公開講演会:生物多様性研究・教育を支える広域データベース
微 小 貝  山田まち子
back すべては砂粒の中の微小貝から back

 「微小貝」というサイトは、私の父であり鳴き砂の研究者である、同志社大学名誉教授三輪茂雄が、30年あまり前に鳴き砂を顕微鏡で観察している時に、砂粒に混じって小さな貝がらがあることに気付きました。これはいったいどういう種類の生き物なのか?と、鳴き砂の中から採集した、主に微小貝類を同定し、分類した数百あまりのdBASEで作成されたデータベースから始まりました。

 微小貝とは、大人の貝でも(これを成貝といいますが)長さ数ミリから中には1ミリにも満たない大きさしかない貝のことを、研究者のあいだで「微小貝」と呼んでいます。

 微小貝は、むかしはどこの砂浜でもよく見られたのですが、湾岸工事や護岸工事、リゾート開発による砂浜の消滅、そして海洋汚染などのために、なかなか見つけることがむずしくなってしまいました。

京都府網野町が出版した「琴引浜の微小貝図鑑」(図1)は、父が制作し貝類学会の岡本先生に見て頂いたものです。網野町の琴引浜は、日本三大鳴き砂の砂浜の1つである琴引浜があり、その鳴き砂の中から採集された微小貝を小冊子にしたものです。この図鑑でもきれいな微小貝をご覧いただくことができますが、一般の書店では取り扱っておらず、多くの人々に見て頂くことができません。どうすれば多くの人々に微小貝を見て頂くことができるだろうか…。

 90年代に入り、個人でも写真などの画像をコンピューターに取り込むことが可能になってコンピューターの性能が向上した頃でした。その1990年に画像データベースと微小貝にまつわる物語からなるオーサリングソフトを制作し、ちょうどそのころ開催されていたイベント 富士通とフジテレビ主催の『電脳遊園地』と共に開催された『電脳ソフト夢募集』に応募し、幸運にもグランプリを頂くことができたのです。


図1 琴引浜の微小貝図鑑

 これをきっかけに、私自身でも少しずつ貝の収集を続けてデータを追加し、いつの間にか、「世界の貝類データベース」へと変化していきましたが、やはり原点を忘れないようにということで、今でも「微小貝」というタイトルを大切に守ってきています。

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