原生生物の採集と観察
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5 アメーバの培養と観察

2)培養法 (続き)
b. キロモナスによる培養
 キロモナス(Chilomonas paramecium:クリプト藻類の一種)は,別に培養したものを,テトラヒメナ同様アメ−バ用の塩溶液で洗ってから与えてもよいが,下記のように米粒と一緒にしてアメーバの培養器(シャーレ)に入れておく方が手間がかからない。いずれの場合でも,キロモナスを餌にした場合はアメ−バは一度に満腹になるまで餌を食べることはない。このため,テトラヒメナを餌にした場合に比べると,分裂頻度は良くないし,細胞のコンディションも揃いにくいので,生理的条件の揃った細胞が要求される実験には適していない。

キロモナス
(Chilomonas paramecium)
 とはいえ,白米を2〜3粒アメ−バの入ったシャ−レに入れ,これにキロモナスを加えておくだけで,うまくいくと白米から少しずつ浸みだす養分で,キロモナスが増え,それを食べてアメ−バが増えるという関係が成立する(混入する雑菌等によってはうまくいかないこともある)。そうなれば,長期間(ただし,1カ月以内;室温)餌を与えずに維持することができる。手間をかけずに複数の系統を保存・維持したい場合には有効である。

ミズカビ/ワタカビの利用:
 この方法は,上記のように,混入する雑菌によってうまくいく場合と駄目になる場合がある。そこで3章で培養を安定させる方法として紹介したミズカビやワタカミを利用するとよい。これらのカビが米の周囲から成長すると,雑菌の増殖は抑えられるが,キロモナスの増殖には影響がない。むしろキロモナスの増殖に悪影響を及ぼす雑菌が増えにくくなるためキロモナスの増殖が安定し,結果としてアメーバの培養にも好影響をもらたす。いったん,水カビがついてしまえば,常に培養液中にカビの胞子があるので,カビの維持を気にかけることなく,ふるくなった米つぶなどは培養液ととも捨てればよい(1カ月に一度くらい)。

 なお,ここではキロモナスを餌とした例を紹介したが,基本的にはアメーバが捕食可能でかつ米粒などで長期間安定して増殖できる微生物であれば何でもよいであろう。

c. 系統保存
 テトラヒメナで培養したものを長期間餌を与えずに保存したい場合は,最初に餌をほどほどに与えた後,16°C前後の恒温庫へ入れる。この場合,シャーレ中のアメーバ細胞はあまり多くないほうがよい。たくさんの細胞がいれると,たくさんの餌を与えなければならず,それだけ培養液が劣化するのも早まるからである。
 この方法では約1カ月弱の間手をかけずに保存することができる。しかし,まれにシャーレによっては途中で全滅してしまうこともあるので,同じ株について,ある程度余分な数のシャ−レを容易する必要がある。株によっては低温を好むものとあまり低いとすぐに弱ってしまうものがある。10°C以下では死滅するので,恒温庫が冷えすぎないように注意する必要がある。

 この他,テトラで飼ったアメ−バを,半乾燥の状態で1カ月以上保存できたとする報告もあるが,今のところ試していない。

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