2017.03.08, LD vs DD 実験の様子
5日前(2017.03.03)からスタートした。
4つのシャーレに10匹ずつS. pyriformis(養命酒+1/50 KCM+フルボ酸+キロモナスで培養)
を入れ,これにキロモナスを含まない養命酒+1/50 KCMを 20ml加えた。
2つを透明なプラスチックケースに,残り2つを同じプラスチックシャーレを黒のビニールテープで覆ったものに入れた。
これをLED照明下に置き,毎日,10:00〜22:00の間照明を点灯させた(2000〜3000 Lux)(注)。
左側は 栂平 xxxx サンプル。右側は 八幡平 1204 サンプルである。
注:ただし,10:00〜22:00以外は完全な暗闇かというとそうではない。
実験テーブルの上にあるので,部屋の天井にある蛍光灯が10:00前に点灯する場合もあるし,
朝になれば,窓から太陽の光が入る(ただし,窓からは離れた位置にあるので,太陽光だけだとかなり薄暗い)。
フルボ酸(カナディアンフルボ)の濃度は,3.2 ml/L。
実験開始から5日ぶり(3/8)にシャーレの蓋を開け,S. pyriformisを
新しい培養液(養命酒+1/50 KCM+フルボ酸)に移す際に,細胞を数えた。
その結果,いずれもLD条件下に置いたシャーレでは細胞葛が2倍近く(注1)に増えたが,DD条件ではまったく増えないか(栂池サンプル),
やや増えた(八幡平サンプル)程度でハッキリした差が現れた(詳しくは後日)。
八幡平サンプルではDD条件でも細胞分裂が起きたが,これは carry-over effectの可能性が高い。
さらに実験を継続すれば,差が広がると予想される。
この実験は有菌の条件で行っているが,5日後でも細菌塊らしきものはまったく見えなかった
(3/18追記:15日後になると,若干だが白い細菌塊,フロックが見られた。数を数えるたびに培養液は新しいものに替えているが,
細胞数が増えるにつれ,古い培養液から持ち込まれる細菌の量も増えるので,フロックが形成されやすくなるのだろう)。
雑菌がどの程度いるかは別にして,
いずれにしても,この結果からS. pyriformisは共生藻が行う光合成によって自身も増殖が可能であることが
ほぼ確実となった。ただし,この状態が今後も継続するかが問題。
この状態が以後も続けば,すなわち,同一条件下で,
細胞分裂が長期間(半年か1年以上)継続すれば,S. pyriformisは共生藻が行う光合成のみで増殖できると断定できるだろう(注2)。
注1;これは,わずか5日で1回以上分裂したことを意味する。
これには驚いた。というのは,これまで養命酒+1/50 KCM+フルボ酸(フルボ酸は入れない場合もある)
に餌生物としてキロモナスを与えてきたが,この条件でも最速で2〜3週間で1回分裂する程度
(1つだけ9日/回というのもあった)だったからだ。
それが餌のキロモナスを加えない方がより速くなりわずか5日/回に短縮されるとは。
これに関して考えられるのは,
1)S. pyriformisにとってキロモナスはほとんど成長のための栄養源になっていないのでは,
ということだ。むしろ,キロモナスを加えることでプラスよりもマイナスの影響をS. pyriformisに与えていた
のかも知れない。たとえば,キロモナスが死ぬことでたくさん増殖する様々なバクテリアの中には,
S. pyriformisの細胞分裂を阻害する可能性がある。
また,
2)この実験はかなり明るい光で,それをしっかり12時間与え続けているので,
光が成長の主なエネルギー源になっているとすれば,光量が多い分だけ,成長速度が早まった,ということなのかも知れない。
注1の注;その後の経過だが,最初の5日の後も分裂は継続しているが,徐々に(10日後,15日後)そのスピードが落ちていくように見える。
ただし,従来よりはいまだに速い点は変わらない。今後どうなるか。最終的には分裂が止ってしまうのか,
それとも分裂速度が安定して半年,1年以上継続するかは,現時点では不明。
注2:S. pyriformisが光に大きく依存して増殖していることはほぼ確実だが,
厳密にいうと,それに細胞内に共生している藻類がどの程度,関わっているか。100%とは断言できない。
というのは,
一応,細胞数を数えるごとに新しい培養液に交換しているのでシャーレの中は比較的きれいに保たれているが,
上記のように,スタートから15日後(2回の培養液交換時)には,シャーレ内に細菌の塊ができていたからだ。
(DD条件の方にも同じものができてはいたが,,,。)
仮に,混入している細菌の中に,光合成細菌がいたとすれば,それはDL条件でのみ増えるはずで,
その分だけS. pyriformisが餌バクテリアを余分に食べられるので増殖が促進された可能性も絶対ないとは言えないだろう(注2の注)。
その可能性を消すには,やはりS. pyriformisを無菌状態にして,その条件でも増殖できることを示す必要がある。
注2の注;混入している雑菌が一番少なかった頃(最初の5日間)の方が分裂速度が速く,
雑菌がより増えている後(次の5日,ないし,その次の5日)の方がS. pyriformisの分裂が遅くなっているのだから,
細菌が餌になって増殖している可能性はかなり低いのだが,,。細菌が餌になっている可能性を完全に否定することはできない。