調査研究成果報告書
研究課題名
「画像・動画データベース作成支援システムに関する研究」
平成12年4月 - 平成13年3月
法政大学
目次
1. 研究目標 | 1 |
2. 研究成果の概要 | 1 |
2-1.顕微鏡画像専用ネットワーク配信画像フォーマットの開発 | 1 |
2-2. 動画データベース構築システムの開発 | 1 |
2-3. データベース公開のためのガイドライン作成の準備 | 2 |
2-4. 学術情報の効率的な検索システムの開発に向けて | 2 |
3. 研究成果の詳細内容 | 2 |
3-1. 顕微鏡画像専用ネットワーク配信画像フォーマットの開発 | 2 |
3-1-1. 写真・線画・CGの問題点 | 3 |
3-1-2. フォーカスアニメーションの開発 | 5 |
3-2. 動画データベース構築システムの開発 | 6 |
3-2-1. 動画ファイルの編集・保存システムの改良 | 6 |
3-2-2. 動画の組み込み | 7 |
3-3. データベース公開のためのガイドライン作成の準備 | 7 |
3-4. 学術情報の効率的な検索システムの開発に向けて | 8 |
3-4-1. META文の導入 | 9 |
3-4-2. 今後の課題と将来予想 | 9 |
3-5. データベースの必要性に関する研究者への啓蒙活動 | 10 |
4. 成果の公表 | 10 |
4-1. 原著論文による発表 | 10 |
4-2. 原著論文以外による発表 | 11 |
4-3. 口頭発表 | 11 |
1.研究目標
高品位の静止画・動画を必要とする生物系研究資材データベースの構築を支援するため,標準的画像処理法を考案し,そのマニュアルを公開する。顕微鏡画像については「バーチャル顕微鏡」フォーマットを開発し,そのデータ閲覧用にWWWブラウザプラグインを作製して普及を計る。また,各生物系データベースサイトに対して分類項目等を使った的確な検索を実現するため,META挿入文フォーマットを開発する。
2.研究成果の概要
2-1. 顕微鏡画像専用ネットワーク配信画像フォーマットの開発
通常の光学顕微鏡は,倍率を上げれば上げるほど焦点深度が浅くなり,被写体のごく一部にしか焦点が合わなくなる。このため,顕微鏡観察において生物試料の立体イメージを把握するためには,焦点を上下に移動させて,部分的に焦点の合った複数の画像を見ながら,観察者自身の頭の中で被写体の立体イメージを作り上げることになる。また,そのような立体イメージを一枚の写真に記録することは従来不可能であったため,替りに,異なる焦点位置(または角度)から撮影した平面的な画像の組み合わせ(組み写真)や,立体的なスケッチ(線画)を描くことで代用してきた。しかし,実物を観察したことのない者にとって,それらの組み写真や線画から実際の立体イメージを想像するのは容易でない。そこで,本研究では昨年度から,複数の焦点位置で撮影した画像をフォーカス・スタックとして記録し,このスタック画像の焦点を自在に換えながら観察できる画像フォーマット(フォーカスアニメーション)の開発を続けている。このフォーカスアニメーションを使えば,平面的な画像の組み合わせや線画に頼らず,実際に顕微鏡を観察している場合と同様な感覚(バーチャル顕微鏡)で生物試料の立体イメージを理解することができる。
フォーカスアニメーションは,データ量が比較的少ないため画像情報としてネットワークで配信することが可能である。そこで,今年度はこの画像フォーマットを普及させるため,情報発信者側用として,このフォーカス・スタック作製のためのマニュアルを作成した。同時に,受信者側用として標準的コンピュータシステムでフォーカスアニメーションの閲覧を可能にするブラウザのプラグイン(或いはJavaアプレット)の開発を行った。
2-2. 動画データベース構築システムの開発
一昨年度より,生命現象を記録するためには,静止画像だけでなく,動画による記録が不可欠であると考え,動画データベースの構築システムの開発を続けてきた。これまでに,生体試料の静止画と動画をほぼ同時的に記録するシステムを開発するとともに,動画データの記録にデジタルビデオ(DV)方式を採用し,記録した動画データを分類・蓄積するためにDVD-RAMの導入を試みた。さらに,動画データからの動画クリップの切り取り法,切り取った後の再圧縮法,圧縮された動画をWebPageにインライン表示するための手法などを開発し,動画のデータベース化に関する基本システムを構築した。
今年度は,このシステムを使い,これまでに記録した動画データ(DVテープ,約300本)を本格的にデータベース化する作業を開始した。ただし,昨年度の調査で,DVD-RAMはデータの書き込みに時間がかかり過ぎる,エラーが頻発する等の欠点があることが判明したため,今年度は,大容量(250Gバイト)のハードディスク上に処理後のデータを蓄積し,すべての作業が終了した後に,最近利用可能になったDVD-Rにバックアップを作る方式に変更した。
2-3. データベース公開のためのガイドライン作成の準備
本研究の目標は,生物系の研究者が個人レベルで自らの研究資材情報をデータベース化しネットワークで公開するためのシステム開発にある。よって,最終的には,開発したシステムのノウハウをデータベース構築&公開のためのガイドラインとして一般に公開する予定である。
今年度はそのための準備として,ガイドラインの構成要素となるデータベース構築と公開のための様々なノウハウをマニュアル化した。現在は,それらを個別にWebページとして公開しているが,今後はこれらを整理・統合してガイドラインとして公開する予定である。
2-4. 学術情報の効率的な検索システムの開発に向けて
近年,一般の検索エンジンでは,ネット上で公開される情報が増大するにつれ,情報のノイズが増えて効率的かつ的確な検索ができにくくなるという問題が起きている。この点に関しては,BRNetにおける統合検索システムのような学術情報専門の検索エンジンにおいても状況は同じである。むしろ学術情報を対象とするBRNetおいては,一般の検索エンジン以上に,より効率的かつより的確な情報検索サービスの提供が求められる点で事態はより深刻だといえよう。
この問題の解決策として,一般の場合は,各WebPageにDublin Core,および,その上位に位置するRDF(Resource Description Framework)などが提示する統一ルールにしたがってメタ情報(META文)を付記することが推奨されているが,このためにはWebPageを作成する情報発信者の協力が不可欠であることは言うまでもない。
ただし,Dublin CoreやRDFの場合は,ネット上にあるすべての情報を対象としているため,記述方式が複雑にならざるをえない。また,ネット上にある膨大なWeb情報がこれらの統一ルールにしたがって記述されるまでには長年月を要すると予想される。これに対して,BRNetの場合は,研究資材情報のみを対象としているので,META文はより単純な構成で十分役立つはずである。また,一般の検索エンジンと異なり,総合検索システムでは各情報源ごとに網羅的な検索を提供することが可能である。これらを考慮するとBRNetにおけるMETA文の導入は実効性が高いといえる。
そこで,本研究では,将来,META文の利用が広まった場合,Dublin Core等のより一般的な記述方式と矛盾しないように配慮しつつ,研究資材情報用検索エンジンに固有のMETA文を考案し,これまでに,約4000ページある原生生物画像データベース用の htmlファイルにMETA文を挿入した。
3.成果の詳細内容
3-1. 顕微鏡画像専用ネットワーク配信画像フォーマットの開発
顕微鏡観察では,倍率が上がるほど焦点深度が浅くなり,同一画面では被写体の一部にしか焦点が合わなくなる。このため,観察者は,焦点の位置を様々に変えて観察を行なうことで,部分的に焦点が合った複数の画像を見ながら,被写体の立体イメージを自らの頭の中で合成しなければならない。また,従来,そのような立体イメージを直接記録する方法がなかったため,替りとして元の立体イメージに最も近い倍率・焦点位置の画像を写真に(場合によっては組み写真として)残したり,あるいは,それらを統合したスケッチ(線画)に描き出す作業を行なってきた。
しかし,これらの方法は観察者の知識レベルや描画技能の差によって描き出される線画の正確さや,写真の適切さが異なってくる。たとえば,分類学においては,事前に触角の節数や,繊毛列の並び方等,生物試料の分類学的特徴について理解していないと細部の分類指標を記録することはできない。本来であれば,実物の生物試料を永久標本として残し,必要に応じてそれらを直接観察すればよいわけだが,原生生物など生物試料を永久標本として残すことが難しい場合は,どうしても画像記録に頼って分類を行なわざるをえない。
そこで,本研究では,上記のような顕微鏡画像に特有の問題である,焦点深度が浅いことによる画像記録の制約を回避する手法の開発を試みた。すなわち,あらかじめスタック化した複焦点画像(同一被写体に対する焦点位置の異なる複数の画像を重ね合わせたもの)を,受け手があたかも顕微鏡を操作する要領で焦点を変えながら観察できる画像フォーマット(フォーカスアニメーション)を開発した。さらにネットワーク経由でこの画像を見るための専用ブラウザツールも試験的に開発した。このシステムが完成すれば,情報の受け手は三次元構造を自分のイメージとして再構築することが容易になり,顕微鏡を持たなくとも,Web画面上のブラウザツールを「バーチャル顕微鏡」として操作することで生物試料を観察することができるようになる。
3-1-1. 写真・線画・CGの問題点
顕微鏡写真は,細部の構造・質感ともに再現性が高く,微細な構造を記録する上では,最も一般的に普及しているメディアである。またデジタルカメラなど近年の画像機器の発達により,画像の作成も容易になってきた。しかし,既述したように,顕微鏡写真には倍率が上がれば上がるほど焦点深度が浅くなるという問題があり,試料の立体構造を1枚の画像として記録することが難しい。この問題への対策として,一般には,焦点位置をずらした複数の画像や,撮影の方向を変えた画像を作成し「組み写真」として立体構造を示すことが行なわれる。しかし,実物を観察したことのない者にとっては,このような組み写真から元の立体的なイメージを想像することは必ずしも容易ではない。
図1 Holostycha sp.のProtargol染色標本の各フォーカス面(約2.5μm間隔)の写真
一方,分類学の文献等では生物種の特徴を記録するために「線画」が頻繁に登場するが,線画とは,焦点位置の異なる複数の画像を統合し立体配置を平面画像として描き出したものである。線画の特徴は,不要な構造を省略することで特定の分類指標を際立たせることができる点にある。しかし,そのような作業は,観察者の頭の中に事前に概念化された分類指標がある場合にのみ可能であり,そのような知識がないまま分類学的に意味のある線画を描くことは不可能である。同様に,利用者が線画から元の生物試料の立体イメージを想像(再生)する場合にも,ある程度の分類学的知識が要求される(このため文献にある分類学的特徴の記載を読まずに,線画だけから試料生物の特徴を理解するのは不可能である)。
また,線画を描く際に省略された情報には,利用者は当然ながらアクセスできない。線画には,それが描かれた時点で線画制作者(分類学者)が把握していた情報以上のものは含まれていないので,その意味では,後々の研究資材としての利用価値は低いと言わざるをえない。
図2 図1の写真をもとに描かれた線画
左:腹側の繊毛列を描写,中央:泡状核の分布を描写,右:背側の繊毛列を描写
この他,コンピュータグラフィック(CG)を用いて様々な立体情報を可視化することもできる。CGは様々な手法で印象的な画像を作ることができるので,特定構造の立体的配置を示す手法として優れている。しかし,3次元配置を正確に表示するためには,非常に多くの手続きを要するのが欠点といえる。また,CG化する過程で失われたり変形・変質する情報を十分に把握できていないと,CG画像を基に生物試料の特徴について客観的に論じることは難しい。
また,CG技術を使えば,焦点位置の異なる複数の画像を合成し被写体のすべての部分に焦点が合った補正画像を作ることができる。そのような画像を「ExtendedFocus画像」というが,このExtendedFocus画像は,同一画像のすべての部域で焦点が合っているので,細部を観察するのには都合がよい。しかし,その代償として,立体感が失われてしまう,被写体上で斜めになっている構造物の長さを短めに錯覚してしまうなどの欠点がある。
図3 「ExtendedFocus」により複数の焦点面の画像を合成し焦点深度の補正を行った例
Extended Focusでは見ている角度を錯覚しやすい(画像はキバハリアリ)。
3-1-2. フォーカスアニメーションの開発
以上のように,顕微鏡観察に基づいて,生物試料の立体情報を記録するための従来の手法(写真,線画,CG)は,利用者がそれらの記録に基づいて,元の立体イメージを想像する上で様々な問題があった。そこで,本研究では,昨年度から画像の利用者があたかも実物の試料を顕微鏡で観察しているかのごとく,よりリアルに立体イメージを把握できる新しい画像フォーマット(フォーカスアニメーション)の開発を行なっている。
フォーカスアニメーションとは,同一被写体に対して焦点位置を変えて撮影した複数の画像をフォーカス・スタックとして合体させ,このスタック画像の焦点を利用者が自在に変えながら観察できるようにしたものである。これにより利用者は,組み写真や線画に頼らずに,実際に顕微鏡を観察している場合と同様な感覚で直接,生物試料の立体イメージを理解することができる。
このフォーカスアニメーションには以下のような利点がある。 1) 既存のCGによる立体画像表現に比べ,データ作製手続が遥かに簡単である。 2) 基本的には,従来の写真がそのまま表示されるため,データ作製プロセスで生じるデータの欠失や変形・変質などのartifactがない。 3) 既存の動画記録に比べてファイル容量を小さくできるのでネットワーク上での流通に適している,等である。
とくに画像情報としてネットワークで配信することが容易なことから,多くの人々が顕微鏡を持たなくとも,ネット上で容易に微小な世界を観察することができるようになり,微生物に対する一般の理解を増進させる効果が期待できる。そこで,この画像フォーマットを普及させるために,情報発信者用として,フォーカス・スタック作製のためのガイドラインを作成した。同時に,受信者用として標準的コンピュータシステムでフォーカスアニメーションの閲覧を可能にするビューア(WWWブラウザのプラグイン,或いはJavaアプレット)の開発を進めている。
ビューアの開発に関しては,昨年度はShockwaveを使ったアプレットの試作版を作成したが,これには,動きがぎこちない,互換性が低い,元画像のセットアップが必要である等の問題があった。そこで,本年度はQuickTimeを使ったアプレットを制作した。これは動きがスムーズであり,互換性が高い,元画像のセットアップが不要である,等の点で優れている。今後は,このQuickTimeを使った試作版を基に,本格的な公開版の開発を行なう予定である。
図4 連続焦点スタック画像 図5 開発バージョンのビューア
以下に,現時点でのフォーカスアニメーションの仕様を示す。
画像サイズ 自由(通常のモニターサイズ以下が現実的)
3-2. 動画データベース構築システムの開発
一昨年度より,生命現象を記録するためには,静止画像だけでなく,動画による記録が不可欠であると考え,動画データベースの構築システムの開発を続けてきた。これまでに,生体試料の静止画と動画をほぼ同時的に記録するシステムの開発を行ない,また,動画データの記録にデジタルビデオ(DV)方式を採用し,記録した動画データを分類・蓄積するためにDVD-RAMの導入を試みた。さらに,動画データからの動画クリップの切り取り法,切り取った後の再圧縮法,圧縮された動画をWebPageにインライン表示するための手法などを開発し,動画のデータベース化に関する基本システムを構築した。
3-2-1. 動画ファイルの編集・保存システムの改良
ただし,昨年度は,切り出した動画ファイルが一定量溜まるごとにDVD-RAMに保存して,次の作業(動画圧縮等)を開始するという作業手順を踏んだが,DVD-RAMには,ハードディスクからDVD-RAMディスクへの書き込みが遅い,データを保存した後でディスクの一部が読めなくなるトラブルが起きやすい等の問題があった。これらは作業効率を極端に落としてしまうため,今年度は,大容量(250Gバイト)のハードディスクに処理後のデータを蓄積し,すべての作業が終了した後に,最近利用可能になったDVD-Rにバックアップを作る方式に変更した。
3-2-2. 動画の組み込み
今年度は,この新システムを使って,これまでに記録した動画データ(DVテープ,約300本)を本格的にデータベース化する作業を行った。作業は現在も進行中である。新しいシステムのセットアップに時間がかかったことや,作業人員の確保が遅れたこと等により,今年度中にすべてのDVテープを処理するのは無理だが,年度内に約100属の原生生物の動画,約1500カット程度はデータベース化できる見込みである。作業は,来年度も継続して行なう。
3-3. データベース構築のためのガイドライン作成の準備
本研究の目標は,生物系の研究者が個人レベルで自らの研究資材情報をデータベース化しネットワークで公開するためのシステム開発にある。よって,最終的には,開発したシステムのノウハウをデータベース構築&公開のためのガイドラインとして一般に公開する予定である。
今年度はそのための準備として,ガイドラインの構成要素となるデータベース構築と公開のための様々なノウハウをマニュアル化した。現在は,それらを個別にWebページとして公開しているが,最終的にはこれらをガイドラインとして整理・統合することになる。
ガイドラインの公開はWeb上で行なうことにしているが,Webで公開する理由は,印刷物で公開した場合,ネットワーク及びデータベース関連技術の急速な進展に追随することが難しく,ガイドラインの核となるマニュアルの記述がすぐに陳腐化してしまうため,である。また,できればWebページ上に掲示板機能を作り,ユーザー間の意見交換の場としたい。
これまでに作成したマニュアルWebページは以下のとおりである(一部は昨年度からすでに公開している)。
1) データベース関連テクニックの紹介
http://mac2032.fujimi.hosei.ac.jp/WWW/Kihara/database/tech/tech.html
1. Adobe Premiereを使った動画編集
2. NetScapeでダウンロードしたファイルの見つけ方
3. ネットワークを使ったファイル更新法
4. 共通ファイルの転送法
5. 共通ファイルのアップデート法[木原案]
6. 画像スケールの入れ方
2) ファイルメーカーでWebサイトの構築と管理
http://mac2032.fujimi.hosei.ac.jp/WWW/Kihara/DataBase/FM3Site/000.html
1. はじめに〜準備するもの
2. ファイルメーカーに登録されたデータ
3. HTMLエディタによる表示形式のデザイン
4. HTMLファイルをファイルメーカーの「計算式」に変換する(その1)
5. HTMLファイルをファイルメーカーの「計算式」に変換する(その2)
6. アップルスクリプトによるHTMLファイル作成
7. データの一部を抽出しリストファイルを作成する(応用編)
8. サンプルファイルの使い方
3) Bioimaging Index(趣味と実益の画像処理 )
http://mac2032.fujimi.hosei.ac.jp/WWW/Kihara/PhotoTech/
1. カラーバランスを変えずに自動レベル設定を行う方法
2. FPX Embedding Test
3. FUJI IP Reader で取り込んだEM画像の処理法
4. キバハリアリ撮影テスト
5. ビデオ画像解析に使う機器
6. 監視用静止画記録装置を使う試み
4) 動画データベースの概略
http://mac2032.fujimi.hosei.ac.jp/WWW/Kihara/DV_Base/
5) Digital Image Book Project(古い文献の復活計画)
http://mac2032.fujimi.hosei.ac.jp/WWW/Kihara/DataBase/DigitalBook/index.html
6) PubMed を利用するためのツール:EasyMed の使い方
http://mac2032.fujimi.hosei.ac.jp/WWW/Kihara/PubMed/
3-4.学術情報の効率的な検索システムの開発に向けて
近年,ネット上で公開される情報が増大するにつれ,検索エンジンなどを利用しても効率的な検索が難しくなりつつある。たとえば,原生生物の一種であるAmoebaに関する情報を検索しようとすると,ネット上には,Amoebaという用語をコンピュータプログラムの呼称として採用しているWebPageがたくさんあるため,これらの情報がいわゆる「ノイズ」としてたくさん検索されてしまう。このような情報のノイズをいかにして減らすかが,今後のネットの発展を考える上で重要な課題となっている。この対応策として,現在,各WebPage制作者に対して,Dublin Core等の統一ルールにしたがって各WebPageの特徴や検索用のキーワード(統制語彙)をMETA文としてheader部分に付記するよう呼び掛けが行われている。
関連URL:
Resource Description Framework (RDF)
http://www.w3.org/RDF/
Doublin Core Metadata Initiative
http://purl.oclc.org/dc/
ただし,Dublin Coreおよび,その上位に位置するRDF(Resource Description Framework)では,ネット上にあるすべての情報を対象としているため,記述方式が複雑で膨大な内容とならざるをえない。このため,仮に世界中のWebPage制作者がこれらの呼び掛けに応じたとしても,キーワード等を統一するのは至難の技といえよう。翻って,BRNetで開発中の統合検索システムは,研究資材情報のみを対象として網羅的な検索機能を提供しようとしているわけであるが,このように検索対象があらかじめ絞り込んである場合は,META文はより単純な構成でも十分役立つはずである。
3-4-1. META文の導入
そこで,本研究では,現在約4000ページある原生生物画像データベース用の htmlファイルに以下のようなMETA文を挿入した。ここでは,将来,META文の利用が広まった場合,Dublin Core等のより一般的な記述方式と矛盾しないように配慮しつつ,研究資材情報用検索エンジンに固有のMETA文を考案した。
すなわち,下記のサンプル文中で<META name="Keywords" ,<META name="Description" の部分は一般に利用されている表現形式であり,<META name="Field" ,<META name="Organism" の部分は,研究資材情報用のMETA文としての利用を考えている。
http://protist.i.hosei.ac.jp/PDB/Images/Ciliophora/Epistylis/index.html の例
<html>なお,この例では,記述内容がすべて英語(または学名)のみだが,利用者の中に日本人が多く含まれると予想される場合は,日本語のキーワード等も含めた方がよいだろう。
3-4-2. 今後の課題と将来予想
以上は,あくまでWeb情報を発信する側の対応であり,これらのMETA文が実際に機能するためには,検索エンジン側でMETA文にある情報を利用するプログラムを新たに開発する必要がある。そのため,今後はJSTが開発を行っている統合検索システムとの連携が重要になる。また,BRNetの検索対象となる各WebSiteを管理している一般の研究者にもMETA文の挿入に協力してもらえるよう,META文の意味と重要性について啓蒙活動を行っていく必要がある。
一方,現在までのところ,RDFおよび Dublin Coreに準じて書かれたWebPageは少ない。これは,RDFおよび Dublin Coreの存在が周知されていないことも原因の一つであろうが,従来,一般の検索エンジンがMETA文を利用した検索機能を持たなかったことも大きな原因と推察される。とはいえ,近年は,次第にMETA文を利用する検索エンジンも登場しつつある(InfoNavigator, Goo, AltaVista, HotBot, Infoseek 等)。これにより今後は,適切な情報をMETA文に書き込んだWebPagesがより多く検索される,という淘汰条件によって,徐々にMETA文の利用が広がるものと期待される。
同様に,BRNetにおいても,効率的・的確な検索サービスを実現するためには,あらかじめそのような的確な検索を可能にする環境(META文検索機能とその検索対象となる統制語彙の提供)を整えておく必要がある。そして,そのことが情報発信者である多くの研究者に周知されれば,自ずとBRNetが提示するMETA文を挿入したWebPageが作成されるようになり,それが結果として検索エンジンの機能向上につながる,という相乗効果が生まれるはずである。
3-5.データベースの必要性に関する研究者への啓蒙活動
本研究のテーマは,生物系研究者が個人レベルで情報発信が容易にできるように知的基盤を整備することにあるが,それには,たんに情報発信のノウハウを開発するだけでなく,それらを他の生物系研究者に伝え,情報発信への意欲を惹起する啓蒙活動も重要であると考えている。そのような視点に立ち,従来から学会等の機会を通じて啓蒙活動を行ってきたが,今年度は,以下のような2つの講演会で,個人レベルでの情報発信の必要性とそのためのデータベース構築システムの紹介を行った。
1)月井雄二,「広域データベースと分類学の未来--原生生物画像データベースの意味するもの--」,Joint Forum: Taxonomy Initiatives for Biodiversity Conservation in an IT Era, January 13-14, 2001での発表。講演内容は後述するように論文にして公開した。
2)木原章,「生物データベース構築は研究として成立するのか?」,東京大学海洋研究所共同利用シンポジウム「生物学と映像・画像技術の現状と未来ミその2−」 2001年2月15日
4.成果の公表
4-1.原著論文による発表
木原 章・月井雄二 (2001),
学術データベースとしての生物形態画像データベース, 法政大学紀要 自然科学編, Vol. 118: 31-45,
URL:
http://ameba.i.hosei.ac.jp/akira/Congress/Kiyo2001/
Yuuji Tsukii, Akira Kihara, Yoshihiro Ugawa (2001), Public domain image databases for taxonomic research and education: a case study, Protist Image Database, Joint forum: Taxonomy initiatives for biodiversity conservation in an IT era, January 13-14, 2001, in press.
URL:
http://protist.i.hosei.ac.jp/Science_Internet/TI_2001E/index.html
4-2.原著論文以外による発表
加藤英寿・木原 章(2001)東京都立大学牧野標本館タイプ標本画像データベースCD版 Vol.1,総研大共同研究「生物形態資料画像データベースの構築」
4-3.口頭発表
Tsukii, Y. (2000), A plasmid-like RNA found in Mayorella viridis., Zoological Science, Vol. 17, Suppl.: 28.
Kinoshita, N., Tsukii, Y. and Takahashi, M (2000), A search for "Syngen" and the boundary of morphological species in Paramecium, Zoological Science, Vol. 17, Suppl.: 42.
和文タイトル:ゾウリムシにおける系統進化と接合型の分布
Tsukii, Y. (2000), Molecular phylogeny of the genus, Mayorella using RAPD-PCR., Japanese Journal of Protozoology, Vol.34, No.1: 46.
和文タイトル:RAPD法による裸性アメーバ,マヨレラ属の分子系統調査
別 紙
調査研究課題:画像・動画データベース作成支援システムに関する研究
委託先機関: 法政大学
目
標
|
高品位の静止画・動画を必要とする生物系研究資材データベースの構築を支援するため,標準的画像処理法を考案しそのマニュアルを公開する。顕微鏡画像については「バーチャル顕微鏡」フォーマットを開発し,そのデータ閲覧用にWWWブラウザプラグインを作製して普及を計る。また,各生物系データベースサイトに対して分類項目等を使った的確な検索を実現するため,META挿入文フォーマットを開発する。 |
成
果
の
概
要 |
1. 動画データベースの構築 今年度は,昨年度までに開発したシステムを用い,これまでに記録してきた動画データ(DVテープ,約300本)を本格的にデータベース化する作業を開始した。ただし,昨年度の調査で,DVD-RAMはデータの書き込みに時間がかかり過ぎる,エラーが頻発する等の欠点があることが判明したため,今年度は,大容量(250Gバイト)のハードディスク上に処理後のデータを蓄積し,すべての作業が終了した後に,最近利用可能になったDVD-Rにバックアップを作る方式に変更した。 2. 顕微鏡画像専用ネットワーク配信画像フォーマットの開発 フォーカスアニメーション(焦点位置の異なる静止画を連続させて動画化したもので,ユーザーが自分で焦点を変えて観察することができる)は,データ量が比較的少ないため画像情報としてネットワークで配信することが可能である。そこで,今年度は,この画像フォーマットを普及させるために,情報発信者側用として,このフォーカス・スタック作製のためのマニュアルを作成し,同時に,受信者側用として標準的コンピュータシステムでフォーカス・アニメーションの閲覧を可能にするブラウザのプラグイン(或いはJavaアプレット)の開発を行った。 3. 統合検索を効率化するためのMETA文の開発 公開された情報が増大するにつれ,従来の検索エンジンでは情報のノイズが増えて効率的な検索ができにくくなるという問題が起きてくる。この問題への対応策として本研究では,研究資材情報の検索エンジン用としてより詳細かつ効率的な検索を実現するためのMETA文を考案し,これまでに,約4000ページある原生生物画像データベース用の htmlファイルにMETA文を挿入した。 |