5 今後の課題
ソフト面では,独自に開発した自動更新システムにより一箇所のサーバで追加・更新されたデータを他のミラーサーバに伝達するのは容易である。しかし,最初のデータの更新だけは人間が手作業で行なう必要がある。それを誰がどうやって行なうかなどの技術的な課題が残されている。
そのような技術的課題の背景には,データベースを構築・管理できる人材が思うように育っていない,というより大きな悩みがある。これまで4年間日本蟻類研究会のメンバーと協同作業を行なってきたが,依然としてサーバの維持管理ができる人材は我々三人以外にはいない。サーバの維持管理じたいは技術的にさほど難しくはない。しかし,それ以前の問題としてコンピュータの基礎的な操作になかなか馴染めないために,サーバの管理にまで手が届かないのが現状である。
また,アリの場合は,大勢のメンバーの間で作業を分担してデータベース化作業を行なっているため,グループ内の作業分担の調整に多くの時間と労力を費やしている。何か新しいことやろうとしても,そのための意見調整にかなりの時間がかかる。最後まで意見がまとまらずに頓挫してしまう場合もある。また,各自,データベース以外に様々な研究・教育の業務を抱えているために,個人的な都合により全体の作業がスケジュール通りに進まないことも多い。それらの課題を解決するための議論はほとんどメーリングリスト上で行なっている。
一方,原生生物の場合は,作成グループ以外の研究者にもデータの提供を依頼しているが,データベースの構築作業じたいは,三人のメンバーだけで行なっている。このため,アリの場合のようなグループ内の調整はほとんど必要ない。替わりにある悩みは,他の研究者にデータの提供を依頼しても,提供してくれる人が思うように増えないことである。
これまでにメンバーを含め10名の研究者からデータを提供してもらっているが,期待した程の数ではない。学会や原生生物メーリングリスト(proto@dna.affrc.go.jp)等でデータの提供を呼びかけてからすでに1年半以上が経過しているのに,データを提供してくれる人の数はなかなか増えない。主旨に賛同してくれる人は多いのだが,実際に協力してくれる人が少ないのである。データを提供せずとも,自らサーバを設置してデータベースを構築・公開するならばより望ましいのだが,そのような動きもない。
データ提供が増えないのは,研究・教育,あるいはその他の業務に忙殺されてデータ提供に協力する時間的,精神的余裕がないためかも知れない。ネットワークの利用そのものにあまり馴染んでいないことも理由にあげられるだろう。
しかし,仮にそのような阻害要因があったとしても,以下に示すネットワークを利用した素材情報の公開がもつ学術的意義を十分認識できれば,多少の阻害要因は問題にならないはずでる。