Stentor pyriformis の 研 究 概 説 | ||||||
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当初は文献にある記載を元に
Stentor pyriformis
と
S. fuliginosus
を識別しようとしたが,どちらも共生藻を持ち,球形の大核を持つなど文献上は似た点が多い。
大核の数は,fuliginosusが1個で,pyriformisが数個となっているが,数はときどき変化するようだし, なにより生きたままだと数を正確に数えられない。染色しなければならないが,野外サンプルだと染色して観察できる だけの細胞数を確保するのは難しい場合が多い。 また,文献では,fuliginosusは細胞質に赤い色素顆粒がある。pyriformisにはそのような色素顆粒はない。 となっているが,これも透過光で見るとどちらも共生藻を持つため,黒ずんで見えるので,色素の有無を断定しにくい。 細胞をカバーガラスでやや押しつぶすと若干,赤い色素が見えるが, 色素が広がってしまうため,その有無を判別しずらい場合も多い。 しかし,次第にわかってきたのは,生きた状態だとfuliginosusは大きく開いたラッパ型のまま活発に遊泳するし( これはpolymorphusと同じだが,polymorphusは細長く伸びる), 水底にある物体に付着している時でもラッパ型でいる場合が多い。 これに対して,pyriformisは,fuliginosusよりやや大きめで,ずんぐりした印象がある。 コンディションがよい状態だと,めったに遊泳しないが,まれに遊泳する場合は,ラッパ型にはならず 円柱形になって泳ぐ。pyriformisも水底に付着している時は,刺激などがない状態だとfuliginosusと同様にラッパ型になる。 しかし,普段は付着せずに,絶えず水底をゆっくり這い回っている。 この時の形は,遊泳している時と同じ円筒形である。 なにより明瞭なのは,fuliginosusは落射光で見ると,共生藻を持ってはいるが緑色には見えず, 細胞内に赤い色素顆粒を持つため,全体に赤茶色に見える点だ。 これに対して,色素顆粒を持たない pyriformisは明るい黄緑色に見える。 なお,ごく最近になって,これまで fuliginosus としてきた中に別種の amethystinus も一部混じっていたことに気づいた。 fuliginosusとamethystinusは,pyriformisよりもさらに良く似ていて, 文献上は色素顆粒の色が異なる(fuliginosus は yellowish brown, brownish or red-orange;amethystinus は lilac or amethystine or purplish red)となっているのだが,実際は両者を同時に比較しないかぎり,色で区別するのは難しい。また,amethystinusは色素顆粒が小核の周囲に集まるが,fuliginosusは集まらない,という違いもあるらしいのだが,これも生きた細胞で区別するのは難しい。 しかし,最近になって細胞の形とサイズにかなりハッキリした違いがあることに気づいた。 サイズはamethystinusがやや大きい(amethystinusは 250-500μm,まれに800 μm;fuliginosus は 200-300 μm)。 これだけだとサイズが重なってしまうので判別しずらいが,細胞集団で比較するとかなりはっきりした違いになる。 ただし,1匹ずつの比較では,サイズだけでどちらであるかは断定できない。 これに対して,細胞の形には1細胞レベルでも明瞭な違いがある。 amethystinusは先端部がかなり幅広いトランペット形で,輪郭は正三角形に近い。 この状態は固着している時だけでなく,遊泳時にも維持される。 一方,fuliginosusは,細長いトランペット形で,ときに非常に細長く伸びることもある。 細胞が収縮した際は,寸胴な樽型になる。この点は polymorphus に似ている。 また,長い間,培養器を静置しておくと,fuliginosusは培養器の底や壁面に,密集した細胞集団を作る(汚れの少ない培養の場合に限られるが)。 amethystinusはそうはならず,均一に分散した状態をとる? |
月井 雄二 (法政大学 自然科学センター) |
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