原生生物と日本産アリ類の広域画像データベース

2 インターネットと生命科学
  素材データベース構築の学術的意義

2-2 素材情報データベースの学術的意義と現状

 ただし,広域データベースといっても,その内容によって大きく二つのグループに分かれることに注意したい(表2-2)。

 前章で紹介したアリのような分類データベースやその他の図鑑的な内容のデータベース,論文検索などを目的とした様々な書誌情報データベースなどは,研究の成果をまとめたデータベースである。これに対して,DNAデータベースに代表される類のものは研究をする上で利用価値のある素材をまとめた研究素材広域データベースといえる。

 前者の論文データーベースや,分類データベース等は,ネットワーク上で公開される以前から,書誌情報誌や生物図鑑などの印刷物の形で存在していた。その意味で,研究成果データベースは,電子メールやニュースなどと同様に,従来のメディアにあったものを補強・補完する役割をもつものと位置付けることができる。

 それに対して,研究素材広域データベースは,DNAデータベースをみれば明らかなように,従来の印刷メディアでは扱いきれない膨大な量の素材情報を対象とする。それは,まさにコンピュータとそのネットワークがあってはじめて誕生したといえる。その意味で,研究素材の広域データベースは,従来のメディアにはないネットワーク独自の機能なのである。