ウイルスの分離精製



 ウイルスの分離は、動植物や菌類、細菌などの感染細胞や組織から、糞便や水疱、鼻汁、唾液、血液(血清)などの体液などからも行われる。培養細胞や発育鶏卵などに感染させてウイルスを培養することも多い。細胞を壊して(破砕して)ウイルスを取り出し、遠心操作などによってウイルスを濃縮し精製する。

1)破砕

 細胞をウイルスの構造を壊さないような適当な塩濃度の緩衝液(pHが安定している水溶液)に浮遊させ、細胞をすり潰したり、超音波で壊したり、または浸透圧の低い溶液(低張液)にいれて破裂させたり、凍結と融解を繰り返すなどして細胞を壊し、ウイルスを細胞から緩衝液中に出す。菌類や植物では細胞壁が堅いものが多くなかなか壊れないので、石英砂を加えてすり潰したり、液体窒素で凍結し乳鉢ですり潰してから緩衝液を加えて分離作業を進める場合もある。

2)遠心

 細胞を破砕したものが入っている緩衝液から、細胞の残骸やミトコンドリア、葉緑体等の細胞内小器官、また細胞質にウイルスがある場合には核など必要ないものを、丁度これらが落ちる程度の低速遠心による弱い遠心力で遠心管の底に落とす。緩衝液中にはウイルスや細かな細胞内膜成分、リボソーム等の小さな顆粒成分、蛋白質、脂質等がのこる。これを超高速で回転する超遠心機にかけ強い遠心力によってウイルスを遠心管の底に沈殿させる。ウイルスの沈殿にもう一度緩衝液を加えウイルスを緩衝液中に浮遊させる(懸濁する)。この高速遠心の際に、蛋白質分子や脂質等不要なものが落ちないよう遠心力を設定しておくと、この段階でかなり綺麗なウイルス懸濁液が得られる。
 次に、緩衝液に蔗糖や塩化セシウムを溶かしておき、これにウイルスを入れて超遠心すると、ウイルス粒子はちょうど粒子自身の密度と蔗糖や塩化セシウム溶液の密度とが等しいところに濃縮され、遠心管にバンドとして見えるようになる(密度勾配遠心法、密度平衡遠心法)。バンドの部分を集め、緩衝液を加えて密度を下げ、超遠心によってウイルスを再び遠心管の底に沈殿させる。ウイルスの沈殿にもう一度緩衝液を加えると、純度の高い精製ウイルス粒子の懸濁液となる。

3)濃縮

 始めのウイルス懸濁液が大量であったり、糞便や大量の血清などから分離を始めるときは、大量の懸濁液を連続して遠心出来る特別な遠心機を使ったりする(連続遠心機)。硫酸アンモニウムを適当量加えて懸濁液からウイルスを沈殿させる方法もある。ガラス管やプラスチック管に樹脂を詰め、ここに懸濁液を連続して流してウイルスを樹脂に吸着させ濃縮する、ウイルス粒子が通らないような小孔が沢山開いたチューブから水分だけを出して濃縮する、水分だけを効率よく吸収するポリマーを使って水分量を減らして濃縮する、等などの方法もある。
 ポリエチレングリコールとデキストランサルフェイトなど、二種類の水溶性高分子物質(ポリマー)を適当な割合で混ぜると、静置しておくだけで再びそれぞれのポリマーに分離しようとするようなポリマーの組み合わせがある。このとき一方のポリマーをごく少量にしておき、その少量のポリマーの方にウイルスが集まる(分配される)ようにしておいてウイルスを濃縮する水性二層分配法もある。(矢崎 和盛<法政大学>)

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