アサガオ百科 系統と遺伝 

変化アサガオ

Copyright 1998-2017 米田 芳秋

 メンデルの遺伝法則が再発見されたのは1900年であった。この新しい知識は世界各地に伝えられ,直ちにその法則が各地域の生物に適用されて検討された。日本でもカイコやアサガオといった当時栽培飼育が盛んで,かつ変異性に富んだ生物が遺伝実験に使われたのである。下記の文献は日本の遺伝学のスタートを飾る報告である。

《 画 像 一 覧 》(サムネイル画像): 《 名 前 一 覧 》(遺伝子名&遺伝子記号付)

文献

  1. 田中長三都 (1915) 遺伝学教科書. 丸山舎書籍部, 東京.
  2. 外山亀大郎 (1916) 一二のMendel性質に就て. 日本育種学会報 1: 1-9.
  3. 竹崎嘉徳 (1916) 朝顔の遺伝. 日木育種学会報 1: 12-13.
  4. 宗正雄・西村恒雄 (1919) アサガオに於ける連鎖関係に就て. 農学会報 208: 1088-1092.
  5. 今井喜孝 (1919) あきがほ属ノ遺伝学的研究, 第一報. 植物雑 33: 233-283.
  6. 萩原時雄 (1919) 朝顔の葉の二形質間の相関々係に就て(第一報).農学会報 206: 897-901.
  7. 三宅驥一・今井喜孝 (1920) あさがほノ遺伝ニ関スル研究, 第一報, 植物雑 34: 1-26.
  8. Hagiwara, T. (1920) On the coupling of the leaf-character in the Japanese morning glory. Botan. Mag. (Tokyo) 34: 17-18.


その後,変化アサガオを材料として遺伝学的な研究が今井喜孝,萩原時雄らにより推進された。一方,大輪アサガオ栽培が盛んになり,それと反比例して大正・昭和と変化アサガオ栽培は下火になっていった。第2次大戦後,戦時中におけるアサガオ種子の散逸を心配して,当時の国立遺伝学研究所の竹中要博士が民間栽培者の協力を得てアサガオ種子の収集に努め,貴重な系統の保存事業に尽力した。筆者も竹中研究室の1員としてアサガオ研究を開始したが,1969年には静岡大学に移り,現在も一部の系統を維持している。国立遺伝学研究所で長年に渡って保存維持されていた系統は現在では九州大学へ移管され保存されている。


アサガオについての解説書

  1. 三宅驥一, 今井喜孝 (1934) 原色朝顔図譜 三省堂.
  2. 中村長次郎 (1961) アザガオ 作り方咲かせ方 誠文堂新光社.
  3. 米田芳秋 (1977) 突然変異体の形態 木原均監修,山口彦之編 植物遺伝学 第4巻 形態形成と突然変異 pp.98-121, 裳華房.
  4. 渡辺好孝編著 (1977) 原色朝顔 つくり方と鑑賞 農業図書.
  5. ガーデンライフ編 (1977) アサガオ 作り方と楽しみ方 誠文堂新光社.
  6. 米田芳秋, 竹中要 (1981) 原色朝顔検索図鑑 北隆館.
  7. 小川信太郎 (1981) 写真集 昭和の変化咲き朝顔 中日新聞社.
  8. 渡辺好孝 (1984) 変わり咲き朝顔 日本テレビ放送網.
  9. Yoneda Y (1990) Japanese Morning Glory. In: Amirato, P. V., Evans, D. A., Sharp, W. R., Bajaj, Y. P. S. (eds) 0rnamental Species. Handbook of Plant Cell Culture, Vol 5, pp.509-533, McGraw-Hill Publ. Co., New York.
  10. 米田芳秋 (1995) アサガオ 江戸の贈りもの −夢から科学へー 1995 裳華房.
  11. 米田芳秋 (1996) 実験生物ものがたり アサガオ 遺伝50 (7),91~93, 裳華房.

Edited by Yuuji Tsukii (Lab. Biology, Science Research Center, Hosei University)