公開講演会:生物多様性研究・教育を支える広域データベース
日本産アリ類画像データベース  今井弘民(国立遺伝学研究所 / 総合研究大学院大学)
アリ類画像データベースの特色
back 1. 画像を中心としたデータベース back

 最近色々な生物関連のデータベースがWe上に公開されるようになった。その多くは個人またはグループが自発的に構築しているもので,公的機関の公式なデータベースとして公開されているものはいたって少ない。中身は高度に学術的なものから個人的趣味まで玉石混交といった状況にあるが,人気の高いサイトに共通する特徴はデジタル画像を売りにしている点にある。

 従来の分類学のテキストは,ラテン語で書かれた学名と2分岐検索および種の記載がセットになっているが,難しい学術用語を用いた文字情報が氾濫しているため,分類の専門家以外は難解で退屈な代物であった。現にGBIFが展開しようとしているデータベースは,学名と標本ラベルを中心とした文字情報データベースで,もっぱら分類研究者の便宜を優先させているといっても過言ではない。この難解さこそが,分類学を一般社会から乖離させ衰退に追いやっている原因の一つではないだろうか。

 これに対してアリ類データベースでは,文字情報に線画やカラー画像を加えて,出きるかぎり視覚に訴えるように工夫している。画像情報は専門的知識なしに誰でも理解することができる利点がある。そもそも分類の記載が文字に頼ったのは,印刷技術と経費上の制約で画像が利用できなかったからである。デジタル画像技術が格段に進歩した昨今,画像のないデータベースを構築しても,21世紀に分類学を蘇らせる起爆剤にはなりえないであろう。

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