原生生物と日本産アリ類の広域画像データベース

1 日本産アリ類カラー画像データベース作成の経緯

1-5 今後の課題

解説文の英語化
 前述したように,現在海外に向けて公開するために,データベースに含まれる日本語テキストを英語化する作業が進行中であり,まもなく完了する予定である。Robert W. Taylor氏(CSIRO, Canberra, Australia)が蟻類研究会のメンバーが作成した英訳文の校正を行なっている。

 英訳が完了次第,データベースの英語版として正式に世界に向けて公表することにしている(とはいえ,4章(4-2)で紹介するように,すでに海外からのアクセスは日本国内からのものを上回っている。英語の解説がないことを除けば,事実上すでに世界に向けて公開されているといえる)。

 英語版の公開が遅れた理由は,分類学が基本的に母国語主義,すなわち,研究者の母国語による種の原記載が認められているためである。日本で発見されたアリについては英語の記載データがないため,英語化の作業に時間がかかっている。

マトリックス検索法の改良
 採集した標本の種の同定などのためには,複数の形質による検索機能は必須である。そのため,鵜川が考案した完全マトリックス法による検索システム(鵜川ら 1990)が,1995年に鵜川・木原の協同作業によってWWW用のcgiとして開発された。その後,これを属,および種検索用に応用したWebPageを制作した。

 しかし,実際に使用してみるとうまく検索できる場合と,期待するアリが検索されない場合があり,かならずしも常に効果的な検索ができるわけではなかった。そのため,現在は,検索用の各種パラメータ(形態や生態的特徴等)の見直しと,ユーザーインターフェイスの改良を検討中である。

海外のアリ類研究者と連携したアリ類全体のデータベース化
 今後は海外のアリ研究者とも連携して,日本産のアリだけでなく,世界全体のアリについてのデータベース化を行なう計画である。そのために,今井らは,米国の著名なアリ研究者,E.O. Wilson氏らと連絡をとり準備を進めている。

他の生物種への拡張
 将来的には,同種のデーターベースを他の生物種(当面の対象は原生生物)でも実現させたいと考えている。ゆくゆくは全世界に散在している全生物種の分類情報が広域データベース化され,画像を中心としたDPDD(Distributed Public Domain Database)として利用可能になることを願っている(Green 1994)。

 すでに,国内では,他の生物種の研究グループでもデータベース化の計画があり,我々がそれらの計画に協力する体制が整いつつある。