この方法は,バクテリアプラスミドDNAの単離法をそのままゾウリムシにあてはめたものである。
当初これでいくつかの野外株からヘアピン状のDNAが単離された。その後,それらはミトコンドリア内にある type-II プラスミドであることが判明した。Type-II DNAは,二種のヘアピンDNAがmonomer & dimer構造をとって存在する。
したがって,今のとことこれしかないというだけで,ベストの方法というわけではないが,一応,方法を以下に紹介する。
a)細胞の溶解
細胞を,STE sol.にサスペンドしたのち,Lytic sol.を加えるのが通常のやりかただが,面倒なので,両者を同時に加える。その際に,STE:Lytic sol.=1:2の比で混ぜる。細胞のペレットとの比は,なるべく大きいほうがよい,少なくト−タルで10倍以上の量は必要だろう。
STE sol. | ショ糖 | 0.25M | |
トリス塩酸 | 50 mM (pH 8.8) | ||
EDTA | 50 mM | ||
Lytic sol. | NaOH | 0.2N | |
SDS | 1 % |
最近の場合は,STEにリゾチ−ムを加えて細胞壁を溶かすこともするのだ,ゾウリムシには不用なので加えない。
以上の溶液を加えながら,スタ−ラ−でかくはんすると,DNAが溶けだし,液はかなり粘調になる。
b)3M酢酸ナトリウムによる沈澱
十分に細胞が溶解してから(30分以上),これに3M酢酸ナトリウムを細胞溶解液:酢酸ナトリウム=2:1の比でゆっくりと加えていく。すると,pHが,アルカリから酸性に変化しタンパク質などが沈澱する。此の際に,一本鎖になっていたDNAは急激なpHの変化のため二重ラセンに戻ることができずに変性したままタンパクなどと一緒に沈澱する。(・・・はずなのだが,すでに記したように,ゾウリムシの場合は,完全に沈澱せずにかなりの量が溶けた状態で残ってしまう。)また,このとき,小さな環状DNAや,ヘアピンDNAは,すぐに reanneal する相手がみつかるので,二重ラセンに戻ることができ,選択的に可溶性分画の中に残ってくる。
この状態で,4゜Cに30分以上静置する。その後,遠心を行い上澄みを回収する。ガ−ゼなどを用いてできるだけ沈澱物を混入させないように気をつける。後は,これからDNAを抽出すればよいわけである。
c)DNAの回収
これは,通常の方法で行えばよいので詳しい方法の解説は省略する。