公開講演会:生物多様性研究・教育を支える広域データベース
私的ハゼの百科事典  向井貴彦(東京大学 新領域創成科学研究科)
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 それでは実際のコンテンツについて解説してみたい(図3).小規模ながらサイトを公開したのが1998年11月であり,その後,徐々に内容を充実させてきた.開設当初から「日本産汽水・淡水ハゼ類図譜」という部分を中心にしてきたのだが,開設時は20種類程度のハゼ類の紹介だけから始めたように記憶している(過去のファイルが残っていないので,はっきりしたことは不明).その後,改訂と種類の追加を重ね, 106属237種(2002年11月末現在)のハゼ亜目魚類を紹介している.日本には約400種のハゼが分布するとされており,まだまだおよばないのが現実だが,おもだった種類はほぼ網羅することができた.こうしたサイトを開設するときに,多くの人は最初から完成度の高いものを作ろうと考えるようだが,実際には少しずつ増やしていったほうが作成は容易である. Fig3

図3 「私的ハゼの百科事典」の目次と各コンテンツ

 見て楽しく,なおかつ学術情報を伝えることに重きを置いた「日本産汽水・淡水(+海産)ハゼ類図譜」と「系統樹データベース」,環境省のレッドリストの解説と絶滅危惧種のハゼ類を紹介する「レッドデータのハゼたち」,研究の楽しさを伝えたくて作った「採集紀行」など,さまざまなコンテンツを作成している.

 また,このサイトが作れたのは,1998年の時点で,それほど莫大な資料を持っていなかったということもある.少なくとも,最初に240種もの魚を掲載した図鑑を作ろうとすれば,かなりの労力を覚悟せねばならず,二の足を踏んだことだろう.

 「ハゼ図譜」以外のコンテンツとしては,ハゼ類の系統樹を論文から引用した「系統樹データベース」,1999年に環境省の汽水魚と淡水魚のレッドリストが改訂され,多くのハゼ類が絶滅危惧種とされたので,それらの種を紹介した「レッドデータのハゼたち」,研究のために各地に出かけたときのことを記した「採集紀行」,お菓子のおまけとして手に入れた魚の模型を系統順に示した「チョコエッグの魚たち」(改題後「おもちゃのサ・カ・ナ」)などを作成し,いろいろな情報を楽しく見られるように心がけて発展させた.また,サイト開設当初から掲示板を設置し,いろいろな意見を寄せていただけるようにしてきたし,1999年1月以降は,表紙ページに載せる魚の写真を毎月更新し,エッセイ的にさまざまなことを紹介する「今月の魚」を掲載している.

 このように継続的に維持してきたおかげで,「ハゼ」という限定的な対象を紹介するサイトであるにもかかわらず,アクセス数もぼちぼち伸びており,最初の1年間のアクセス数が約5000、2年目は約10000だったのが,4年目は1年間で約25000アクセスと少しずつ増え続けている.雑誌の紹介記事でも,社会教育(2001年7月号,財団法人全日本社会教育連合会),ビーパル(2001年9月号,小学館),できるインターネット(2001年10月号,株式会社インプレスコミュニケーションズ)などで紹介していただき,それなりに一般的な興味を引く内容になっているものと思われる.ただし,こうした雑誌の中には,事実と大きく異なる紹介をするものもあり,非常に不快な思いをしたこともあるのを追記しておきたい.どうやら,大会社ほど個人の気持ちを踏みにじるのが得意なようである.

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