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ゾウリムシにおける

アルカリ法によるプラスミドDNAの単離

 

この方法は,バクテリアプラスミドDNAの単離法をそのままゾウリムシにあてはめたものである。
当初これでいくつかの野外株からヘアピン状のDNAが単離された。その後,それらはミトコンドリア内にある type-II プラスミドであることが判明した。Type-II DNAは,二種のヘアピンDNAがmonomer & dimer構造をとって存在する。

1 ゾウリムシ細胞の培養

 大量に培養するためには,アカエンドウ豆培養液を通常の倍の濃度にして1ιのフラスコで培養する。うまくいくと,一本のフラスコから 1 ml 弱の細胞のペレットが得られる。早く,かつ,頻繁に大量のサンプルを得るためには,定常期に達したフラスコを前日にバクテリアを接種した培養液と等量あるいは,2本の定常期フラスコに対して1本の餌フラスコの割合で均等に混ぜる操作を毎日,ないし隔日に繰り返す。この方法で餌を加えてから再び定常期に達するまでには,すくなくとも2〜3日かかる。したがって,毎日培養を続けながら,かつその一部を実験に使うためには,餌だけのフラスコ,混ぜてから1日目のもの,2日目のもの,3日目のものなど,各ステップのものが常時,準備されている状態を維持しなくてはならない。

2 細胞の集め方

 この方法については,別記「ろ紙を利用したゾウリムシの集め方」で詳しく解説している。

3 プラスミドの単離

 集めた細胞は,バクテリアのプラスミドを取るときとおなじやりかたで溶かし,酢酸ナトリウムを加えることでプラスミド以外の成分を除去することで精製を行う。しかし,バクテリアの場合と異なり,ゾウリムシの場合は,以下の方法で,核クロマチン成分が酢酸ナトリウムを加えた際にタンパク質などと一緒に沈澱するはずなのだが,実際には完全には沈澱せず,プラスミド分画にかなりの量が混入してくる。そのため,最終的には,電気泳動をしてプラスミドの部分だけをゲルから切り出しゲルから取り出すことで精製することになる。

 したがって,今のとことこれしかないというだけで,ベストの方法というわけではないが,一応,方法を以下に紹介する。

a)細胞の溶解

 細胞を,STE sol.にサスペンドしたのち,Lytic sol.を加えるのが通常のやりかただが,面倒なので,両者を同時に加える。その際に,STE:Lytic sol.=1:2の比で混ぜる。細胞のペレットとの比は,なるべく大きいほうがよい,少なくト−タルで10倍以上の量は必要だろう。

 最近の場合は,STEにリゾチ−ムを加えて細胞壁を溶かすこともするのだ,ゾウリムシには不用なので加えない。

 以上の溶液を加えながら,スタ−ラ−でかくはんすると,DNAが溶けだし,液はかなり粘調になる。

b)3M酢酸ナトリウムによる沈澱

 十分に細胞が溶解してから(30分以上),これに3M酢酸ナトリウムを細胞溶解液:酢酸ナトリウム=2:1の比でゆっくりと加えていく。すると,pHが,アルカリから酸性に変化しタンパク質などが沈澱する。此の際に,一本鎖になっていたDNAは急激なpHの変化のため二重ラセンに戻ることができずに変性したままタンパクなどと一緒に沈澱する。(・・・はずなのだが,すでに記したように,ゾウリムシの場合は,完全に沈澱せずにかなりの量が溶けた状態で残ってしまう。)また,このとき,小さな環状DNAや,ヘアピンDNAは,すぐに reanneal する相手がみつかるので,二重ラセンに戻ることができ,選択的に可溶性分画の中に残ってくる。

 この状態で,4゜Cに30分以上静置する。その後,遠心を行い上澄みを回収する。ガ−ゼなどを用いてできるだけ沈澱物を混入させないように気をつける。後は,これからDNAを抽出すればよいわけである。

c)DNAの回収

 これは,通常の方法で行えばよいので詳しい方法の解説は省略する。


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