公開講演会:生物多様性研究・教育を支える広域データベース
微 小 貝  山田まち子
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 さて、私が1995年12月8日に「微小貝」というサイトを公開してから、今年でまもなく8年目になります。このようなオンラインデータベースが増えると、書籍の図鑑や文献 が売れなくなるのではないか?というご意見を何度か頂いたことがあります。

 これは私の個人的な見解ですが、インターネットで例えば貝の名前を調べて、そこで得た情報で満足する人々は、もともと高価な貝の図鑑を買うような人々ではないのでははいか?と考えますが、皆さんはいかがでしょうか。

 私のサイトでは、図8のように貝類図鑑アンケートを募集しています。そこでナンバーワンになったのが、奥谷先生の「日本近海産貝類図鑑」、もちろん私もこれを購入させて頂きましたし、微小貝の詳細な写真が一番沢山のっていてとても重宝しています。しかし、重さは2キログラム以上もあり、また38,000円という高額であることからも、とても一般に普及するような図鑑とは思えません。

 一方、小学校で総合教育がはじまったことにより、小学生が貝の名前を調べに来る(特に夏が多いですが)機会も増えました。そういった場合に、子供たちが簡単に検索できたり質問ができる場所として、微小貝ホームページを利用して頂けることは、同じ小学生の娘を持つ私にとりましても大変うれしいことであります。


図8 貝類図鑑アンケート

URL, http://www.bigai.ne.jp/vote/votec.cgi

 サイトでさまざまな貝の情報を得てさらに研究を深めたいという方のために、英語と併記で図鑑や文献のリストのページを設けています。貝本のアンケートやリストを参考にして、実際に本を購入されているというメールも頂いております。ということはむしろ今までよりも多くの方々に、貝類という分野に気軽に接して頂いて、感心を持って頂くよい機会を提供しているのだと考えております。

 サイトを8年も運営していて一番の苦労は、なんといってもサーバなどの維持費があげられます。ホームページで画像付データベースを構築すると、どうしても趣味の範囲を超えた容量になり、それに比例して維持費用もかさんでくるものです。

 近年の不況により夫の収入減を余儀なくされ、私自身も生活費を得る手段を迫られて、一時はサイトを閉鎖しようと大変悩んだ時期もありました。しかし、知人の一人の貝のディーラーから、貝を委託販売でサイト内で販売するコーナーを設けることができるようになりました 現在、順調とはいえないまでもなんとかパートに出ずにサイトを維持しつつ、収入を得ることが出きています。

ショップと前後してフリーマーケットコーナーも設置しました。ここはコレクターや業者さんが、不要になった貝をフリーマーケット形式で自由に売買して頂くもので、ここに関しても、一切無料でご利用頂いております。

 ショップとオークションを設けたことにより、多くのコレクターや見物?の研究者の方もサイトを訪れるようになり、サイト自体が活性化しました。またこのことにより、それぞれの分野の知識のある方によって、掲示板の質問のレスを頂けるようになったことがこれも大きなメリットになっています。

 しかし私のサイトに限らず、データベースという貴重なデータを保存するためには、運営者が数々の努力をしなければなりません。その中でも、私のように個人で運営されている方の場合の月々のサーバあるいはプロバイダ、電話代などの利用料金の負担は、データの量に比例して重くなります。

 また、大学サイトの場合でも、担当の方が退職されれば、そのサイトは原則として閉鎖しなくてはなりません。同様の体験を現在は私の微小貝サーバ内にある、父の鳴き砂のホームページでもしました。大学のサーバから出た後、プロバイダーを転々と変えたので、そのためにリンクが切れてしまったところが沢山あります。リンクはそのサイトを支える大事な血管のようなものです。プロバイダーを転々とするたびに、大事な学術的データへの道が切れてしまうのは大変残念だと思います。

 良質なデータであれば、無料または安い利用料で借りられるサーバを提供して頂けるような制度が出来ることを是非期待したいと思います。

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