動画データベースの概略

木原 章 (法政大)

研究資材として、原生生物の顕微鏡画像を動画として記録保存し、そのデータを動画データベースとして公開するまでの過程の概略を示す。

1.流れ図

  1. 一次動画データ蓄積
    1. 顕微鏡画像
    2. ビデオカメラ
    3. デジタルビデオレコーダ
    4. 一次動画データの蓄積
  2. 二次動画データ蓄積
    1. コンピュータデジタル動画データへの変換
    2. 動画の編集(オフライン編集)
    3. 二次動画データの蓄積
  3. 動画データの公開
    1. 配信用動画データへのダウンコンバート
    2. 動画データベースへの組み込み


2.一次動画データの記録

動画撮影のための条件設定

  1. 顕微鏡に四眼撮影鏡筒を接続し、ビデオ撮影用の新たな光路を確保する。
  2. 動画撮影条件においても、通常写真撮影条件においても、同条件の色温度を得られる照明装置を用いる。
  3. ビデオ撮影時に解像度の低下を最小限に抑えるための、ビデオ接続コネクタ(1x)を用いる。
  4. (アナログ)ビデオカメラから得た画像を、家庭用デジタルビデオフォーマットでDV miniカセットに記録する。

四眼鏡筒選定の基準

  1. 動画撮影は、通常の写真撮影と同条件で行われる必要が有り、通常撮影と動画撮影の光路をワンタッチで切り替え可能な機種。
  2. 動画撮影中も双眼で観察可能な光の分配比率(80:20)のミラーを用いる。

[採用機種]Zeiss社製四眼鏡筒(特注)

照度可変照明装置選定の基準

  1. ビデオカメラとフィルムでは感度が異なるために、照明の明るさをワンタッチで調節できること。
  2. 照度を変更しても、色温度が変わらない光源。

[採用機種]Atto社調光式高圧水銀ランプ

ビデオカメラ選定の基準

  1. ビデオカメラは小型・軽量で、顕微鏡写真撮影装置との併設によっても顕微鏡鏡基のバランスを崩すことが無い。
  2. 90万画素のCCDにより、DVフォーマット記録の水準を満たすだけの高い水平解像度(約500本)と高い色分解能が得られること。
  3. コントローラ側で、感度調節が容易なこと。

[採用機種]Panasonic社製1/2インチ単板CCD(90万画素)

DVデッキ選定の基準

  1. 業務用デジタルビデオフォーマットがメーカー毎に異なる方式であるのに対して、民生用DVフォーマットはほとんどの機種間で互換性が有ること。
  2. レコーダー自体が小型で、かつモニター内蔵で、顕微鏡周辺の作業スペースを確保しやすいこと。
  3. DVminiテープが小型で、一次データの保管性に優れていること。
  4. デジタルビデオ端子を用いた劣化の無い編集が可能である。

[採用機種]SONY デジタルビデオウォークマン

3.ノンリニア編集

DVフォーマットで記録されたデジタル動画は、コンピュータに取り付けたDVビデオ入力ボードを通じて、コンピュータ動画ファイルにダウンロードする。コンピュータ動画ファイルに変換された動画データは動画編集ソフトを用いて、編集する。編集した動画はいったん同画質のデジタルビデオデータ(二次データ)として保管し、必要に応じてWeb配信用動画フォーマットにダウンコンバートする。


ノンリニア編集用コンピュータの構成

  1. 動画編集用のコンピュータとしては法政大学備品PowerMac G3 MT266 (180Mb/6Gb)を用いる。
  2. DV画像入力ボードには、ハードウェアコーデック(信号変換)採用のインタウェアDVボードを使用する。
  3. データ記録速度を安定化するために、Ultrawide SCSIボードに接続した高速ハードディスクを使用する。
  4. 編集用ソフトとしては、もっとも定評の有る、Adobe Premierを用いる。

二次動画データの蓄積法

  1. DVフォーマットでは、コンピュータ表示に用いる画像(RGB 24ビット)に比べてデータサイズは約1/10に圧縮されるが、それでも一分間あたり約170MBとなり、大容量の外部記憶装置が必要となる。
  2. 現時点では、上記データの蓄積保管にはDV mini テープを用いることがもっとも現実的である。
  3. 将来的には、断片的な素材画像にたいしてランダムにアクセスすることが可能な、DVD−RAMの導入が望まれる。

4.画質の問題

現在のWebで配信可能な動画データには高い画質を望むことは難しい。しかし、将来的な技術革新に伴ってバンド幅の広いネットワークを利用した動画配信が可能に成るものと考えられる。本システムでは一次動画データから二次動画データまでの解像度は不変で、640x480 サイズ毎秒30フレームのDV圧縮フォーマット(画像転送レート 3.6Mb/sec)を使用する。DV圧縮フォーマットは、デジタルビデオ放送やビデオCDで採用されているMPEG1規格(画像転送レート 1.5 Mb/sec)に比べて約2倍の情報量を持つ。DVD動画で採用されているMPEG2フォーマット(画像転送レート 15 Mb/sec、ハイビジョンクラス)と比較した場合には、約1/5 の情報量となる。

各ステップにおける解像度

  1. ビデオカメラ
    走査線数約500本、水平解像度500本以上
  2. DVフォーマット変換後(一次動画データ)
    画素数 約640x480、4:1:1変換(8ビットグレー階調+4ビット色階調)、1/5圧縮
  3. コンピュータ動画データ(編集時)
    画素数 約640x480、4:4:4(24ビット色階調)
  4. 二次動画データ
    画素数 約640x480、4:1:1変換(8ビットグレー階調+4ビット色階調)、1/5圧縮
  5. 配信用動画データ
    約 320 x 240、圧縮データ

5.動画の圧縮フォーマットとデータサイズの関係

動画の圧縮フォーマットとデータサイズ

データ形式

画像サイズ

画素サイズ(バイト)

フレームサイズ(K byte)

フレーム数/秒

圧縮率

20秒間のサイズ(Mb)

データ転送レート
DV圧縮 640 x 480

1.5
(4:1:1)

450 Kb

30

1/5

53 Mb

2.6 Mb/sec

RGB非圧縮 640 x 480

3
(24 bit)

900 Kb

30

1:1

527 Mb

26 Mb/sec

QuickTime
(none)
320 x 240

3
(24 bit)

225 Kb

30

1:1

140 Mb

7 Mb/sec

QuickTime
(Motion JPEG)
320 x 240

3
(24 bit)

225 Kb

30

約1/10
(75 %)

14.3 Mb

0.7 Mb/sec

QuickTime
(Cinepack)
320 x 240

3
(24 bit)

225 Kb

30

(75 %)

2.6 Mb

0.13 Mb/sec

圧縮解凍速度とデータ転送速度

 動画をリアルタイム(ストリーミング)で録画・再生するための条件は動画データの転送速度(単位時間当たりのデータ量)と圧縮解凍速度がハードウェアの性能を上回らないことである。本システムでは、二次動画データの編集、録画方式に640x480サイズのDV圧縮画像を用いる。その時、必要になるハードウェア構成は、以下の通りである。

  1. IEEE1394 (FireWire)インターフェイスカード
    DV 画像の入出力に必要
  2. ハードウェア・コーデック
    DV 画像のリアルタイム表示に必要
  3. UltraWide SCSI インターファイス+対応高速SCSIドライブ
    DV 画像の蓄積に必要
  4. 編集のためのハードディスク容量

6.Web配信のための画像フォーマット

動画は、二次データを編集する過程においてもハードウエアによる制限が多いことを考えると、不特定多数の利用者によって無理なく受信・再生するためには、更なる情報の圧縮・削減が必要になると考えられる。現在のWeb動画の主流は、一旦動画ファイルをダウンロードした後に専用ソフトで再生する方式である。この場合、転送の効率を決める最も大きな要因はファイルサイズであり、同程度の圧縮効率の場合、動画の再生時間が最も大きな制限を受けることになる。

効率的な圧縮・トリミングが行われるならば、クライアント側でデータを受信中にリアルタイムで再生するストリーミング方式を採用することも可能になる。その場合、データ転送量を低めるための圧縮・編集(トリミング等)を行えば、データ全体のサイズは逆に制限を設ける必要性が無くなり、ユーザー側で必要な時間だけ動画を見ることが可能になる。

動画のWeb配信に向けて、今後必要な検討事項は以下の通りである。

  1. 画質の劣化を最低限に抑えるための圧縮法の選択。
  2. 二次データを配信するために必要なトリミング、圧縮作業の効率化
  3. クライアント側のストリーミング再生に対応したサーバーの設置
  4. 大容量データの保存が可能なサーバーの設置