1998年度 川渡合同セミナー:種とは何か?  by 法政大学第一教養部 月井雄二

4 結 論

 <時間の関係でこの部分は文章が完成していません。要点のみ羅列します>

 一般的結論としては,普遍的存在としての種はない。種があるのではなく,我々の脳がそう考えた がっている,というべきだろう。従来の「生物学的種」からは種を取り除いた方がよい。 Sexual group などと呼ぶべき。
生物界の一部には,変異の不連続性が認められるが,全ての生物がそうであるわけではない。 それ故,すべての生物に適用可能な種概念はない。いいかえると,普遍的な存在としての種は 実在しない。
 現実には,発見されたすべての生物には名前がつけられる。このため,名前の数だけ個別に 識別可能な種がいるように思われがちだが,それは間違い。実際には,自然がそうなっている のではなく,我々自身の中にそうしたい,あるいは,そのようにしないと自然が認識できない 認知システムがあるからである。
 その認知システムはかならずしも自然をあるがままに捉えているわけではないので, 種の認知においても十分に気をつける必要がある。

 以上の考察から,ゾウリムシに関しては,つぎのようなことがいえる。


要 約
  1. 有性生殖が普遍的でないため,生物学的種概念には普遍性がない。
  2. 「種」概念が普遍性をもつと推測されるのは,生物界にみられる「変異の不連続性」という 経験的事実があるため。
  3. しかし,現実には,すべての生物で変異が不連続であるわけではない。
  4. 変異の不連続性以外に普遍性のある種識別の手掛かりがない以上,普遍性のある 種概念は成立しない。よって,種概念には普遍性がない,と考えるべきである。
  5. 種はファジィ集合であり,その識別には,プロトタイプが重要な役割を果たす。 ただし,プロトタイプ(基準標本)の決定には「観察の理論依存性」が影響する可能性が高い。 したがって,種の識別が客観性に欠ける危険性があることに留意すべきである。


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