原生生物と日本産アリ類の広域画像データベース

5 今後の課題

5-4. 一般メディアにおける評価


 先に紹介したディレクトリサービスやサーチエンジンの多くは,たんに情報提供者が登録した内容をそのまま紹介したり,キーワードが合致した各サーバ内にあるURL情報を羅列的に紹介しているだけである。したがって,そこには,まさに玉石混交のまま,あるいは,同音異義のURLが山のようにあり,検索をしても利用者が知りたい情報を探し出すのは容易ではない。

 そのような状況が次第に深刻化してくるにつれ,最近では様々な打開策が試みられている。
 その第一は,印刷メディアを通じて,ネットワーク上の膨大な情報を選別・吟味して紹介する試みである。すでに一般の書店には,ネットワークにあるURLをまとめて印刷したイエローページ的な本がたくさん置かれているが,最近は,そこから一歩進んで,手当たり次第にあつめたURLの内容を吟味して,その評価結果をランクづけて紹介する雑誌や書籍が登場している。
 

表5-2 両データベースを紹介した出版物

「日本産アリ類カラー画像データベース」の紹介記事   
  書籍 フィールドワークス著, インターネットガイド ナチュラリストの
ためのWWW, p. 58-59, 日経サイエンス社, 1996
  雑誌 インター辛口ネット ホームページチェック1000, Vol. 1, p.93, 芸文社, 1996
インターネットライフ, 9月号, p.130, ビー・エヌ・エヌ, 1996
AERA臨時増刊インターネット楽々生活 アエラ No.10 3/5号, p35, 1996
  新聞 「日本のアリ全種データベース化」北海道新聞  (1995.6.19)
 
「原生生物情報サーバ」の紹介記事
  書籍 97年度中学校理科教師用指導書別冊「デジタルデータ集」,
大日本図書, 1997(3月末発売予定)
  雑誌 セガサターンウェブ, 創刊号, 工学社, 1996
日経サイエンス, 3月号, p. 60, 日経サイエンス社, 1997

 表5-2は,日本産アリ類と原生生物のデータベースを紹介した様々な印刷物(書籍,雑誌,新聞)を示している。これらはすべて内容をランクづけしたり,それなりの評価記事を添えて紹介しているものである。幸いにして,両データベースはいずれもかなり高い評価を得ている。

 また,前述のディレクトリサービスの中にも,たんに登録されたURLをそのまま紹介するだけでなく,内容をチェックしそれなりの評価(「役立つ」「学びたい人向け」など)を与えてから紹介するものもすでに現れている(図5-2)。

図5-2 「あちゃら」ディレクトリサービス
 比較的最近になって登場したサーチエンジンである。他との差別化をはかるためか,登録されたURLをそのまま掲載せずに,サーバ管理者側で登録されたURLをチェックし,とくに有用なものには「役立つ」「学びたい人向け」などの評価を添付して紹介している。
 ここでは,生物分野では40以上のURLが登録されているが,原生生物,日本産アリ類と他の1つのURLだけに「役立つ」印がつけられている。

 ただし,これらは内容が面白い,学習に役立つ,画像が美しい,といった一般的な立場からの評価であり,とくにデータベースの学術的意義について論じているわけではないことに注意したい。
 一般向けの書籍やディレクトリサービスの中で,純粋に学術的立場から評価しているものを探すのは難しいが,学術分野で評価の動きがまったくないわけではない。