公開講演会:生物多様性研究・教育を支える広域データベース
牧野標本館タイプ標本データベース
 木原 章(法政大学 自然科学センター),加藤英寿(東京都立大学 牧野標本館)
2.データベース化への道のり
back 2−1 標本の鑑定作業 back

 植物標本はさく葉標本(押し葉)として台紙に貼られ,そこに採集地,採取者名等のデータを記載したラベルをつけた形態で保管されている。従って,ラベル情報を文字データとして,また標本撮影写真を画像データとして入力すれば,データベースはでき上がるはずである。しかし,実際には多くの植物標本は,直ぐにデータベース化できるだけの状態になっていない。牧野富太郎が収集した標本も,実際には新聞紙に挟まれた押し葉標本とその新聞紙に書かれた覚え書きからなる,完全標本からはほど遠い状態の標本だった(図2)。
図2 牧野富太郎が収集した押し葉標本

従って,それらの標本を植物分類学の基礎的,標準的研究資料としての使用に耐える標本に整えるために,標本の鑑定と添付ラベルの作成,台紙への貼り付け等の作業が,1958年から約40余年に渡って行われてきた。その成果として,現在では寄贈標本約38万点の鑑定が終わり,うち約27万点を完成標本として保管し,また重複標本約8万点を世界各国の主要標本館へ交換のため発送した。すなわち,牧野富太郎が残した膨大な押し葉標本は,東京都立大学に寄贈後約40年を経て,ようやくデータベース化を始められるだけの状態に達したと言っても過言では無いのである。

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