まもなく鬼怒沼湿原(日光市),10:50
足下を見ると羽を落としたクロオオアリ(Camponotus japonicus)の女王がいた。
鬼怒沼湿原に到着(標高 約2020m,日光市),10:50-10:51
加仁湯(標高 約1350m)からここまでの所要時間は約2時間48分(08:02-10:50)。
既述したが,前回(2009.7.29)は2時間33分(10:20-12:53)なので15分遅い。
しかし,当初あっためまいを伴う疲労感を考えれば,まあまあのコースタイムだろう。
鬼怒沼湿原,入口からの眺め(日光市),10:51
1〜3枚目:湿原入口に立ってパノラマ撮影。前方には青空があるのだが,手前の湿原は雲が作る影の下にあるため,
湿原にピントを合わせて撮影すると空が明るすぎることになって色がとんでしまった。
結果として,曇っていた前回(下段)とあまり変わらない画像になった。
1枚目:「鬼怒沼国有林」,「おるまい,とるまい,高山植物」,「自然を大切にしましょう,今市営林署」
と書かれた看板。
2枚目:木道は入口近くにあるやや大きめの池塘(鶴沼)の手前で二股に分かれている。が,その先でまた1本に戻る(後出)。
3枚目:「鬼怒川の水源地 鬼怒沼」の案内板。
昨年の様子
(2009.7.29,12:53-12:54撮影)。
木道周辺にいた生き物達(日光市),10:51-10:52
1枚目:コバイケイソウ(Veratrum stamineum)はやや少なめ。
2枚目:空中結婚を終え,羽を落としたクロオオアリ(Camponotus japonicus)の女王。
これはあちこちにいた。前回(2009.7.29)はここでムネアカオオアリの女王を見たが,
今回は見かけなかった。替りにたくさんいたのがこのクロオオアリの女王。
鬼怒沼周辺に棲むオオアリの仲間は,皆この時期に空中結婚をするようだ。
3枚目:タテヤマリンドウ(Gentiana thunbergii var. minor)。
これはいたるところで咲いていた。
雲の影に入っているため,空にレンズを向けるとこのようになる(日光市),10:52
空にレンズを向けピントを固定してから,レンズを前方に向けて撮影すると,こうなる。
鬼怒沼湿原,鶴沼の西側を通って前回,最後に採集したポイントへ向う(日光市),10:53
1〜4枚目:パノラマ撮影。
3枚目:薄暗くなってしまったが,先に到着していた友人
(月井栄三郎氏)
が鶴沼東側の木道に立って熱心にトンボを撮影していた。
鬼怒沼湿原,ここがそのポイント(日光市),10:54
1〜3枚目:パノラマ撮影。
鶴沼の北西側は,木道の周囲にいくつもの池塘が重なり合うような形で湿地が広がっている。
ここは西奥にある大きな池塘(東側より,やや標高が高い)から溢れた水が東にある鶴沼などへ流れ混む途中の流路にもなっている。
鬼怒沼湿原,水底を覗くと・・・(日光市),10:54
前回と同じ位置(おおよそだが)で,木道脇の水底を覗いてみた。すると,,。
昨年同様,緑色のものが水底を覆っていた(日光市),10:54-10:55
水深は20 cm程度だが,昨年(2009.7.29,下段)同様,水底にある枯草や腐食質の表面を無数の緑色の粒々が覆っていた。
昨年(2009.7.29)はこれを見て,少し前に読んだ100年以上前の論文(Johnson, H.P. ,1893,注)に書いてあった
ラッパムシ(Stentor pyriformis)
ではないかと推測した。
しかし,現場で撮影したデジカメの画像だけでは判断がつかなかった。
そこで翌日持ち帰ったサンプルを顕微鏡で観察しようとしたところ,この緑色の粒々は影も形もなくなっていた。
そのため,Stentor pyriformisであるという証拠が得られないまま1年を過ごすことになった。
今回こそは,ということで同じように採集したサンプルをザックに入れ,温度が上がり過ぎないように,
冷えたペットボトルを入れたり,あまり揺らさないようにするなど細心の注意を払って持ち帰った。
しかし,結果は昨年同様で,ここで採集した緑色の粒々は,ふたたび全滅してしまった。
だが,今回は,他の池塘にも同じ緑色の粒々がいるのを確認し(ただし,ここに比べると量は少なめ),
それらも持ち帰ったところ,幸いにもここ以外は皆生き残ってくれた。
そして,翌日の顕微鏡観察により,それらがStentor pyriformisであることが判明した。
湿原の北側で採集した
サンプル(鬼怒沼湿原-21)
にはStentor pyriformisがたくさんいたので,顕微鏡とデジカメを組み合わせてそれらの
静止画と動画を撮影した。
注:Johnson, H.P. (1893), A contribution to the morphology and biology of the Stentors, J. Morph., vol.8, 467-562
昨年の様子
(2009.7.29,14:44-14:46撮影)。
鬼怒沼湿原,ピペットに吸い込んでじっくり観察(日光市),10:56-10:57
1枚目:わずかに動いているような,いないような。
Stentor pyriformis
は実験室で観察しても動きは非常にゆっくりしている。
なので,ここで観察してもS. pyriformisかどうかを判断するのは難しい。
これをサンプル(鬼怒沼湿原-1)
として持ち帰ることにした。
2枚目:ピペットを横にすると,皆下側に沈んでしまう。
これで,少なくとも,これら緑色の粒々は活発に遊泳していないことがわかる。
なので,ここまでの段階では,もしかしたら,これらはラッパムシではない何か別の生き物(藻類など)では?
という疑念が拭い切れなかった。
しかし,上述のように,幸いにも,他の池塘で採集した同じ緑色の粒々を顕微鏡観察した結果,
これらが
ラッパムシ(Stentor pyriformis)
であることが確認できた。
観察された生物:
ツヅミモ(
Cosmarium globosum),
ハタヒモ(Netrium oblongum),
ダルマオトシ(Hyalotheca dissiliens),
クロオコッカス(Chroococcus turgidus),
ユレモ(Oscillatoria),
鬼怒沼湿原(日光市),11:01
1枚目:木道脇で花が終わったヒメシャクナゲ(Andromeda polifolia)を撮影。
2枚目:鬼怒沼湿原-1の採集ポイント近くの緑色の粒々がいない水底でも
採集(鬼怒沼湿原-2)。
観察された生物:
ミドリムシ(Euglena mutabilis, 小型),
ペラネマ(Peranema),
ナベカムリ(Arcella sp.),
フセツボカムリ(
Centropyxis aculeata),
ヘレオペラ(Heleopera),
アミカムリ(Nebela carinata),
共生藻を持つチラキディウム(Thylakidium),
珪藻少々,
エレモスフェラ(Eremosphaera viridis),
グロエオキスティス(Gloeocystis sp.),
ボツリオコッカス(Botryococcus sudetica),
サヤミドロ(Oedogonium),
ヒザオリ(Mougeotia),
コウガイチリモ(
Pleurotaenium minutum),
ミカヅキモ(Closterium abruptum),
ツヅミモ(
Cosmarium globosum),
ホシガタモ(
Staurastrum hystrix,
S. gracile,
S. orbiculare,
Staurastrum sp.),
イボマタモ(
Euastrum cuneatum,
E. humerosum),
ハタヒモ(
Netrium digitus,
N. oblongum),
タテブエモ(Penium polymorphum),
クロオコッカス(
Chroococcus pallidus,
C. turgidus),
シネココッカス(Synechococcus),
メリスモペディア(Merismopedia),
ユレモ(Oscillatoria),
ワムシ,
クマムシ,
Part VI: | 鬼怒沼湿原(2) 2010.07.18, 11:02 - 11:28 |