研究資材データベース構築&公開ガイド
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専門外の研究者および一般向けの情報提供

 既述したように,データベースを公開すると,その内容にもよるが,アクセスしてくる利用者は同分野の研究者だけではない。他分野の研究者,さらには研究者以外の一般の人々が多数いる可能性がある。

 むしろ,同分野の研究者からのアクセスはあまり期待しない方がよいかも知れない。なぜなら,同分野の研究者は,すでに自分が十分な情報を持っていると思えば,アクセスする必要性を感じないからである。

 一般の利用者が多数アクセスしてくるのであれば,データベースの構成としては,専門家向けの内容だけでなく,可能なかぎり専門外の研究者,あるいは,一般の利用者にも利用しやすいように解説・レイアウト・メニューなどを工夫することが望ましい。場合によっては,専門家向けと一般向けに別メニューを用意してもよいだろう。最低限,そのWebサイトがどのような目的で作られ,どのような利用者を想定して作られているかの説明は付けるべきである。その理由は,自分がアクセスするユーザーの側に立って考えればすぐに理解できる。

 ユーザーがアクセスする先が大学等の公的機関に属している場合,たとえそれが個々の研究室,あるいは個人が作るサーバであっても,ユーザーの側からすれば公的機関から発せられた情報であることに変わりはない。そのような公的機関のサイトにアクセスした際,内容がまったく理解不能な場合と,一般向けに多少とも解説がある場合とでは,後者の方がユーザーには好印象を与えることは間違いない。それはゆくゆくは,Webサイト制作者(研究者)側にもなんらかのプラスの影響をもたらすはずである。

データの二次利用について

 ネット上にある情報は,誰もが簡単にアクセスできるだけでなく,同時に,簡単にダウンロード,すなわち自分のコンピュータの中に取り込むことができる。このため,自分が作ろうとするWeb pagesに適した情報(主に画像など)を見つけると,ついつい利用したくなる。しかし,そのためには,当然ながら「著作権の壁」を乗り越えなければならない。すなわち,著作権者が誰であるかを調べ,その利用に関する許諾を得る必要がある。Web page上に著作権者に関する記述がなくとも,著作権者の権利は法的に守られているので注意が必要である。無許可で自由に使ってよいという明確な断り書きがないかぎり,必ず著作権者の了解を得なければならない。

 日本は,欧米に比べて著作権への配慮に欠けることが多いと言われるが,とくに教育界ではその傾向が強いようである。授業など,教育目的の画像コピーは一般に認められているが,それは,授業が教室という,いわばクローズドな環境で行なわれてきたからである。仮に授業用としてコピーしたものでも,それが不特定多数の人々の目に触れ,利用される可能性があれば,それは立派な著作権の侵害にあたる。

 ネット上では,著作権者の許可を得ずに画像を二次利用して作成したWeb pageを「これは校内向けである」あるいは「授業用」などと称して,そのまま外部からアクセス可能なサイトに置いてあるケースにときおり遭遇することがある。制作した当人は,授業目的で制作したものだし,その旨を明記しているのだから問題ないはずと考えているのであろう。だが,制作者の意図とは関係なく,このままでは著作権の侵害になってしまう。サーバから削除するか,外部からは絶対にアクセスできない場所にWeb pageを移動させるべきである。
→→ 参照:著作権について

ファイル名およびファイル配置について

 詳しくは後述するが,データベースを作り始める際に,注意しなければならないのは,個々のファイルの名前の付け方や,そのファイルをどこに置くか,である。一般にWebサイトの場合は公開後も継続してデータが追加されていくが,スタート時点でのファイル配置やファイル名の付け方が適切でないと,将来ファイル数が増えた際に,ファイルの管理がうまくいかなくなり,やむなくファイル名やその配置(ファイルが置かれているフォルダないしはディレクトリ)を変更せざるをえなくなる。しかし,ファイル名やその配置を途中で変更することは好ましくないので,既存のファイル名やその配置を変更しなくても済むように最初の段階で十分に検討しておく方がよい。

 なぜ,ファイル名やその配置を途中で変えるのが好ましくないかというと,公開されたデータ(htmlファイル)はやがて外部の検索エンジンによって収集され,それによって多くの人々が検索エンジンを介して各々のデータにアクセスしてくるからである。ファイル名やその配置を変えてしまうと,せっかく時間をかけて多くの人が利用するようになった情報(そのデータの所在情報;いわゆるURL)が無効になってしまい,データベースとして利用されなくなってしまう(ふり出しに戻ってしまう)からである。
 詳しくはここを参照願いたい。

 これは一般のWebサイトにも共通していえるではあるが,いずれは大量のデータを扱うようになる研究資材データベースの場合は,とくに注意する必要がある。

変わりうるファイルと変わらないファイル

 ではどうすれば,データが増えてもファイル名やその配置を変更せずに済むだろうか。この場合のポイントは,fact dataとしての研究素材(資材)は変わらないが,研究成果は研究の進展に伴って変わり得る,ということである。

 たとえば,ある生物の画像ファイルに名前を付ける際,その生物の学名や和名をファイル名に含ませるのは前者ではなく後者に相当する。画像ファイルに写っている生物が存在したことは明らかにfact dataであるが,学名というのはその画像を既存の分類体系に基づいて推定したものであり,その推定が間違っていた場合,あるいは,分類体系そのものが以後の研究で改編された場合は,その学名じたいが有効ではなくなってしまう可能性がある。このような事態が起こり得るので,ファイル名に研究成果(この例の場合は分類学)を反映させた用語を採用するのは極力避けた方がよい。一番単純なのはID番号などで識別する方法であろう。

 また,ファイルの配置についても,画像などの研究資材データと研究成果を含むテキストデータは,なるべく別のディレクトリ(ないしフォルダ)に分けておいた方がよい。画像など将来に渡って変更されることのないファイルを別ディレクトリにまとめておけば,変更の必要が生じた時にも作業がやりやすくなる。ただし,画像ファイルであっても,そこに学名や生物体の寸法などを書き入れたものは,将来変更する必要が生じ得るので,変更されうる側として分けておいた方がよいだろう。

 この他,当然ではあるが,ひとつのディレクトリ(ないしフォルダ)に数百,数千のファイルを配置すると,ファイルの管理が容易ではなくなるので,あらかじめ,一定数を超えた時は,新規ファイルは別ディレクトリを作って配置するなどの対応を決めておいた方がよい。

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