平成10年度知的基盤整備推進制度
「生物系研究資材のデータベース化及びネットワークシステム構築のための基盤的研究開発」
2-1. 生物資材情報発信のためのWWWサーバ構築サポートシステムに関する研究

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3-4. 原生生物データベースCD-ROM版の作成・無償配布

3-4-1. 配布の実績

 「原生生物情報サーバ」の内容は,1995年,および1996年に「原生生物データベース」としてCD-ROM化して一般に無償配布しているが,今年度はその第3版を1998年8月末に製作した。製作枚数は10000枚である。前回と同様,web page上で無償配布の案内を行ない,希望者に配布した。そして,これまでの約半年の間に,6000枚余を配布している(一部は第2版配布先への再配布)。

 このうち,約4000枚は小中高校の教員,および教育研修センター等,教育関係者への配布である。配布先は総計157人であるが,そのうち約半数ほどの人がボランティアで各都道府県単位で行なわれている研修会等の場で各地区の学校への二次配布を行なった。

 この結果,約3800枚が各校に1〜2枚ずつ配布されたと推定される。小中高校では,教材としての利用が主であるが,ネットワークを経由して利用する環境が十分整っていない現状では,CD-ROMの無償配布は大変ありがたい,という反響を得ている。

 また,汚水処理など環境関連の業種からの依頼も多い。最近の例としては,東京都水道局と下水道局から合わせて36枚の配布依頼があった。各部局ごとに原生生物の同定・基礎知識の習得のための参考資料として利用したいというのが希望理由である。

 今後は,配布先でのデータベースの利用実態を調査し,今後のデータベースの改良に役立てる予定である。


3-4-2. 新たな配布方式の実現

 最近になって(1999年1月27日),愛知県豊橋市の教員から,市の教育委員会が補正予算(16万円)を使って,原生生物CD-ROMを一括購入することを決めた,との連絡があった。これは,以前からCD-ROMの無償配布の案内を行なう中で提案してきたCD-ROMの新しい配布方式がはじめて実現したものである。

 原生生物CD-ROMを教材として生徒一人一人が各自のパソコンで使用する場合はCD-ROMが大量に必要になるが,そのような需要が全国的規模で発生した場合は,無償配布ではとても応じきれない。しかし,CD-ROMの原盤(スタンパー)が製造会社に保管してあるので,著作権者である我々の了解を得た上で,自由に必要枚数(ただし100枚単位)を発注してよいとすれば,希望者(各自治体ごとの学校組織)は,1枚あたりわずか150円前後(1000枚購入の場合)の価格でCD-ROMを入手できる。愛知県豊橋市教育委員会では,この提案を採用し約1000枚ほどをCD-ROM製造元へ発注したのである。

 近年,学校教育の現場では,コンピュータ教育の重要性が増しつつあるが,今後,パソコン本体の導入が進むにつれ深刻化してくると予想されるのが,そのパソコンで使用する教材の不足である。多種多様で高価な教材をパソコンの台数分揃えるというのは,予算的に無理がある。

 しかし,今回のように,研究者や他の小中高校教員が独自に製作した教材をCD-ROMにして,その原盤を作るまでの経費を開発者である研究者もしくは教員が負担し,一方,その原盤を使ってCD-ROMを製造する経費はCD-ROMの利用を希望する各学校(自治体単位)が負担するというシステム(役割分担)が確立すれば,全国で製作された多様な教材を少ない予算支出で大量に入手することができるようになる。

 今回の豊橋市教育委員会による一括購入は,出版等のマスメディアを介さずに学術情報を大量頒布できる可能性を示したものとして意義がある。