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2015.10.18, Part II

北条湿地(仮)

ため池に隣接する北条湿地(仮)(那須町),10:11
ここは奥にある小山を削って土砂を採取した後を平坦にした場所らしい。 手前は乾いているが,奥は山側からしみ出す湧水によって常時水に浸っている。 その結果,ここにはたくさんの ハッチョウトンボ が生息していて,栄三郎氏はそれを撮影するためにここを何度も訪れているという。
なお,ここにはとくに名前はないが,名前がないとなにかと不便なので, 当面ここを北条湿地と呼ぶことにする。 以下の画像を見ればわかるように,ここは典型的な鉱質土壌湿原だ。 前回の採集では暗闇の中,2サンプルしか採集しなかったが,計47種の原生生物が観察できている(注)。 さて,今回は・・・。

注:この後,ここの北にある「玉取台近くの湿地」を訪れたが,その周辺は道路周辺が凹地になっていて, あちこちに水たまりがや湿地があった(後述)。
地図を見ると,この辺に「北条平」という名前が記してある。 すなわち,この一帯は,もともと湿地帯でそこを開拓して農地や,近年は別荘地などが造られたと思われる。 そのため,その湿地帯にもともと生息していた様々な原生生物が,水環境が安定して,日当たりがよいこの場所で 大量に増殖していると推察される。

北条湿地(仮)(那須町),10:12
1,2枚目:湿地に近付いてパノラマ撮影。
足下は大小の砂利(ないし石)で固く締まっている。なので靴が沈むことはまったくない。 石の地盤の上にわずかに堆積した泥土があり,所々に水たまりができている。 ある水たまりでは小型のゲンゴロウのような昆虫が何匹か泳いでいた。

北条湿地(仮)(那須町),10:12
1〜3枚目:さらに近付いてパノラマ撮影。
この後,左,前,右と何ケ所かで採集することにした。


2014年10月の様子(2014.10.25,17:16撮影)。

北条湿地(仮)(那須町),10:12-10:13
1枚目:まずは左側へ。 2枚目:水深はごくごく浅いが,水底は大量の水垢で覆われている。 3枚目:ここで 採集(北条湿地-01)
観察された生物: クリプトモナス(Cryptomonas sp.), トラケロモナス( Trachelomonas hispidaT. intermediaTrachelomonas sp.), 小型鞭毛虫数種, Lesquereusia, ユーグリファ(Euglypha strigosa)?, 共生藻を持つラッパムシ(Stentor fuliginosus), イカダモ(Scenedesmus), グロエオキスティス(Gloeocystis sp.), ミクロスポラ(Microspora), ヒザオリ(Mougeotia), コウガイチリモ( Pleurotaenium minutum = Haplotaenium minutumPleurotaenium trabecula), ミカヅキモ( Closterium dianaeC. pronumClosterium sp.), ツヅミモ( Cosmarium amoenumC. depressum v. minor), ホシガタモ( Staurastrum punctulatum?), イボマタモ( Euastrum ampullaceumE. cuneatumE. sinuosum), ネジモ/トルチテニア(Spirotaenia obscura) -> Tortitaenia obscura, ミジンコ,

北条湿地(仮)(那須町),10:14-10:15
1枚目:今度は中央付近で, 2枚目: 採集(北条湿地-02)
観察された生物: 小型鞭毛虫数種, トラケロモナス( Trachelomonas sp.), アカントキスチス(Acanthocystis sp.), ポンフォリクソフリス(Pompholyxophrys sp.), フセツボカムリ( Centropyxis aculeata), ディフルギア( Difflugia sp.), Lesquereusia, ユーグリファ(Euglypha sp.), ナスラ(Nassula), 珪藻各種, エラカトスリックス(Elakatothrix genevensis), エレモスフェラ(Eremosphaera viridis), グロエオキスティス(Gloeocystis sp.), ブルボケーテ(Bulbochaete), サヤミドロ(Oedogonium), ヒザオリ2種(Mougeotia), コウガイチリモ( Pleurotaenium trabecula), ミカヅキモ( Closterium dianaeC. intermedium), ツヅミモ( C. depressum v. minor), ホシガタモ( Staurastrum punctulatum?), イボマタモ( Euastrum ansatum var. pyxidatumE. sinuosum), 小型イボマタモ(Euastrum sp.), ハタヒモ(Netrium digitus), チリモ(Desmidium swartzii), クロオコッカス(Chroococcus sp.), メリスモペディア(Merismopedia), ユレモ(Oscillatoria sp.), Hapalosiphon, ミジンコ,

北条湿地(仮)(那須町),10:15-10:16
1枚目:今度は右側で, 2枚目: 採集(北条湿地-03)
観察された生物: 未同定の鞭毛虫, ディフルギア( Difflugia sp.), Lesquereusia modestaLesquereusia sp., 珪藻各種, エラカトスリックス(Elakatothrix genevensis), エレモスフェラ(Eremosphaera viridis), ミクロスポラ(Microspora), ヒザオリ(Mougeotia), コウガイチリモ( Pleurotaenium minutum = Haplotaenium minutum), ミカヅキモ( Closterium ralfsii or C. macilentum?, Closterium sp.), イボマタモ( Euastrum cuneatumE. sinuosum), アワセオオギ(Micrasterias pinnatifida), ハタヒモ(Netrium digitus), ネジモ(Spirotaenia condensata), ミジンコ,

さらに右手前でも(那須町),10:17, 10:18, 10:19
1枚目:牧草が積んである近く。 2枚目:この辺は水深がさらに浅い。そして,水底は赤っぽく,水垢も少なめだが, 3枚目:ここでも 採集(北条湿地-04)
観察された生物: トラケロモナス(Trachelomonas ovoides), 小型鞭毛虫数種, トリカメーバ(Trichamoeba), ナベカムリ(Arcella vulgaris, フセツボカムリ( Centropyxis ecornis), Lesquereusia modesta, ユーグリファ( Euglypha sp.), トリネマ(Trinema lineare), 珪藻各種, ミクロスポラ(Microspora), コウガイチリモ( Pleurotaenium trabecula), ツヅミモ( Cosmarium contractum), イボマタモ( Euastrum sinuosum), メリスモペディア(Merismopedia),

北条湿地(仮)(那須町),10:20
ここには湿地性の植物がたくさん生えている。 これは タマガヤツリCyperus difforis,カヤツリグサ科 カヤツリグサ属) ?似ているが,似ていないところも,,。

この後,一台の車がやってきた。地主の女性だった。 栄三郎氏の車がやってきたのを見て,会いにきたらしい。 色々話している中で,今は姿が見えないが,春になるとここは一面モウセンゴケで覆われる と栄三郎氏が話したので,地面に目をやると・・・。

北条湿地(仮)(那須町),10:20-10:22
ごくごく小さな モウセンゴケDrosera rotundifolia,モウセンゴケ科 モウセンゴケ属) がたくさんあった。
普通見るモウセンゴケはロゼット全体だと数cmはあるが, これらは私の指先の爪の幅(約 12mm)か,それ以下の小ささだ。 この形で冬を越すのだろうか?

北条湿地(仮)(那須町),10:22-10:23
1枚目: ??
カヤツリグサの仲間だと思うが,,,。
2枚目: ??

北条湿地(仮)(那須町),10:27-10:28
リンドウも咲いていた。 ??リンドウ
ここは土壌がほとんどないためか,非常に背が低い。 この後,他でもあちこちでリンドウが咲いていたが,他の個体は背丈はもっとあった。 ここだけとくに低かった。

北条湿地(仮)(那須町),10:28
左奥でも 採集(北条湿地-05)
観察された生物: エントシフォン(Entosiphon), フセツボカムリ( Centropyxis aculeata), Lesquereusia modestaLesquereusia sp., ユーグリファ( Euglypha sp.), トリネマ(Trinema lineare), 共生藻を持つラッパムシ(Stentor fuliginosus), メソディニウム(Mesodinium), 珪藻各種, エレモスフェラ(Eremosphaera viridis), ミクロスポラ(Microspora), ヒザオリ(Mougeotia), コウガイチリモ( Pleurotaenium trabecula), ツヅミモ( Cosmarium lundelliiC. obsoletum), ホシガタモ( Staurastrum punctulatum?), イボマタモ( Euastrum sinuosum), アワセオオギ(Micrasterias pinnatifida), ハタヒモ(Netrium digitus), ネジモ(Spirotaenia condensata), ユレモ(Oscillatoria sp.), ミジンコ, ケンミジンコ, センチュウ,

上段の画像でも湿地の周囲で灌木が育っているのがわかる。 この画像には写っていないが,乾いた地面の近くでは, マツの若木がたくさん成長しつつあった。 このまま放置すると,やがては湿地が松林に変化してしまう可能性が高い。 地主の女性も,ここにはハッチョウトンボがたくさんいることに興味を持っているらしく, 湿地が消えてしまわないようにマツの若木を撤去することに賛成していた。

あらためて現在地を確認(那須町),10:30

湿地とため池(那須町),10:31, 10:34
2枚目: 前回はため池側でも採集したが, そのことをすっかり忘れていて採集しなかった。残念。 水面に浮かぶのは ヒツジグサNymphaea tetragona,スイレン科 スイレン属)

次は玉取台近くの湿地へ(那須町),10:41
1枚目:池田交差点を通過。この先のT字路を右折した。

Part III: 玉取台近くの湿地
2015.10.18, 10:42 - 11:06