まず,赤エンドウによる培養をフラスコでおこない,定常期に達したものを用意する。十分に静置してゴミが沈んでいるのを確認したら,ガ−ゼを8枚以上重ねたものをロ−トに乗せ,これにゴミがなるべく混入しないように気をつけながら培養液を注ぐ。これによって,ほぼゾウリムシだけからなるサンプルを得る。
次に,今度は目の荒い漉紙(東洋漉紙なら,No.101)をひだ状に折り,ろ紙どうしが重ならないようにしてロ−トに乗せる。ろ紙が重なっていると,後でゾウリムシがその隙間に集まり回収が難しくなる。そして,ここにさきほどのゾウリムシの入った培養液を静かに注ぐと培養液だけが下に落ち,ゾウリムシがろ紙上に濃縮される。水面が降下することで,ろ紙上にへばりついた細胞をそのままにすると乾燥して死んでしまう。それを防ぐために,ときどき,洗浄瓶からDWをろ紙にあてて細胞を洗い流す。場合によっては,次のステップで用いる緩衝液で十分に置換することもある。以上のようにして集めたゾウリムシのサンプルはそのまま数日間放置しても大丈夫である。ただし,置換した緩衝液によっては死亡することもあるので注意が必要である。
1 酢酸法
この方法は,常温で,大核の形を保ったまま,かつ,大核DNAの分解を防ぎながら分離を行なえるのが特徴である。
まず,細胞を低速遠心で集める。これに以下の溶液を加え,ゆっくりピペッティングする。1度の遠心ではなかなかきれいにならないので3〜4度同じ操作を繰り返す。細胞が溶け出すのに数分はかかるので,あまり急いでピペッティング&遠心を繰り返す必要はない。また,この条件ではトリコシスト(放射前)は溶けずに残る。
1% 酢酸は,常温で大核の形を保ったまま,かつ,大核DNAの分解を防ぎながら分離を行なうために必要なものである。
2 エタノール法
しかし,大核内封入体などは上記の条件では膨潤して溶け出してしまう。そこで封入体が入ったままの大核を単離するには,以下の条件でピペッティング&低速遠心の操作を何度か繰り返す。
*この条件は,大核内封入体を単離するために開発したものだが,核をとるのにも有効である。ただし,この条件ではエタノールによる細胞の固定が徐々に進むので,ピペッティングはなるべくすばやくかつ激しく行う必要がある。この場合も1度の遠心ではきれいにならないので,4〜5度同じ操作を繰り返す。
(この後,単離した大核からさらに封入体を取り出すには,次のステップに進む必要があるが,
今回は省略する。)
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