公開講演会: 生物多様性研究・教育を支える広域データベース


微小貝
個人が作成したデータベースによる情報発信の可能性と,その継続・維持における問題点
山田まち子
 

 サイト「微小貝」は,貝類(主に貝殻)の3,000種以上の画像と学名などの分類学上の情報,産地やその他のコメントなどの情報を,日本語と英語で1995年からインターネット上で,広く一般の皆さまに無料で公開し,画像なども自由に利用して頂いています。

掲示板も複数設置し,一部の研究者やコレクターだけでなく一般の多くの方との交流ができる場を設けています。

 サイト「微小貝」は,私の父であり鳴き砂の研究者である,同志社大学名誉教授 三輪茂雄が,20年余りの間に鳴き砂の中から採集した主に微小貝類を同定し,分類した数百のデータベースから始まりました。

 これを1990年に私が画像データベースソフト化し,富士通の電脳夢募集’90というコンテストに応募し,幸運にもグランプリを頂くことが出来ました。これをきっかけに,本格的に貝のデータベースソフトを作成することを夢見て,少しずつ私自身でも貝の収集を続けてデータを追加して,日本の微小貝データベースから,「世界の貝類データベース」に変化していきましたが,やはり原点を忘れないようにということで,今でも「微小貝」というタイトルを大切に守っています。

 1995年12月には,ようやく普及しはじめたインターネットのWebの技術を利用して,パソコンの機種にとらわれることのない,オープンなデータベースの公開をめざして,当時はベッコアメインターネットというプロバイダからスタートし,サイトの料金の問題などのため,イフネット,めでぃあウェブ…とプロバイダを転々とする放浪生活も味わい,1999年に,縁あって関西学院の雄山先生のご好意で,学院のサーバ内にデータを置かせて頂くことが出来るようになりました。

 しかし,近年の不況により夫の転職と収入の大幅な減少を余儀なくされ,私自身も生活費を得る手段を迫られて,一時はサイトを閉鎖しようと大変悩んだ時期もありました。

 サイトを維持しつつ収入を得る問題を解決してくれたのは,やはりネット上の知人でした。知人の一人の貝のディーラーから,貝を預けて頂き,委託販売でサイト内で販売するコーナーを設けることができるようになりました。もちろん営利目的になりますから,関西学院さん以外にもう1つ専用にドメインとミラーサーバを有料で借りています。

 現在,順調とはいえないまでもなんとかパートに出ずにサイトを維持しつつ,収入を得ることが出来ています。ショップと前後してフリーマーケットコーナーも設けているのですが,ここはコレクターや業者さんが,不要になった貝をフリーマーケット形式で自由に売って頂くもので,ここに関しては一切無料で利用頂いております。

 ショップとフリマコーナーを設けたことにより,多くのコレクターや見物?の研究者の方もサイトを訪れるようになり,サイト自体が活性化しました。またこのことにより,それぞれの分野の知識のある方によって,掲示板の質問のレスを頂けるようになったことがこれも大きなメリットになっています。

 サイト閉鎖という大きな危機はひとまず乗り越えたサイト「微小貝」ですが,うちのサイトに限らず,データベースという貴重なデータを保存するためには,運営者が数々の努力をしなければなりません。その中でも,私のように個人で運営されている方の場合,月々のサーバあるいはプロバイダ,電話代などの利用料という大きな負担があります。これだけでもなんとかならないか?という方も多いと思います。また,大学サイトでも,例えば微小貝サイトが関西学院さんのご好意で置かせてもらっているサーバからも,担当の雄山先生が退職されれば(実際数年後に退職される),閉鎖しなくてはなりません。

 サイト「微小貝」のように「自立」できる手段のあるサイトは別としても,良質なデータであれば,無料で借りられるサーバを提供して頂けるような制度が出来ることを期待したいです。

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