アデノウイルス



Adenovirus

感染と病気

 アデノウイルスが感染すると、ヒトに上気道感染、咽頭炎、結膜炎、胃腸炎などを引き起こす。プール熱や夏風邪の原因ウイルスの一つ。ヒトに感染する(ヒト)アデノウイルスには30以上の血清型に分類される。ヒトアデノウイルスのなかには、ハムスターに感染して発ガン性を示すものもある。遺伝子の一部を他のDNAに置き換えた組み換えアデノウイルスは、細胞への遺伝子導入や、遺伝子の欠損に原因する疾患に対する遺伝子治療のためのベクター(運び屋)として使われている。

粒子構造

 径70-90nmの正二十面体構造でエンベロープは持たない。正二十面体の各頂点にペントンファイバー(penton fiber)とよばれる細い突起がついている。ウイルスを精製するとき時外れやすく、ネガティブ染色でも見えにくい。粒子の殻(カプシド)は、252個のカプソマーが集合して出来ている。遺伝子DNAは、正二十面体粒子の中に、二種のタンパク質と結合したコアとして存在する。

遺伝子

 遺伝子は、分子量2.0〜2.5×107、約36、000塩基対からなる、直鎖二本鎖DNA。両方の5’末端に蛋白質 (VPg) が結合している。粒子を穏やかに処理して遺伝子を分離すると、両末端の結合タンパク質が互いに会合して、DNAが環状になっているように見える遺伝子が得られる。この蛋白質は、DNAの複製開始に重要な役割をはたす (Protein priming )。

(矢崎 和盛<法政大学>)


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