2017.05.14の記録

サカマキガイを利用した雑菌等の除去 & サカマキガイの卵塊

ウキゴケ(カヅノゴケ,カズノゴケ,Riccia fluitans,ゼニゴケ目 ウキゴケ科 ウキゴケ属)
2015年に 沼の原湿原(妙高市)で採集したもの。 比較的珍しいので,ず〜っと培養(栽培?)を続けている。
しかし,この1,2年は増殖したユレモなどのコンタミに悩まされていた(注)。

注:2枚目のバッチは,以下で説明しているように,一部をサカマキガイと一緒にすることで, ユレモなどのコンタミがかなり減った状態のもの。だいぶスッキリした。

ところが,学生実習用として今年(2017.1)二度目に注文した オオカナダモの中に何種類かの巻き貝が混入していた。 オオカナダモをガラス水槽に入れ,液肥を加えて栽培していたところ,次第にサカマキガイが増えてきた。 この貝が増えてくると,それまで水槽で増えていたユレモなどの原核生物が減って水槽内が非常にきれいになった (水槽の底は貝の糞だらけだが,ガラス壁や水の表面の汚れがすっかり消えた,水は透明; この貝はユレモや細菌類は食べるが,オオカナダモの葉などは食べない)。
それまでは雑菌や微小な藻類などコンタミが増えるたびに水槽の水を交換し,水槽のガラス面を洗浄していたのだが, この貝が増えたおかげでそれらの作業がまったく必要なくなった。 メンテナンスとしては,乾燥で失われた水分を脱イオン水で補い,ときおり液肥を補充する程度でよくなり,大変助かっている。
そこから,ウキゴケにまとわりついて増殖しているユレモなどの除去にも,この貝は役立つのではないかと思い付いて 両者をシャーレに入れて観察している。結果は上々,期待通りにサカマキガイはまとわりついていたユレモなどを食べて きれいにしてくれた。

これを見てあるアイデアが浮かんだ。 この貝を現在の研究材料であるS. pyriformisにも使えないだろうか?
S. pyriformisは,有菌の条件で培養をしているが,どうしても次第に雑菌が繁殖してしまう。 これを放置するとS. pyriformisが死んでしまう場合があるので,雑菌がある程度増えた段階でそれらを除去する必要がある。 そのためには,まず雑菌を含む上澄みを捨てるのだが,これだけではシャーレの底や壁面に張り付いた雑菌は取り除けない。 ピペッティングで無理矢理引き剥がす方法もあるのだが,この作業は時間がかかるので, これを全部のシャーレでやるとなると,物凄い手間(時間)がかかってしまう(体力的に無理)。
やむなくメンテナンスのたびに多くのシャーレを新しいものに交換せざるを得ない。 現在は,たくさんのS. pyriformisを培養しているので,メンテナンス作業をするたびに 大量の使用済みシャーレを破棄している。
もしかすると,このサカマキガイを一緒に入れておけば,それらの雑菌をきれいに掃除してくれるではないか? と思いついたのだ。S. pyriformisじたいは,結構大きいのでサカマキガイには喰われないことを期待した。 すると,たしかにその通りで, サカマキガイは,S. pyriformisの餌に使用しているキロモナスは食べてしまうが(注), S. pyriformisは食べずに接触しても素通りしてしまう。 そして,1日後にはシャーレの底や壁面はきれいになった(替りにサカマキガイの糞だらけになるが)。 サカマキガイの糞は,大きいしシャーレの底に付着せずに浮遊しているので,塩溶液を交換する際に簡単に除去できる。 よって餌やりのたびにシャーレを交換する必要がなくなった。バンザイ!

そして,今日(2017.05.14)になってシャーレを覗くと,なにやら透明な楕円体が数個シャーレの壁面にくっついてた。 どうやらサカマキガイの卵のようだ(注)。
デジカメの顕微鏡モードで撮影。 透明なゼリーの中にフットボール形に近い楕円体があり,それじたいも透明なゼリーで薄く覆われている。 そして,卵?の一部にはなにやら不透明な丸い構造物がある。胚?

注:サカマキガイは雌雄同体で,他個体との交尾もするが,自家受精もするらしい。 今回は1個体にしておいたものなので,おそらく自家受精のはず。

上の卵塊を双眼実体顕微鏡で観察。

卵?とそれを産んだ親のサカマキガイ,そして,ウキゴケ。 今後どうなるか観察を続けたい。

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