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2007.06.04, Part VII

居谷里湿原(1)

居谷里湿原南端に到着 (大町市),12:22
前回(2006.5.8)は左の木道へ入り,そのまま湿原西側の遊歩道を北へ進んだ。 しかし,遊歩道はかなり狭く自転車を抱えながらでないと歩けないほどだった。 その上,本来は湿原北の入口→西側の遊歩道→湿原南端(現在地)→湿原東側の林道と辿るべき(順路)だったらしく, 途中で前方から来る人達とすれ違うのに苦労した。 それがあったのと,西側にはめぼしい採集ポイントがなかった,東側はまだ歩いていない,ということで, 今回は湿原の東側に沿った林道を行くことにした。

居谷里湿原 かさすげ橋手前 (大町市),12:22-12:23
その前に,とりあえず木道の先にある「かさすげ橋」の手前まで行き, 北側に広がる湿原を撮影。
1,2枚目:「かさすげ橋」周辺に育つミズバショウLysichitum camtschatcense)。 すでに花は終わり葉だけが大きく育っていた。 3,4枚目:木道から見える湿原の様子。木々の葉が生い茂って遠くが見通せない。

居谷里湿原 湿原脇の林道を北へ(大町市),12:23

居谷里湿原 湿原脇の林道を北へ(大町市),12:24

居谷里湿原 ハンノキ小径へ入る(大町市),12:26
前方左手に「ハンノキ小径入口」の案内板が現れた。 ここを降りて湿原へ近付いてみた。

居谷里湿原 ハンノキ小径を北へ (大町市),12:26-12:27
湿原のすぐ脇の遊歩道を歩く。

居谷里湿原 ハンノキ小径を北へ(大町市),12:27
途中にはこのような休憩所?もある。

居谷里湿原 ハンノキ小径を北へ(大町市),12:28
ほどなく前方で右折してハンノキ小径は終わる。

居谷里湿原 ハンノキ小径を出る(大町市),12:28-12:29
1枚目:前方の坂道を上がって林道へ戻る(2枚目)。

再び居谷里湿原脇の林道を北へ (大町市),12:29
東側には採集ポイントはないのか,と思いつつ林道を進み始めると,左下の湿原の手前に4,5箇所,規則的に並んだ水たまりがあった。 おそらく耕作地だった頃の名残りだろうが,木々の葉に覆われて薄暗い。 急な土手を降りなければならないので,どうしようかと一瞬迷ったが,このままだと何も採集せずに終わってしまいそうだったので, ひとまず土手を降りて近付いてみることにした。 林道脇から水たまりの近くまで踏み跡があるので,そこを辿って近付いた。

居谷里湿原 (大町市),12:30-12:31
2枚目:近付くと,水たまりの間は落ち葉が厚く堆積していた。 水たまりは日当たりが悪く,水じたいはかなり澄んでいた。 こういった場所には原生生物はあまりいないことが多いが,あまり期待せずに各水たまりから1つずつサンプルを採集してみた。 しかし,翌日,観察すると,意外や意外,非常にたくさんの原生生物が観察できた。 とくにミドリムシの仲間(ウチワヒゲムシやトラケロモナス)が色々いて中には始めて見る種類もいくつかあった。 ここは水が滞留したままの状態が長年続いているものと思われる。 ただし,藻類はごくわずかで,ほとんどは腐食性の環境に多い従属栄養の生物だった。 山の上にある湿原にみられる大型の接合藻類(注)や大型の有殻アメーバ(ネベラ等)は非常に少ない。

居谷里湿原 (大町市),12:31-12:32
まずは一番南側の水たまりで採集(居谷里湿原-1)。 以下のように,ここが一番種類が多かった。 また,今回の採集全体でみても,種類数だけでいうと,ここがもっとも数が多い。

観察された生物(6/5): クリプトモナス(Cryptomonas), ゴニオモナス(Goniomonas), リピドデンドロン(Rhipidodendron), ウチワヒゲムシ( Phacus longicaudaPhacus ranula 初観察P. torta or P. helicoides), トラケロモナス(Trachelomonas sp.Trachelomonas caudata 初観察), レポキンクリス(Lepocinclis ovum), カリキモナス(Calycimonas physaloides), ヘテロネマ(Heteronema sp.), アカントキスチス(Acanthocystis sp.), ナベカムリ2〜3種( Arcella gibbosaArcella sp.), フセツボカムリ(Centropyxis), ラッパムシ(Stentor), ウロセントルム(Urocentrum turbo), コレプス(Coleps), ロクソケファルス(Loxocephalus), ミドリゾウリムシ(P. bursaria), 共生藻を持つミクロトラクス(Microthorax), シヌラ2種(Synura), マルロモナス(Mallomonas), バキュオラリア(Vacuolaria virescens), 珪藻各種, ゲミネルラ(Geminella), ミカヅキモ( Closterium intermediumC. kuetzingii), ハタヒモ(Netrium digitus), Achromatium, センチュウ, ワムシ,
観察された生物(6/6): ミドリムシ(Euglena spirogyra), ウチワヒゲムシ( Phacus hispidulusPhacus sesquitortus), Phacus sp. P. longicaudaに似るが横幅が広い,ほぼ円形 初観察), ディフルギア( Difflugia acuminataD. pyriformis), アミカムリ(Nebela collaris), ウロトリカ(Urotricha), ウロネマ(Uronema), プロロドンまたはシュードプロロドン(Prorodon or Pseudoprorodon), フロントニア(Frontonia elliptica or F. fusca), タテブエモ(Penium margaritaceum), ネジモ(Spirotaenia obscura大型), ダルマオトシ(Hyalotheca dissiliens var. dissiliens), クマムシ, ケンミジンコ,

居谷里湿原 (大町市),12:32-12:33
次は隣の水たまりで採集(居谷里湿原-2)。 ここにも結構いた。
観察された生物(6/5): クリプトモナス2〜3種(Cryptomonas), カラエリヒゲムシ(Salpingoeca), ウチワヒゲムシ(Phacus ranula), トラケロモナス(Trachelomonas caudata), レポキンクリス(Lepocinclis salina), リピドデンドロン(Rhipidodendron), コクリオポディウム(Cochliopodium), ディフルギア( D. bacillariarum), アミカムリ(Nebela collaris), ウロトリカ(Urotricha), プロロドンまたはシュードプロロドン(Prorodon or Pseudoprorodon), ハルテリア(Halteria), マルロモナス(Mallomonas), 珪藻各種, ミカヅキモ( Closterium kuetzingii), ワムシ,
観察された生物(6/6): レポキンクリス(Lepocinclis ovum), トラケロモナス(Trachelomonas sp.), コロトネベラ(Korotnevella), トラケロフィルム(Trachelophyllum) クリソピキシス(Chrysopyxis), バキュオラリア(Vacuolaria virescens), ヒザオリ(Mougeotia),

居谷里湿原 (大町市),12:33
水たまりの先は日当たりのよい湿原。周囲からは エゾハルゼミTerpnosia nigricosta)と シュレーゲルアオガエルRhacophorus schlegelii) の鳴き声がした。

        ←音声(エゾハルゼミとシュレーゲルアオガエル)

居谷里湿原 (大町市),12:34
カキツバタIris laevigata)?も所々に咲いていた。

居谷里湿原 (大町市),12:35-12:37
場所を移動して右(北)隣にある3番目と4番目の水たまりでも採集(居谷里湿原-3, -4)
観察された生物: クリプトモナス(Cryptomonas), ウチワヒゲムシ( Phacus hispidulusPhacus sp.), レポキンクリス(Lepocinclis ovum), トラケロモナス( Trachelomonas armataTrachelomonas caudataT. hispidaT. superba), レポキンクリス(Lepocinclis ovum), リピドデンドロン(Rhipidodendron), 太陽虫の一種, ナベカムリ( Arcella vulgarisA. gibbosa), フセツボカムリ(Centropyxis), アミカムリ3〜4種(Nebela collarisNebela sp.), ユーグリファ(Euglypha tuberculata), トリネマ(Trinema), ラッパムシ(Stentor igneus, 共生藻類有り), スピロストマム(Spirostomum minus), ウロトリカ(Urotricha), ハルテリア(Halteria), ディセマトストマ(Disematostoma bütschlii), マルロモナス( Mallomonas mesolepisMallomonas sp.), バキュオラリア(Vacuolaria virescens), スピロストマム(Spirostomum intermedium), ハルテリア(Halteria), ディセマトストマ(Disematostoma minor), 珪藻各種, クロロモナス(Chloromonas sp.), グロエオモナス(Gloeomonas), ゲミネルラ(Geminella), ヒザオリ(Mougeotia), ミカヅキモ( Closterium abruptumC. kuetzingii), Achromatium, ワムシ, ケンミジンコ, ミジンコ, クマムシ,

居谷里湿原 (大町市),12:38
4番目の水たまりのさらに隣にもやや小さな水たまりがありそうだったが,この辺で切り上げて林道に戻ることにした。 林道に上がる途中の土手に,さきほども林道の途中で撮影したスミレの仲間が咲いていた。 これはエゾノタチツボスミレViola acuminata)。 この時は種名がわからなかったが, 翌年(2008.6.1)になって再度撮影した結果, 種名が判明。

再び居谷里湿原脇の林道を北へ (大町市),12:38-12:39
2枚目:途中にあった「居谷里一番水」(薄暗いことを気にせずシャッターを押したためか,ピンボケになってしまった)。

Part VIII: 居谷里湿原(2)〜国道148号 糸魚川街道を北へ
2007.06.04, 12:39 - 13:06