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第49回 日本原生生物学会 : 共生藻を持つラッパムシ,Stentor pyriformisの生息域調査とその培養法の開発

解説-01:
タイトル,「共生藻を持つラッパムシ,Stentor pyriformisの生息域調査とその培養法の開発」
解説-02:
ラッパムシ属のおもな種。色素顆粒の有無,その色,共生藻の有無で分類される。

画面右の図は S. pyriformisを初めて報告した Johnson, 1893の論文に掲載されてスケッチ。

解説-03:
採集地の一例,八幡平北西尾根(標高 1500-1600 m) 第2湿原,2016.09.02
画面上:八幡平頂上から北西に向って緩い坂を下ると,途中にたくさんの湿原が点在する。
画面下:その一つ。登山道は尾根の東側に沿っているが,その途中にあるやや広々した湿原。 前方の稜線が北西尾根。そこから登山道に向って緩い斜面が続く。 斜面の途中に小さな池塘があちこちにある。
解説-04:
かつて沢だったと思われる窪地沿いにある小さな池塘。横幅は 1mほど。向い側の岸辺近くの水底が黄緑色をしている。 そこに近付くと・・・。
解説-05:
デジカメを水没させて水底にいるS. pyriformisの集団を動画で撮影。
(ただし,これは静止画,近々動画も見れるようにする予定)
解説-06:
八幡平北西尾根のサンプルをシャーレに入れて近接撮影。
解説-07:
S. pyriformisの生息域調査の結果,いる(●)いない(○)
2001年から毎年行っている野外調査の結果(画像を記録し始めたのは2006年から) をまとめたもの。調査の際はS. pyriformisに限らず,確認可能なすべての 原生生物(一部,原核生物や多細胞の微小動物なども含む)について記録している。 これはその中からS. pyriformisに関する調査結果をまとめたもの。 多くは同じ場所(高地にある湿原)複数回 訪れて調査している。
解説-08:
各採集地の詳細(標高,いるいない,総種数,採集日など)
このスライドは,何度も採集してS. pyriformis以外の原生生物はたくさん観察できたのに, S. pyriformisは一度も観察されていない湿原について紹介している。
解説-09:
各採集地の詳細(標高, EC, pH,観察できた回数,総種数)
このスライドは,各湿原ごとに,ECとpH測定結果(まだ始めてから間もないのでデータはわずか)と S. pyriformisが観察できた回数を示している。
解説-10:
採集地の様子, 鬼怒沼湿原 (日光市)2010.07.18
画面前方(南側)は600mほど下方に秘湯で知られる奥鬼怒温泉がある。 撮影位置より後方(北側)は,尾瀬だ。
広々した湿原で,大小の池塘がたくさんある。池塘以外の草地も水に浸った状態にある。 水深は20〜30cm程度で,水底は一面S. pyriformisで覆われている(まばらな場所もあるが)。
解説-11,採集地の様子,吾妻連峰/鳥子平(福島市),2016.06.12
解説-12:
培養法の開発,6年間は失敗の連続だった
最初にS. pyriformisの報告を行った Johnson, H.P.(1893) は,その論文の中で 「狭い培養器の中では1ヵ月しか持たない。たくさんの細胞を調べたが,分裂像は一度も観察できなかった。」 と書いている。
解説-13:
培養法の開発,塩溶液を脱イオン水で希釈したらうまくいった
エサとしてはキロモナス(Chilomonas paramecium)を使用。
ただし,分裂速度が極端に遅かった。 早くて2〜3週間,通常は1ヵ月かそれ以上かかった。 このことに気づくのにかなり時間がかかった。 そのため,当初は「増殖しない」と誤解していた。
解説-14:
塩溶液,水道水などの導電率,水温,pH
解説-15:
1/50 KCM + キロモナスだけでは継続的に増殖しなかった
→ 培養法の改良が必要だった。
解説-16:
半年ほどは増殖(8回程度分裂)したが,結局,絶えてしまった
解説-17:
培養液の改良,フルボ酸と養命酒を加えてみた
池塘の水底には大量の腐食質がある。これにはフルボ酸が多く含まれていると推定されるので, 市販のフルボ酸(商品名:カナディアンフルボ)を加えてみた。
また,農業分野では「漢方農法」という栽培法が知られている。これに倣って,漢方薬成分を多く含む「養命酒」を加えてみた。
結果,フルボ酸の場合,細菌の増殖がある程度抑えられたが,S. pyriformisの増殖には目立った効果はなかった。 一方,「養命酒」はごくわずか加えただけだが,S. pyriformisの増殖が促進され,途中で死滅することがほぼ無くなった。
解説-18:
解説-19:
解説-20:
解説-21:

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