Ipomoea subg. Eriospermum
この亜属は5節に分けられる。イポメア属の中で最も複雑な分類群である。種子の形,種子に軟柔毛があること,芽生えにおける子葉の付き方に共通性がある。具体的には I. digitata (ヤツデアサガオ),I. arborescens,I. suffruticosa,I. horsfalliae,I. jalapa,I. setosa,I. pes-caprae (グンバイヒルガオ) などがある。
文献