各一覧表の右端にはという図形がありますが,これは各WebサイトのURLでInternet Archiveの Wayback machineを検索した結果を表示させるためのものです。
Wayback machine の詳細については,下記のリンク先を参照していただきたいのですが,簡単にいうと,Internet Archiveがこれまでにインターネットを介して収集した膨大な情報(文字だけでなく画像等も含む,総量は100テラバイト!)の中から,入力したURLに該当するWebの情報を探し出し表示してくれるサービスです。
これにより,我々は,現在はネット上から消滅したWebサイトの情報や,Webサイト(あるいはWeb page)そのものは残っているもののその後の更新により,現在では存在しない過去のWeb情報を探し出して見ることができます。
Internet Archiveでは,ネット上に公開された情報は人類の貴重な歴史遺産として残していくべきだ,という考えに立ち,1996年からインターネット上にある収集可能な情報を蓄積し保存する活動を続けています。収集した情報については,これまではプライバシーや著作権保護の観点から,その利用を制限してきましたが,昨年末,すべての情報を一般に公開し,Wayback machineという手法で誰もが簡単に利用できるようにしました。
これには,下記のURL(インターネットアーカイブが抱える問題)で指摘されている問題はあるものの,学術目的でインターネットを利用しようと考えている者にとっては,大変ありがたいサービスといえます。
その理由を簡単に紹介しますと,,(詳細はここ)。まず,学術研究においては,公開された情報が,半永久的に保存され,誰もが自由に利用できることが必須の要件となります。本や論文などの印刷物については図書館の存在によってその要件は満たされているわけですが,ネットワーク上で公開された情報については,従来はそれらを保存する公的機関がなかったため永続性が保証されていませんでした。
Wayback machineの公開は,そのような学術研究用のメディアとしてインターネットが抱えていた欠点を補うものとして大変意義のあることといえます(勿論,Wayback machineじたいが永続性を持ちうるかどうかは今後の問題ですが)。
とくに,個人または小グループで,ボランティア的にWebサイトを構築し情報発信している者にとって,これは非常に重要な変化といえます。
博物館や研究所が機関(業務)としてデータベース等を構築しネットで公開している場合は,担当者が変わっても,そのデータベースの公開は続けられるでしょうが,ボランティア的に発信されているものについては,それを運営している個人または小グループが活動を停止せざるをえなくなった場合,必然的にネット上から消滅してしまうことになります。また,消滅しない場合であっても,ネット上の多くの情報は,頻繁に更新,削除,追加といった変化が起きることで,過去と現在では情報の中身が変化してしまうことがよくあります。
このため,ユーザー側が,ある時,あるWebサイトの情報を引用(リンク)して論文を書いたとしても,何年か後にはその引用先の情報が消滅/変化してしまえば,引用した意味が失われてしまいます。これは学術研究にとっては致命的な欠陥であり,それ故にネットワーク上で公開された情報は,学術研究目的には利用できない状況がこれまで続いてきました。
しかし,今回のWayback machineの登場によって,そのような問題が一応解決したことになりますので,今後はネットワークがより積極的に学術研究に(そして教育にも)利用されるようになるものと期待されます。
ここで取り上げている「生物多様性関連のWebサイト」の多くは,まだ公開して2,3年しかたっていないものがほとんどです。そのため,制作者の方々はまだ新しいデータを追加したり,Web pageの新しいデザインを考えたりするのに夢中で,10年,20年先のことまでは気にしていないと思います。
しかし,時間が経つにつれ,いずれ各Webサイトの制作者は,自分が苦労して作ったコンテンツの将来について思い悩むようになるはずです。中には潔く自らの意志でWebサイトを閉鎖してしまう制作者もいるかも知れませんが,図鑑あるいはデータベースなどの,いわゆるコレクター的な要素をもったサイトは,時の経過とともに内容が充実していきますので,それにともない制作者本人のWebサイトへの思い入れも深まっていくのが通例です(内容が充実すれば,それにつれて利用者も増えます。その利用者からの励ましによって,ますますWebサイト構築の情熱が増す,という連鎖反応が起きます)。
したがって,年月が経てば経つほど,ネット上でボランティア的に発信されている,これら数多くの生物多様性情報サイトの制作者の方々は,自分が苦労して作ったコンテンツが,可能なかぎり長期間,多くの人に利用してもらいたいと願うようになるはずです。できれば自分が死んだ後でもネット上に残って利用され続けることを願うようになるでしょう。
ということで,生物多様性関連Webサイトにとっても,は今後欠かすことのできない存在になると思われます。