一般的結論としては,普遍的存在としての種はない。種があるのではなく,我々の脳がそう考えた がっている,というべきだろう。従来の「生物学的種」からは種を取り除いた方がよい。 Sexual group などと呼ぶべき。
生物界の一部には,変異の不連続性が認められるが,全ての生物がそうであるわけではない。 それ故,すべての生物に適用可能な種概念はない。いいかえると,普遍的な存在としての種は 実在しない。
現実には,発見されたすべての生物には名前がつけられる。このため,名前の数だけ個別に 識別可能な種がいるように思われがちだが,それは間違い。実際には,自然がそうなっている のではなく,我々自身の中にそうしたい,あるいは,そのようにしないと自然が認識できない 認知システムがあるからである。
その認知システムはかならずしも自然をあるがままに捉えているわけではないので, 種の認知においても十分に気をつける必要がある。
以上の考察から,ゾウリムシに関しては,つぎのようなことがいえる。
- 種の有無にとらわれず,進化の実態をありのままに知るべき。
- いずれにせよ,生物学的種と同義である「シンジェン」を用いるのは不適切。
- 当面は「接合型グループ」とそのままの名前で呼ぶしかない。
- 接合型グループは多系統である可能性が高い。したがって,分子系統の結果と組み合わせて グループ分けをするのが妥当だろう。とはいえ,分子系統を導入すれば,すっきり区分できると はかぎらない・・・。系統間で交雑が起きているとすれば,なおさらである。
要 約
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