原生生物の採集と観察 |
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3 培養法
2)単離した細胞を培養する
c. 無菌培養
以下はゾウリムシ以外の繊毛虫(テトラヒメナ),および,植物性鞭毛虫の無菌培養液である。 |
PPYG培養液
ただし,これはタンパク質成分が多すぎるため,培養の定常期になると,テトラヒメナ自身が出す老廃物が有害な作用を及ぼして死にやすくなる。そこで,その問題を回避するために,以下のような菅井(茨城大)の変法 がある。 |
改変PPYG培養液
これは茨城大学の菅井氏が考案したもので,通常のPPYG培養液のポリペプトンとグルコースの組成比を逆転させてある。こうすると,細胞密度も高くなるし,定常期に達してから後,かなりの期間(室温で10日間程度)細胞が元気に生きている。通常のPPYG培養液は,窒素分が多いため,有害な老廃物が溜まやすいが,この方法では,糖分を主要なエネルギー源とすることで有害な老廃物が出にくくなり,結果として長期間細胞が死なずにいるものと推察される。また,高価なpeptoneの使用量が少なくて済むので経済的。 |
酵母エキス+酢酸ナトリウム培養液
なお,著者は,クロロゴニウムを他の様々な原生生物の餌用に使用しているので,細胞の収量を上げるため以下のように濃度を2倍にし,ブドウ糖を加えて使用している。植え継ぎ後一週間〜10日後に使用。その際,塩溶液で洗ってから与える。
これを容量300mlの三角フラスコに200mlずつ入れて滅菌。 |
ミドリムシ用培養液
ミドリムシだけでなくアスタシア,キロモナス,クラミドモナス,他の無菌培養に利用可能。
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ハイポネックス
藻類の培養用。筆者は,0.02%のハイポネックス(5-10-5,液体のもの)にアメーバ用の塩溶液(KCM, p.41参照)と 2mM Tris-HCl (pH 7.0)を加えたものを滅菌し,これを使って様々な藻類を無菌培養している。ただし,当然ながらすべての藻類に適用できるわけではない。クロレラ類はこれでほとんど問題なく増えるが,接合藻類やボルボックス類の一部はこれではうまく増えてくれない。黄緑色藻類も例数は少ないが,一応増える。 現在までに培養ができた生物: (緑藻類) Chlamydomonas, Chloromonas, Chlorogonium, Haematococcus, Pteromonas, Gonium, Eudorina, Pleodorina, Pandorina, Pediastrum各種, Scenedesmus各種, Coelastrum各種, Dimorphococcus, Dictyosphaerium, Golenkinia, Makinoella, Eremosphaera, Franceia, Selenastrum, Ankistrodesmus, Monoraphidium各種, Chlorococcum, Tetraedron, Tetracystis, Stigeoclonium, (アオサ藻類) Klebsormidium, Gloeotilopsis, Geminella, (接合藻類) Closterium moniliferum, Staurastrum各種, Cosmarium各種, Penium, Micrasterias, Netrium, Trebouxia, (黄金色藻類) Ochromonas, (黄緑色藻類) Botrydiopsis, Ophiocytium, Xanthonema (=Heterothrix),
試みたがうまくいかなかった生物:
(緑藻類)
Carteria,
Pyrobotrys,
Volvulina,
(アオサ藻類)
(接合藻類)
Pleurotaenium,
Closterium acerosum,
Closterium lunula,
(黄金色藻類)
(黄緑色藻類)
なお,カロリーメイトやハイポネックスの場合は「商品」として販売されているものなので,将来,万が一それらが製造中止になると,以後の入手が不可能になるという問題がある。このため,再現性を重視する研究用の素材としては適当ではないが,手軽に入手できて使えるというのは他に替えがたい利点ではある。 |
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