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赤エンドウ豆による培養法


材料:
   赤エンドウ豆 1合 120 円位 
   スティグマステロ−ル(5mg/ml: EtOH)
   脱イオン水
   餌用バクテリア Klebsiella pneumoniae
   Na−リン酸緩衝液(組成は後述)


赤エンドウ豆エキス(培養液の原液)のつくり方

 まず,赤エンドウ豆,約40gをフラスコに入れ,DWを600〜700ml ほど加える。これに100% EtOH に溶かしたスティグマステロ−ルを約4 ml,フラスコをかきまぜながら加える。かきまぜながら加えるのは,スティグマステロ−ルは,水に不溶性なのでなるべく細かい粒子として分散させるためである。フラスコは直ちに白濁するが,このまま,気にせずオ−トクレ−ブする。(このときリン酸緩衝液を混ぜてオ−トクレ−ブすると,豆がくずれず,中の成分が十分外に溶けださない。そのため,緩衝液の添加は原液を希釈する際に行う。)

 尚,スティグマステロ−ルを加えるのに使用したピペットはそのまま水につけるとスティグマステロ−ルが,壁面にこびりついてしまうので,いったんエタノ−ルで内部を洗浄してから水につける。


培養液のつくり方

原液の濾過:赤エンドウ豆のオ−トクレ−ブ後,不溶性成分が沈澱するのを待って,ガ−ゼを使い(なるべく厚く重ねる。8枚以上),上澄みの部分のみを丁寧に漉し取る。このとき固形成分は混じらない方が良いので,けちけちせず,固形成分の多い残りは捨てる。したがって,エキスの量は 500 ml 程度に減る。次に,この液にリン酸緩衝液を 256 ml を加えた後, DW を加え, 800 ml とする。これが本当の原液となる。

培養液:そして,この原液 50 ml を DW で希釈して 800 ml とした上で(したがって一本の原液から16本の培養液ができる;もし,16本も作る必要がなければ残った原液が無駄になるので,最初の豆を20g/フラスコとして100 ml を希釈して800 ml とすれば8本),再びオ−トクレ−ブしたものが培養液となる。(レタスで作る培養液ではこの後,バクテリアを加える際に,Ca も追加するが,赤エンドウの場合は入れなくとも大差ないので,大量培養用の培養液をつくる場合などは,煩雑さを防ぐために Ca は入れない。もし入れるならば,その際は必ずCaも別個に滅菌しておくことを忘れないように{後述}。)

 滅菌後,スラントで培養してあったバクテリアを加え,約1日後に使用する。

ヒント
バクテリアの加え方: 培養液の作成において最も注意しなければならないのは,作成過程での雑菌の混入(通称コンタミ)を防ぐことである。コンタミがおきてしまうと,おなじバクテリアなので見た目ではわからないので,そのまま,培養液として使うと次第に培養状態が悪化し,実験にならなくなる場合もある。したがって,できうる限り,コンタミが起こりえない状態で培養液作りをすることが望ましい。

 そのためには,無菌室で作業を進めることが最良だが,それもままならない場合は,さまざまな工夫をすることが必要となる。筆者は,後述するカルシウムを加える際にあらかじめカルシウム液をスラント内に注ぎ入れ,バクテリアを火で焙った白金耳でそぎ落として,カルシウム液とともに培養液の中に加えている。こうすると,培養液の蓋を何度も開け閉めせずに一度にカルシウムとバクテリアを加えることができるので,それだけ,(蓋の開け閉めによる)コンタミの起こる確率を減らすことができる。




アカエンドウマメ培養液の作成法
 


実物の写真
(左;滅菌前,中;オートクレーブした原液,右;バクテリアを接種する前の培養液)  



Na−リン酸緩衝液の組成

 これは,いわゆるDryl氏液と呼ばれるものから Ca 成分を除いたものの 50倍濃縮液である。50倍というのは,後で原液を 50倍に希釈するためであり,Caを加えないのは,もともとはCaを加えたままで滅菌するとCaとリン酸が反応してリン酸カルシュウムの沈澱ができてしまうためである(そのため,レタスの場合は,両者を別々に滅菌し,室温にもどってから混ぜ合わせる)。

                       最終濃度

     クエン酸ナトリウム   100mM(2.0mM) 29.4g/l
     リン酸1ナトリウム    30mM(0.6mM)  4.7g/l
     リン酸2ナトリウム    70mM(1.4mM) 12.5g/l
                              pH 7.0

参考:  滅菌後に加えるCaは,下のものを6ml/800mlとする
     CaCl2        200mM(1.5mM) 22.0g/l

 

 このカルシウム液も事前に滅菌して保存しておく。筆者は,一回分ずつをスクリューキャップで蓋のできるネジ付試験管(16×125mm)に分注して滅菌し保存している。こうすると,大容量で保存しておく場合に生ずる操作過程でのコンタミをなくすことができる。


スラント(斜面寒天培地)の作り方

 これは,一般のバクテリアのスラント培養の仕方とおなじ。簡単にいうと,バクテリアの培養液(なんでもよい。Klebsiellaは大腸菌と同様,最小培地で生育できるので,大概の培養液で育つ。)に寒天を1〜%加えたものを溶かし(オ−トクレ−ブを使うと良く溶ける),これを適量試験管にいれ,栓(*)をした上で滅菌する。

 滅菌後,試験管を斜めにして寒天を固まらせる。これが,いわゆる斜面培地である。これに,白金耳でバクテリアを移植して培養する。一晩たつと白金耳でなぞった後にバクテリアのコロニーが線状に現われる。一般的には,これに培養液を少量加え,バクテリアを白金耳を使って懸濁させた上でもとの培養液に戻す。しかし,筆者は,前述したようにカルシウム液と一緒にして加えている。

*栓としては,綿栓が古くから使われてきたが,最近では,シリコン性のものがよく使われるようになっている。いわゆる「シリコ栓(シリコンをスポンジ状にしたもので,通気性がある栓)」が手頃だが,シリコン性のダブルキャップ(折り返しのついた栓)でも構わない。


備考

えんどう(あかえんどう)

 Pisum sativum L. var. arvense Poir. [まめ科]

 ヨ−ロッパ原産で畑に栽培される越年草本で,秋に種子をまく。茎は高さ1m内外,円柱形で無毛,中空で直立する。葉は互生して葉柄があり,葉質はやわらかく,1〜3対の小葉をもった羽状複葉で,先端は分岐した葉ひげとなり,茎が直立するのをたすける。小葉は卵形または楕円形,長さ2〜5cm,頭部は円形で末端には微ー起があり,基部も円形でごく短い柄がある。ふちには時には小数の小きょ歯があるが,,一般には全縁。托葉は葉状で小葉よりもずっと大きく,半切した心臓形で下半部のふちには歯牙状のきょ歯がある。春に葉アから長い花軸を出し,大てい2個の紫色の蝶形花をつけ,側方を向いて開く。花には花柄があり,がくは緑色で先端が5裂し,永存性で,後まで残る。旗弁は淡紫色でひろく,倒心臓形。そりかえって直立する。翼弁は円形で左右の2枚が互いに接着し,濃紫色。竜骨弁は小形でとがる。豆果は線状長楕円形,種子は5個くらい生じ,やや4稜があり,褐色で食べられる。[日本名]エンドウは漢名,豌豆の音よみである。現在一般にエンドウというのは,花が紫色の本種と,白色花をもつシロエンドウの両方を指す。農業品種としてはシロエンドウの他に,アオエンドウ(グリ−ンピ−ス)サヤエンドウがあり,広く栽培されている。古名ノラマメ。

しろえんどう(えんどう)

Pisum sativum L.            [まめ科]

 

つるまめ

Glycine Soja Sieb. et Zucc. (=G. ussuriensis Reg. et Maack)

 

だいず

 Glycine Max Nerrill (=G. hispida Maxim.)        [まめ科]


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