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2009.07.29, Part IV

鬼怒沼湿原(1)

鬼怒沼湿原に到着(標高 約2020m,日光市),12:53
加仁湯(標高 約1350m)からの所要時間約2時間半(10:20-12:53)。 ガイドマップでは2時間25分になっているので,ほぼ標準的?(注)。 2地点の標高差は 約670mだが,途中にある若干のupdownを考慮すると累積標高差は700m位にはなるはず。

注:ここで参考にしているのは,東武鉄道のHPにある 「自然ハイキング 東武線沿線 奥鬼怒コース」にあるコース案内,および, そこからダウンロードできる 「奥鬼怒コース マップ(PDF)」。 ちなみに一般向けに書かれているガイドブック(水尾著,湿原を歩く 関東周辺,実業之日本社,2000)では2時間50分になっている。 なお,日光沢温泉にある登山口からだと2時間18分(登山口→鬼怒沼,10:35-12:53)。 これもガイドにある値(マップ2時間15分,湿原を歩く2時間35分)とほぼ同じ。
一方, 復路は鬼怒沼→登山口に2時間10分(15:06-17:16)かかった(途中休憩13分を含む,往路は約7分)。 いつもながら傾斜のある場所は登りと下りが同じになる。 復路全体(鬼怒沼→加仁湯)も2時間24分(15:06-17:30?)で,往路と復路にかかった時間はほぼ同じ。 ガイドマップでは鬼怒沼→加仁湯は1時間40分,時間配分に余裕を持たせた「湿原を歩く」でも2時間5分になっている。 私の足は標準以下のようだ。 ちなみに,同伴してくれた友人(月井栄三郎氏)が前回一人で訪れた際は,重い荷物(重装備のカメラ)を持ちながら歩いても復路には1時間半しかかからなかったそうだ。 彼は健脚の部類に属する。

鬼怒沼湿原,南端からの眺め(日光市),12:53-12:54
1〜3枚目:湿原入口に立ってパノラマ撮影。 1枚目:「鬼怒沼国有林」,「おるまい,とるまい,高山植物」,「自然を大切にしましょう,今市営林署?」 と書かれた看板。 2枚目:木道は入口近くにあるやや大きめの池塘(鶴沼)の手前で二股に分かれている。が,その先でまた1本に戻る(後出)。 3枚目:「鬼怒川の水源地 鬼怒沼」の案内板。

鬼怒沼湿原(日光市),12:57-12:58
木道脇のコバイケイソウVeratrum stamineum)。 すでに実になっていた。

鬼怒沼湿原,木道脇の水たまりで採集(日光市),12:58
入口近くに池塘らしき場所は見当たらなかったものの,木道脇にはあちこちに水たまりがあった。 念のため,そこで採集(鬼怒沼湿原-1)。 してみたが,原生生物はあまりいなかった。 この辺は一時的な水たまりのようだ。
観察された生物: トラケロモナス(Trachelomonas volvocina), ディフルギア( Difflugia elegansD. oblonga), 小型繊毛虫数種, ミクロスポラ(Microspora), センチュウ,

鬼怒沼湿原,同上(日光市),13:00
数歩先でも採集(鬼怒沼湿原-2)してみたが, 結果は同じだった。
観察された生物: トラケロモナス(Trachelomonas volvocina), トリネマ(Trinema sp.), 共生藻を持つチラキディウム(Thylakidium), 珪藻少々, コウガイチリモ( Pleurotaenium minutum), ツヅミモ( Cosmarium globosum), ハタヒモ(Netrium digitus),

鬼怒沼湿原,すこし進んで反対側でも採集(日光市),13:01-13:02
左側にある池塘のようにも見える場所で採集(鬼怒沼湿原-3)。 ここも少ない。 後でわかるが,この先のやや大きな池塘からは東に向って水が流れ出していた。 この鬼怒沼湿原は完全に平坦な湿原ではなく,全体に起伏がある。 この辺は,湿原の南端部ということで,雪解け時などは水流が起きて,多くの原生生物は流し出されいるのかも知れない。 後で出てくるが,湿原の中央部付近にある池塘にはたくさんの原生生物がいた。 これまでの経験上( 月山 弥陀ケ原立山 弥陀ケ原,等), 湿原の周辺が落ち込んでいる場所では,原生生物は湿原の中央部には多くいるが,周辺部には少ない。 ここも同じようだ。
観察された生物: ミドリムシ(Euglena mutabilis), ディフルギア( Difflugia bacillifera), アミカムリ(Nebela collaris), ミクロスポラ(Microspora), ヒザオリ(Mougeotia), ハタヒモ(Netrium digitus)多数, フタボシモ(Cylindrocystis), ユレモ(Oscillatoria), ミジンコ,

鬼怒沼湿原(日光市),13:03
サワランEleorchis japonica)。 数は多くなかったが,あちこちで咲いていた(ないし,咲きかけていた)。

鬼怒沼湿原,木道は「鶴沼」の手前で二股に別れる(日光市),13:03
1,2枚目:パノラマ撮影。 分岐の近くの休憩用のベンチがある。

鬼怒沼湿原(日光市),13:04-13:05
1枚目:チングルマGeum pentapetalum)の果穂と, 2〜4枚目:タテヤマリンドウ?Gentiana thunbergii var. minor)。 下段の1枚目は先日(2009.7.11), 栂池自然園で撮影した果穂になりたてのチングルマ。最初は白いが徐々に赤味を帯びる。 ちなみに,これまでに撮影したチングルマは こちら
下段の2枚目は同じく栂池自然園で撮影したタテヤマリンドウ。 栂池のものは花の中央部がやや白っぽいが,ここは全体に青味が強い。ただし,花はやや小振り。 これまでに撮影したタテヤマリンドウは こちら


栂池自然園にて撮影(2009.7.11,14:11&14:25)。
       

鬼怒沼湿原(日光市),13:06
キンコウカNarthecium asiaticum)の群生が目立った。

鬼怒沼湿原(日光市),13:06
ギボウシHosta)の仲間。 う〜むピンぼけ。

この後,使い続けてきたデジカメがついに寿命? 画面が赤くなる。しばらくすると戻ったが,動作が不安定。 やむなく,予備のデジカメ(これがOlympus SP700最後の一台)と交換した。

鬼怒沼湿原(日光市),13:22-13:23
モウセンゴケDrosera rotundifolia)とその蕾み。 モウセンゴケの花を見たのは今回が始めて。

鬼怒沼湿原(日光市),13:24
ヒカゲノカズラかと思って撮影したが,違った。 これは??)。

鬼怒沼湿原(日光市),13:25
「鶴沼」の東側には「湿原植生復元中」の看板が立っていた。

鬼怒沼湿原,鶴沼(日光市),13:26
1〜3枚目:上と同じ場所から鶴沼をパノラマ撮影。 上のように,鶴沼の東岸は踏み荒らしで荒れているが,南岸近くもかなり裸地化している(写真撮影忘れた)。 湿原に辿り着いた人が最初に目にするのがこの池塘なので,皆がこの池塘の回りを歩き回ったり,池塘の近くに立って記念撮影等をした結果だろう。

鬼怒沼湿原(日光市),13:26
1,2枚目:鶴沼の北東端からはこのように滔々と水が溢れ出し,木道の下を通って東隣にある別の池塘へと流れ込んでいた。 この後,湿原の北端から戻る途中,この池塘の西側の木道を通ったが, その木道の西にある池塘からも水が溢れ,この池塘に向って流れる水路があった(後出)。 ようするに,この鬼怒沼湿原の南側では,湿原の西から東に向う水の流れがあった。
今回は雨の直後なので,そのために起こる一時的なものか,それとも恒常的に流れがあるのかは不明。 湿原の北西には物見山(毘沙門山,標高 2113m),北東側には鬼怒沼山(標高 2141m)がある。 ここ(標高2020m)とさほど標高差がある訳ではないが, 両山から湿原にかけて降った雨水が湿原の泥炭層に浸透し,それが若干標高の下がったこの辺(注)で池塘から湧き出しているのだろう。

注:後述するように,この池塘の南東側には柳橋沢という沢がある。 この付近は,現在の池塘がある位置の北西側から,柳橋沢のある南東側にかけてやや傾斜しているのでこのような水の流れが起きていると思われる。

鬼怒沼湿原(日光市),13:26
1,2枚目:鶴沼の北西端から北〜北西側をパノラマ撮影。 鶴沼から溢れ出した水は,木道の下を通って東側の池塘へと流れ込んでいた。 ただし,その先は草で隠れていてどのような流れになっているかは不明。 地形図を元に考えると,流れ出た水は,おそらくここから南東にある柳橋沢(注)に向っていくはず。

注:国土地理院の地図には傾斜のなだらかな登山道の東側に沿って「柳橋沢」という名前が記されている。 ただし,名前だけで水路は描かれていない。おそらく雪解け時や大雨の際にできる一時的な水路なのだろう。

鬼怒沼湿原(日光市),13:29-13:31
このサワランEleorchis japonica)は花弁が開いていた。 背が低く下向きに咲くので撮影するのが大変。

Part V: 鬼怒沼湿原(2)
2009.07.29, 13:45 - 14:15