原生生物の採集と観察
もどる | 目 次 | すすむ

3 培養法

1)採集したサンプルをそのまま培養する
 この方法はすでに1章で紹介済みなので,ここでは補足的な説明のみを行なう。
 培養の技術としては特別なものはない。以下に代表的な米粒による培養を紹介する。当然ながら,これら以外にも色々ある。各々は対象となる原生生物の種類によって適する場合とそうでない場合があるが,いずれも身近にある素材を栄養源として用いている。ただし,時代とともに「身近な」ものは変化する。以前はゾウリムシなどの簡易培養法としては稲(もしくは麦)藁を用いる方法がよく紹介されていたが,近年,稲藁は入手しずらくなったので,あまり簡便な方法とはいえなくなった。

米粒(または麦粒)培養
 既述したように,これはもっとも手軽な方法といえる。シャーレなどに採集してきたサンプルを入れ(水が少なめの場合,適当な塩溶液を加える),これに精米(あるいは麦粒)を数個入れるだけである。後はそのまま放置して,時々実体顕微鏡や光学顕微鏡で観察を行なえばよい。
 この場合,米粒から溶け出す養分によってバクテリアが増え,それを餌とする原生生物が増える。さらにはその原生生物を餌とする他の原生生物が増えるといった連鎖反応が起きる。ときには,米粒を積極的に溶解する力を持ったバクテリアやカビなどが増え出すこともあり,そのような場合,数日で米粒は解けてしまうこともある。水深の浅いシャーレに米粒を入れると,米粒から ミズカビワタカビ などの菌糸が放射状に生えることもある(注:水深が深い場合,酸素の供給が十分でなくなるためと思われるがカビの菌糸は成長しなくなる)。すると米粒は次第にやわらかくなり崩れていくが,カビが増えることでバクテリアの増殖が抑えられ,培養液は比較的透明なまま長期間培養が安定することが多い。なかにはいつまでも米粒が残ったままで原生生物の姿もあまり見えない場合もある。米粒がどうなるかは,採集してきたサンプルにどのような微生物がいたかによって大きく左右される。


アミワタカビ(Dictyuchus)
 左側は菌糸の先端にできた遊走子嚢(?)とそこから出た遊走子。遊走子は短い鞭毛で弱々しく遊泳するが,すぐに泳ぐことをやめて菌糸を伸ばす(左下)。右側は遊走子が出た後の遊走子嚢。
 これは採集サンプルに入れた米粒から綿状に菌糸を伸ばして成長したもので,このようなカビがいったん増えると雑菌の増殖が抑えられるため,ゾウリムシやキロモナスの培養が安定する。そこで,これらのカビを保存しておき,他の培養でも利用するということも行なわる。

もどる | 目 次 | すすむ
原生生物の採集と観察

Copyright 原生生物情報サーバ