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第50回 日本原生生物学会 ・第1回 日本共生生物学会: 共生藻を持つラッパムシ,Stentor pyriformisは独立栄養である

解説-01:
タイトル,「共生藻を持つラッパムシ,Stentor pyriformisは独立栄養である」

実際は,ポスター発表だったので,このスライドは使用しなかった。
解説-02:
採集場所の一つ,八幡平北西尾根(標高 1500〜1600m)2016.09.02

画面上,採集場所の1つ,,八幡平北西尾根 第2湿原,をパノラマ撮影。

画面下左,横幅1mほどの小さな池塘。
画面下右,左の池塘の一部(池端,矢印)を拡大。デジカメで撮影。

解説-03:
講演要旨,プログラムに掲載したもの。
無菌状態で,無機塩類と光のみで増殖すれば,独立栄養であることを証明できたといえるはずだが, これを実施するのは容易ではない。
代替え案を色々試しているうちに,S. pyriformisの増殖には,無機塩類の濃度を極限まで下げる方が適している ことを発見した(この方が自然に近いはず)。 この濃度だと混入している細菌はおろか,S. pyriformisにとって有害な微細藻類もほとんど増殖できない。
解説-04:
実験台の様子,画面上,従来から行っているシャーレを使った培養。
画面下左,水耕栽培用の液肥+光による培養を初めてから行うようになったビーカーを使った培養の様子,
画面下右,そこで増えている S. pyriformisをシャーレに移し,デジカメを近付けて撮影したもの。
解説-05:
ラッパムシ属のおもな種。色素顆粒の有無,その色,共生藻の有無で分類される。

画面右の図は S. pyriformisを初めて報告した Johnson, 1893の論文に掲載されたスケッチ。

解説-06:
東日本(北海道を除く)でS. pyriformisが観察できた湿原(●)と出来なかった湿原(○)
S. pyriformisの生息域調査の結果,いる(●)いない(○)
2001年から毎年行っている野外調査の結果(画像を記録し始めたのは2006年から) をまとめたもの。調査の際はS. pyriformisに限らず,確認可能なすべての 原生生物(一部,原核生物や多細胞の微小動物なども含む)について記録している。 これはその中からS. pyriformisに関する調査結果をまとめたもの。 多くは同じ場所(高地にある湿原)複数回 訪れて調査している。
解説-07:
S. pyriformisがいる湿原(●)といない湿原(○)の水質(電気伝導度,pH)の比較

基本的な違いはなかった。

#一部は2016年度の大会ですでに報告しているが,他は今年度の野外採集の際に測定した。

解説-08:
昨年までに確立した培養法(養命酒+KCM+キロモナス)
すでに2年以上が経過した。よってこの方法は培養法として確立できたといえる。

S. pyriformisの培養における基本的問題:
1)分裂速度が極めて遅い。通常1ヵ月かかる。
2)Carry-overが長く続く。そのため,判断を見誤る恐れがある。

解説-09:
今回の(メイン)テーマ,
S. pyriformisは,極度の貧栄養状態にある湿原で,安定的に膨大な細胞数を維持している。 これは,S. pyriformisが共生藻が行う光合成に大きく依存して増殖している可能性,すなわち,独立栄養 である可能性を強く示唆している。
これを証明するには・・・。
解説-10:
Stentor pyriformisの無菌化はかなりむずかしい。 そこで代替案を考えたが,,,。
解説-11:
水耕栽培用の液肥(無機塩類溶液)の組成
1900年代初頭に公表された「ホーグランド液」が今でも標準液として使われている。 ただし,作るのに手間がかかるので,市販の水耕栽培用の液肥(ハイポニカ,エコゲリラなど)を用いた。
解説-12:
水耕栽培用液肥を用いる上での問題
水耕栽培用の液肥に替えた直後(1,2ヵ月)はS. pyriformisの増殖が確認できた。が,しかし,
水耕栽培用の液肥は,有機質を含まないので混入している細菌はほとんど増殖しなくなる。 それはよいのだが,替りに,それまでわずかだった微細藻類(主にクロロコックム類)が急激に増え出した。 混入細菌は,一部有害なものもいるが,多くは増えてもStentor pyriformisの増殖に影響しない。 しかし,微細藻が増えると,S. pyriformisの増殖が阻害された。 そのまま放置すると,やがてS. pyriformisは死滅してしまった(1,2ヵ月後)。
解説-13:微細藻類の悪影響を防ぐ2つの方法
上記のように,水耕栽培用の液肥に替えると,それまでは目立たなかった微細藻類のコンタミが急速に増えだした。 これにともないS. pyriformisは次第に弱り,ついには死滅してしまった。 幸い,そうなる前に余分に増えたS. pyriformis細胞をビーカーに移してあり,それらが生き残った。
また,液肥の濃度を極端に下げたところ(1〜3μS/cm),混入している微細藻類は増殖できなくなった (コンタミバクテリアも当然ながら増殖できない)。しかし,S. pyriformisはこの条件でも増殖が可能だった。 これにより無菌化の操作をしなくても,実質的に無菌状態に近い条件で培養ができることがわかった(注)。

注:ただし,まったく増えない訳ではない。 生きたS. pyriformisがいると,当然ながら老廃物が排出されるので,これを養分にして バクテリアが次第に増えてくる場合がある。 したがって,液肥,および,汚れた培養器は定期的に新しいものに交換する必要がある。
解説-14:
今回わかったこと
解説-15:
今後の課題(近未来)
第一は,今回のメインテーマ「S. pyriformisは独立栄養である」 ことの確証を得ること。 現在は,まだ混入している細菌や微細藻を食べて増殖している可能性を完全には否定できていない。 液肥の濃度を極限まで下げることで細菌や微細藻の増殖はほぼ抑えられているので,無菌化は以前ほど難しくなくなりつつある。
また,これまでに採集地によって株間に色々な違い(サイズ,生理機能,他)がある可能性が高い。 当面は増殖可能な液肥の最低濃度を確定したい。
大量培養法も確立したい。
解説-16:
長期的な課題
1)生息域を決めているものは何か,
2)共生藻との関係はどこまで進化しているか,

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