研究資材データベース構築&公開ガイド
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 既述したように,研究資材データベースは,その公開した資材情報(画像や測定値など)を他の研究や教育,その他に役立ててもらうのを目的とする。そのような積極的利用がさかんになれば,資材データを公開した目的が果たせたことになるし,その資材データベースが研究や教育活動に欠かせないものとしてその存在意義が高まったことになる。

 しかし,気になるのはやはり著作権である。利用してもらえるのは嬉しいが,それが著作権者に無断で行なわれるのは好ましくない。既述したように,利用者側は「著作権者に断らずに利用してよい」と明記されていないかぎり,利用する前には著作権者の了解を得る必要がある。
 また,かりに上記のような断り書きがあったとしても,著作権まで放棄しているわけではないので,他のWeb pageや印刷,講演会など,公の場で使用する際には,著作権者が誰であるかを明記すべきである (ただし,近年は一般に著作権に対する理解が深まってきており,無断使用が頻繁に起こるわけではないので,さほど神経質になる必要はない)。

著作権の告知/利用案内

 以上のように,著作権に関する告知をしなくとも著作権者の権利は守られている。しかし,利用者への配慮として,著作権に関する説明は付けた方がよい。利用者が画像等を利用したいと考えても,どのような手続きで著作権者の了解を得ればよいのかがわからなければ,利用することを諦めてしまう可能性もあるからである。すなわち,資材データをより積極的に利用してもらう意味でも,著作権に関する説明(利用条件,使用許諾願いの書き方など)はあった方がよい。

 また,既述したように,利用者の多くは,検索エンジンを使ってアクセスしてくるため,データベースの入り口からではなく,データベース内部にある(入力したキーワードが含まれる)ページに直接アクセスしてくる。したがって,データベースのメニューページ(いわゆるホームページ)だけで著作権の告知を行なっても無意味である。著作権の告知は利用可能な研究資材情報(画像等)が含まれるすべてのページで行なう必要がある。(ただし,告知の詳細な内容をすべてのページにつけるのは無理なので,著作権の告知に関するページを別に作り,各ページでは簡単なcopyrightの表記を行なって,詳細はそのページを参照できるようにリンクを付ければよい。
 こうしておけば無断使用される危険性をかなり低く抑えることができるはずである。

無断使用のチェック法

 また,無断使用にたいしてまったく何の対抗手段もないわけでもない。そのためには,検索エンジンを使って自分たちが公開している情報をネット上で探索すればよい。たとえば,ある生物の画像についての無断使用をチェックしたければ,検索エンジンでその生物の名前を入力して検索ボタンを押すのである。すると,検索結果の中に自分のWebサイト以外のURLがあれば,それらをひとつひとつ調べていくことで無断使用した画像を発見することができる。なぜなら,無断使用した側でも画像をネットワーク上で公開する際には,その画像が何であるかの説明をつけるはずだからである(量が多い場合,あまり現実的ではないかも知れないが)。最近は画像ファイルのあるWeb pageだけに限定した検索(イメージ検索)をすることもできるので,多少とも探索は容易になっている(ただし,これも画像そのものを検索しているわけではなく,各画像ごとに付記される画像名などで検索しているので,そのようなテキスト情報がなければ検索できない)。

 ネット上では「黙っていれば気づかれないだろう」ということはない。著作権者(もしくはその協力者)も同じネット上で情報探索を行なっているので,無断使用していれば,いずれは著作権者らに見つかってしまう可能性が高いのである(ネット以外のメディアで,かつ学術研究以外の異なる分野で無断使用された場合は発見は難しいかも知れない)。

 したがって,ある程度のネットワークの機能を理解している人であれば,無断使用しようと考えることはあまりないはずである。むしろ,一番問題なのは,既述したように,ネットワークのしくみを十分に理解しないまま,Web pageを作ろうとしている人々である。そのような人々は著作権の扱いについても無頓着な場合が多いので,罪の意識のないまま画像等を無断使用してしまう可能性が高い。

 この他,テキストデータにも当然ながら著作権は存在する。テキストの扱いについては,基本的には印刷物の場合と同じと考えればよいだろう。

有料か無料か

 一般の場合,使用を認めてもらう際には著作権者に使用料を支払う,すなわち有料であることが多い。だが,大学や公的な研究機関にある資材データベースの場合は,公的資金を使って制作されているので,極力無料で使用を認めるべきであろう。すくなくともデータベース制作者側から使用料金を請求するのは本来あるべき姿とは言えない。有料にする場合(とくに営利を伴う場合)は,監督官庁の許諾を得る必要がある。

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Copyright: 2002 Y. Tsukii