はじめに

  ウイルス学の急速な発展とともに、ウイルスに関する情報は日々膨大なものにふくれあがっている。ウイルス研究者にとっても、ウイルス全般を広く見渡すことはなかなか困難になってきている程であるから、まして一般の人々にとっては、更になじみにくいものになっていることだろう。しかし、交通手段の発達により時間距離の短縮したこの地球上では、人も物も煩雑に行き来しており、遠い国のウイルス感染症が決して遠い国の話に終わらず、直ちに我が国に影響を及ぼすようになってきている。また生命科学の発展は、遺伝子治療や、新しい性質を生物に付与するといったウイルスの利用法まで開発している。その意味では、実はウイルスは、更に身近になってきているのだと言うことも出来よう。

  しかし、研究者以外の方々にとっては、ウイルスの名前を見てその形や性質を書籍などに当たって調べるのは容易い事では無かろう。そこで、ここにネット版ウイルス図鑑として、ウイルスの形、感染と病気、遺伝子の性質等の情報を簡単に見られるものを作ることにした。初歩の生物学を学んだ高校生以上の方々が分かるように、平易な文章になるよう心懸けたつもりであるが、より良い表現に改変して行く事に異存はない。これが、ネット情報の良いところであろうから。より詳細については、様々なレベルに対応した解説書も多く出ているので、それらによって更にウイルスの世界の、また生命科学の世界の理解を進められればと思う。

  ウイルスの分類法は、国際ウイルス分類委員会(The International Comittee on Taxonomy of Viruses: ICTV)によって定められているので、このウイルス図鑑も、ICTVによる分類(7th Report of the ICTV: M. H. V. van Regenmortel, C. M. Fauquet, D. H. L. Bishop eds., Academic Press, 2000)に従って各項目を立てている。 ウイルスは、数十nm(ナノメーター、百万分の一ミリ)の大きさのものが多く電子顕微鏡を使わなければ見えないので、電子顕微鏡の解説も記載した。

 矢崎和盛(法政大学)

<トップページに戻る>