原生生物と日本産アリ類の広域画像データベース

1 日本産アリ類カラー画像データベース作成の経緯

1-4 データベースの内容紹介

 WWW版アリ画像データベースは,1997年3月現在,総ファイル数7589,総ファイルサイズ117 Mbytesで,そのうち,画像ファイルはファイル数3985である。残りはすべて画面に表示される説明文や他のファイルとのリンクを記述したハイパーテキスト(いわゆる htmlファイル,数3604)である。

 ただし,ハイパーテキストのほとんどは同じ内容のものが日本語と英語で2つずつ用意されているので実質的なファイル数は半分になる。英語版では種の解説文などがないものが多い。データベース作成に利用した「検索と解説」の三分冊が日本語で書かれていたためである。現在,それら日本語の解説文を英語訳する作業が進行中で,まもなく完了する予定である。

 画像はJPEG形式で画像圧縮されている。画像および種の解説文等の新規データができた際には随時データベースへ追加している。

データベースの動作
 日本産アリ類画像データベースにネットワークからアクセスすると図1-4(右図)のような初期メニューが現われる。

 このうち,一番上にある「日本産アリ類の検索と解説」がデータベースの本体である。「スミスコレクションと採集標本」はかつて文部省でこのデータベースのデモをする機会があり(1994.11),その際,模式標本と画像データベースの比較を示すために作成したものである。「21世紀の系統分類学への提言」と「画像データベースの構築とそのWWW化」はCD-ROMにあわせて作成したマニュアルに掲載した内容をそのままハイパーテキスト化したものである。画面右にある「English」ボタンをクリックすると英語版メニューが表示されるが,既述したように英語版は種の解説などの英語訳ができていない。


 図1-4 データベースの初期画面

 「日本産アリ類の検索と解説」のタイトルをクリックするとデータベース本体へ移動する(図1-5; 右図)。「利用案内」には,「まえがき」,「使い方」,「用語解説」,「ユーザーマニュアル」の4つのサブメニューがある。各アリの種の画像や説明を見るためメニューとしては「検索システム」と「アリ図鑑」がある。「研究資料館」は,データベースを構成する画像やテキストファイル等の素材データを一覧表示させるためのメニューである。
 図1-5 「日本産アリ類の検索と解説」メニュー画面

 「検索システム」をクリックすると,5種類の検索メニューが現れる(図1-6; 右図)。「種検索」と「属検索」は,鵜川が樹木用の画像データベースを構築した際に考案したマトリックス検索法を採用したものである(鵜川ら 1990)。いずれも,種,または,属の生態・形態的な特徴を適当にわかる範囲で入力し,それに合致した割合の高い順番に種を一覧表示して,その中から探すという検索法を採用している。
 図1-6 「検索システム」メニュー

 「地域別検索」は,日本産アリ類は258種いるとしても,地域ごとに片寄って分布しているものがあるので,地域を指定することである程度検索対象が限定されることを利用した絞り込み法(木原)である。

 「イメージ検索」は,以下の二分岐法検索などの個別の形質を判断して行なう従来の検索法は初心者にはむずかしいため,より直感的に判断できる方法として考案したものである(月井)。各属の代表的な種の画像の一覧(図1-7; 右図)を表示させ,その中で調べようとする標本と似たものを選んでさらに属以下での絞り込みが行なえるようにした。
 図1-7 「イメージ検索」メニュー

 「二分岐法検索」は,もともと三分冊の「検索と解説」にあったもので,分類学で一般に用いられている種を同定するための検索システムである。

 この「二分岐法検索」や「用語解説」では,本文中にある専門用語をクリックするとそれに該当する説明図(各アリの線画等)が表示されるようになっている。

 図1-8(右図)は最終的にたどりつく各種の紹介画面の一例である。各アリごとに主に側面と上部からみた全体像,および,頭部前面の画像計3枚が用意してある。現在画像があるのはデータベース化された250余種の中の143種のみである。画像がないアリは希少種が多く,生体標本が得にくい。そのため,既述したように,現在は既存の標本を写真撮影して生体標本画像の代替としてデータベースに暫定的に組込む作業が行なわれている。これが完了すれば,258種全種についての画像が揃うことになる。
 図1-8 「種解説」画面の一例

 種解説画面にあるアリの各画像をクリックするとさらに大きなサイズ(768 x 512と1536 x 1024)の画像が表示される(図1-9, 1-10)。また,すべての種について調査された県別分布データ(寺山 & 木原 1994)がありその画像データが用意してある(図1-8)。また,種の解説中にある引用文献をクリックするとその文献の著者名,タイトル,掲載雑誌名のリスト(小野山 & 寺山 1994)が表示される。

 この他,種以外にも属,亜科等の解説などもあるが,それらの説明は省略する。詳しくは前述した農業生物資源研究所のミラーサイト(http://www.dna.affrc.go.jp/htdocs/Ant.WWW/htmls/index.html)にアクセスして実体験願いたい。
 また,CD-ROM版にはWWW版の画像データベース以外に,動物写真家 栗林 慧氏が撮影したアリの様々な生態を写した動画データ(QuickTime Movie)も含まれている。なお,今後,追加して作られるCD-ROMは,「遺伝学普及会」から有料で一般に配布される予定である。

 データベースは絶えず追加・更新されているため,アクセスされた時にはかならずしもここで紹介したものと同じとはかぎらないのであらかじめご了解願いたい。