アサガオは植物分類上ヒルガオ科に属する。ヒルガオ科は約 50 属 1500 種からなり,世界の熱帯,亜熱帯地域に分布しており,温帯地域には少数の種がみられるのみである。多くは草本で,茎はつる性,ほふく性,花は大きく漏斗状,鐘状,高盆状,鮮明な色をもつものが多い。まれに低木になり,また高木になるものもある。雌しべは1本,2心皮性,子房は2または4室(イポメア属アサガオ節は3心皮性3室子房)である。雄しべは5本,花粉は球状,楕円体状で,花粉管が生じる発芽溝や発芽孔の数はセイヨウセルガオ属など多くのもので3溝性であり(4,5溝性のものもある),ヒルガオ属では 30 前後,イポメア属には 100 〜 200 の発芽孔をもつ散孔性花粉をもつものがある。またイポメア連とオオバアサガオ連では花粉の外膜(exine)に多数の刺状突起があり,これを有刺型花粉という。他の連では花粉に刺状突起がなく,滑面型花粉という。果実は裂開性のさく果がふつうであるが,液果,堅果をもつものもある。
ヒルガオ科の分類についてはハリアー (H.G. Hallier,1893),ペ一ター (G.A. Peter,1937),オ一ストストローム (S.J. van Ooststroom,1938~43),メルキオール (H.Melchior,1964),オースチン (D.F. Austin,1973,1975)らの研究がある。 ネナシカズラ連については寄生生活を送ること,胚が無子葉で,らせん状に巻くことなど特殊な性質があり,ヒルガオ科から分離して独立の科とする考えが強い。ハリアーは花粉の形態に着目し,ヒルガオ科を滑面花粉型亜科と有刺花粉型亜科に分類し,後者は系統的に前者から由来したのではないかと考えている。染色体数に関してはセイヨウヒルガオ属やヒルガオ属を含むセイヨウヒルガオ連が基本数x=10,11,12 をもつが, 他の連では x=14,15 である。花粉や花柱の形態,果実の裂開性,染色体数などを重視してヒルガオ科の分類が試みられている。
花粉の型 | 花柱 | 果実 | 染色体数 | ||
1-1 | ホルトカズラ連 | 滑面型花粉 | 2裂, 欠如 | 液果, 堅果 | 2n=30 |
1-2 | クレッサ連 | 滑面型花粉 | 2裂, 2個 | さく果裂開 | 2n=28 |
1-3 | セイヨウヒルガオ連 | 滑面型花粉 | 1個 | さく果裂開 | 2n=20,22,24,30, 40,44,50など |
1-4 | メレミア類 | 滑面型花粉 | 1個 | さく果不規則裂開 | 2n=28,30 |
1-5 | イポメア連 | 有刺型花粉 | 1個 | さく果規則裂開 | 2n=28,30,60,90 |
1-6 | オオバアサガオ連 | 有刺型花粉 | 1個 | 液果 | 2n=28,30 |
1-7 | ポラナ連 | 滑面型 3溝性花粉 | 1個, 稀2裂 | さく果裂開 | 2n=26 |
1-8 | アオイゴケ連 | 滑面型 溝性花粉 | 2個2分果 | さく果裂開 | 2n=30 |
1-9 | ネナシカズラ連 | 滑面型花粉 | 2または1個 | さく果不裂開 または横裂 | 2n=14,28,30 |
文献
- Clarke, C. B. (1883) Convolvulaceae. In The Flora of British India IV:179, ed. Hooker, J. D.
- Hallier, H. (1893) Versuch einer nat rlichen Gliederung der Convolvulaceen auf morphologischer und anatomischer Grundlage. Bot. Jahrb. Sys. 16: 453-591.
- Peter, A. (1897) Convolvulaceae. In: Natürlichen Pflanzenfamilien IVa: 25~31 ed. by A.Engler & Prantl, K.
- Wilson, K. A. (1960) The Genera of Convolvulaceae in the Southeastern United States J. Arnold Arboretum 41: 298-317.
- Valentine, D. H. (1972) Convolvulaceae; In Flora Europaea (ed. Tutin, T.G., Heywood, V.H., Burges, N.A., Moore, D.M., Valentine, D. H., Walters, S. M., Webb, D. A.) Cambridge, Univ.Press.
- Austin, D. F. (1973) The American Erycibeae (Convolvulaceae): Maripa, Dicranostyles, and Lysiostyles I. Systematics Ann. Missouri Bot. Gard. 60: 306-412.
- Austin, D. F. (1975) Family 164.Convolvulceae in Flora of Panama(Woodson, R. E., Jr. & Schery, R. W. & Collabortors) Ann. Missouri Bot. Gard. 62: 157-224.
- Powell, D. A. (1979) The Convolvulaceae of the Lesser Antilles J.Arnord Arbor. 60: 219.
- 米田芳秋 (分担執筆) (1989) ヒルガオ科 塚本洋太郎総監修 園芸植物大事典 第4巻: 149 小学館.