染色体
アサガオの体細胞染色体数については2n=30であることが1928年に報告され,また減数分裂時に二価染色体が15本あることが分かった。しかし,アサガオの染色体は非常に小さいので,パラフィン切片法による観察では,染色体の数の決定しかできなかった。1919年頃からアサガオの遺伝子分析が進むと共に染色体の研究も開始された。体細胞染色体の形の研究は染色体が非常に小さいため極めて困難である。1963年に中島吾一がアサガオの根端を8-オキシキノリンで前処理し,酢酸オルセインと塩酸の混合液中で加水分解したあと,スライドグラスに組織をなすりつける方法で根端細胞の染色体を観察した。20系統の中で,原型と呼んでいる系統では,染色体の長さは3.50~1.45ミクロメーターの範囲で,4対の付随体をもつ染色体(SAT染色体という),1対の中部(染色体の中央に動原体があるもの),10対の端部染色体があったと報告している。残りの園芸系統についてもSAT染色体の数と総合的に見た染色体の形態(核型という)は系統によって微妙に異なっているという。しかし,染色体全体を均一に染めるこの方法では,染色体のくびれ(動原体のあるところ)の位置と付随体の有無でしか染色体同士を区別できず,系統間の関係をつかむことは困難である。
1970年代になると,染色体を分染(濃淡の横縞状に染める分けること)する方法が発展した。最近開発した新しい方法でアサガオの染色体を染色した。根端を8-オキシキノリンで前処理した後,セルラーゼとペクトリアーゼの酵素混合液で解離し,次いで酢酸メタノールを加えて根端をスライドグラス上で点火して細胞を広げギムザ染色する方法を用いた。東京古型標準型について調査した根端細胞前中期の一例を図に示す。染色体の長さは1.8~5.1ミクロンの範囲で,中部染色体が6対,次中部染色体が7対,次端部染色体が2対あり,長い方から数えて第12番目の染色体に付随体がある。また第3番目の染色体の末端が凝縮して付随体のように見えることがある。
染色体 Chromosomes (河村・米田原図) |
染色体と核型 Chromosomes and karyotype (河村・米田原図) |
遺伝子連鎖地図
アサガオの体細胞染色体は30本なので予想される遺伝子連鎖群は15であるが,これまでのところ10群が判明しているのみである。1916年以来分析された遺伝子は220を越え, その中でこれらの10の連鎖群に分けられた遺伝子は140以上, 遺伝子座が確定した遺伝子は70以上である。
遺伝子連鎖地図 Gene linkage map |