平成9年度知的基盤整備推進制度
「生物系研究資材のデータベース化及びネットワークシステム構築のための基盤的研究開発」
2-1. 生物資材情報発信のためのWWWサーバ構築サポートシステムに関する研究

PREV | NEXT

3.研究成果の詳細内容

3-1. 画像資料の作成法とそのディジタル化の手法について



静止画像の場合
 画像データの元となるのは,生きた生物,もしくは,それらを固定・染色した保存標本である。「日本産アリ類画像データベース」では蟻の生体および乾燥・アルコール標本を,「原生生物データベース」では生体試料のみを用いている。
 生体および標本を静止画像として記録するには,通常のカメラによる撮影の他に,ディジタルビデオカメラ(3-1-2)による撮影がある。前者は,画質等の点では優れているが,撮影された画像をあらためてディジタル化する作業が必要になる。後者は,直接ディジタル画像が得られる点で便利だが,画質に問題がある上,器材の準備・撮影条件の設定などの点である程度の専門的知識が必要である(3-1-2)。

3-1-1. 通常カメラによる撮影とPhotoCDの組み合わせ
 通常のカメラで撮影した画像のディジタル化ついては,後述するように,スキャナーなどにより手作業でディジタル化する方法もあるが(3-1-3),通常の35 mm スライドの場合,PhotoCD作成を業者に依頼した方が画質・コストの両面で優れている。なぜならば,学術目的の画像データベースを構築する場合,画質だけでなく解像度も高いレベルのものが要求されるが(参照「学術標本画像データベース作成の指針」,学術審議会学術情報資料分科会学術資料部会大学博物館ワーキンググループ,平成8年1月12日,http://133.25.20.31/Science_Internet/gakushin/ImageDB.html),それにはPhotoCDの方が適しているからである。
 市販のスキャナーでそのような目的(高解像度・高画質)にかなうものは高価であり,かりに購入できたとしてもそれらを使いこなすには,ある程度の専門的知識と時間・労力・経費(作業を委託する場合)が必要となる。しかし,PhotoCDの場合は,そのような手間をかけずに比較的に安い経費で高画質・高解像度のディジタル画像を作成できる。なにより,業者に全面的に委託できることで,自らの時間・労力を他の研究活動に振り向けることができるのが利点といえる。
 この他,PhotoCDには,直接最寄りの写真店に発注できる,常に一定の画質・画像フォーマットが得られる,長期の保管に適している等の利点もある。ただし,後述するように(3-1-3),電子顕微鏡写真などの特殊なサイズのフィルムをPhotoCDにするのは,コスト的に高くつく(1枚1200円,35mmフイルムの場合の約10倍)。また,電顕写真やX線写真などの白黒ネガフィルムについてはPhotoCDでは適切な階調が得られない場合がある。したがって,35mmフィルム以外の写真については,かならずしもPhotoCDが適しているとはいいがたい。
 原生生物および日本産アリ類については,いずれも通常カメラで撮影し,PhotoCD方式で画像のディジタル化を行なっている。原生生物データベースでは,この1年間に1万枚弱の顕微鏡写真撮影を行ない,そのうちの約3000枚をPhotoCDを利用してディジタル化した。それらはすでにデータベースへ追加されており,現在公開されている画像は総計5200枚余である。それらのすべてについて,分類学的調査を行ない種・属の判定を行ったところ,登録された原生生物は203属,約480種となった(一部は種名が不明のまま)。

PREV | NEXT